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象が踏んでも壊れない

 かつて『象が踏んでも壊れない』という筆箱があった。テレビのコマーシャルでは、実際に象が踏んでいる映像が使われていた。しかしそれは象が踏んでいるというよりも、足を乗せているだけにしか見えなかった。

 象のCMが始まって数年後、ぼくが高校一年の時だった。
『やはりあれはおかしい』ということで、ぼくは友だち数人といっしょに、教室でその実験をやってみた。実験には、ぼくが中学時代に使っていた古い『象が踏んでも壊れない筆箱』を使った。

 まず、片足で体重をかけてその上に乗ってみた。が、壊れない。
 次に、軽く力を入れて踏みつけてみた。が、壊れない。
 今度は、力まかせに踏みつけてみた。が、壊れない。
 それらの行為を数度繰返してみた。が、やはり壊れない。
 そこで机の上から、筆入れめがけて飛び降りてみることにした。すると筆箱はクニャッとなって壊れた。筆入れの中心にうまく踵が当ったのだ。

 ということで、『象が踏んでも壊れない筆入れ』は、象が踏んでも壊れないが、人間が机の上から飛び降りて踵で踏む、いわば「フライングかかと落とし」をしたら壊れるということがわかった。

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