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デザインスクール卒業生がぶつかる、現場で必要なスキル・マインドのギャップはどう解消すべきか?【後編】

「採用目線」で語る、スクールで目指せるデザイナーと現場で必要とされるデザイナーのギャップについて、BtoBスタートアップ CDOのもちさんとWeb制作事業「URBAN」を運営しているHIROKIさんをお呼びし、ウェビナーを開催いたしました。

本記事では、デザインスクール卒業生が実際の現場でぶつかるデザインスキル・マインドのギャップについてお話しした、ウェビナーの内容についてお届けします。
※本記事は【採用側の本音】プロのデザイナーに求められるスキルセットとマインドの基準とは?の続編記事となります。
※本編3/3に開催されたウェビナーの内容を記事化したものになります。

■スピーカー情報
URBAN プロジェクトマネージャー/Webディレクター/Webデザイナー
馬場 洋輝さん | Twitter
BtoBスタートアップCDO
もちさん | Twitter
Maslow株式会社 CEO
安達 卓則 | Twitter

スクールで得られるデザインスキル・マインドとの実際求められるレベルとのギャップについて:HIROKI

HIROKI:現場で求められるデザインスキル・マインドについて話してきましたが、本題のスクールで得られるデザインスキル・マインドとのギャップとして、どういうものがあるのかについてお話ししていければと思います。

できるだけ主観も排除しておきたかったので、このウェビナーの前に実際にいくつかのスクールについてリサーチもしてみました。

また、僕はスクール卒業直後の方のキャリアコンサルも何人かやったことがあるのですが、その中で色んなスクールの卒業生から実際に聞いたリアルな悩みや実態の話など合わせて、お話していきたいと思います。

あくまで僕がコンサルをしていく中で、実際に聞いた話なので、スクールを批判するわけではないということだけはまずご理解いただければと思います。

スクールだけでは、実案件には通用するレベルには達しない。

HIROKI:まず結論として言えるのが、現状のスクールで学べるスキルと言っても、先ほどの話でいうところの制作フェーズの領域にとどまっているということですね。

Web制作の大まかな流れ
Web制作は、大きく2つのフェーズに分けられる

企画フェーズの部分を学ぶとしても、かなりライトな学習になっていて、実案件で通用するようなレベルにはまだまだなっていないという印象です。
わかりやすくいうと「言われたものをツールで作れるようになるだけ」というイメージです。
もちろん全員が全員そうというわけではないのですが、肌感で考えるとそう言わざるを得ないという印象です。デザインの基礎知識とかツールの使い方を学ぶだけの形ですね。

現時点でスクールで学べること

スクールの実践的な課題にしても、企画フェーズを終えた後で、ワイヤーフレーム等の要件が用意されていて、それを元にデザインを作っていきながらメンターさんからフィードバックをもらっていくみたいな流れがほとんどかなと思います。

これは制作フェーズの話の範囲ですね。その場合、ほぼこういったカリキュラムになってるのかなと思います。

なので市場リサーチのやり方だったり、リサーチ結果からデザインの方向性をロジカルに定義したり、議論したり提案したりするプロセスってのは抜け落ちてるのかなと思いますね。
ここまでが、今のスクールでできるようになる範囲の話でした。

安心して外部に発注できるデザイナーは、全体の約10%程度

HIROKI:誤解はして欲しくないのですが、制作フェーズの作り方の部分だけを教えること自体は悪いことではないと僕は思ってます。
なぜなら制作フェーズだけの仕事ってのは実際に多く転がっているので。

問題なのは「作れるだけ」なら人材はいくらでもいるということ。
スクールで学び卒業した人からすればレッドオーシャンの中でいきなり戦うことになります。

さっきも言った通り、制作ベースにおいての評価軸、つまりWebデザインの評価軸っていうのは「正確に伝わるものになっているか」と、「魅力的に伝わるか」の二つでした。
この評価基準において安心して発注できる層っていうのがまだほとんどいないっていうイメージです。

外部に安心して発注できるデザイナーの割合

その割合ですが、肌感でこれくらいの割合かなと思っています。
上から見ていくと上位10%のところっていうのが、いわゆる安心して発注できる層ですね。こういった層には質の高い案件やリスクが高い案件が集中しやすいです。

逆に下の90%っていうのはまだ安心して発注するには心許ないかなという印象です。こういった層には質の低い、リスクの低い案件が集中する。もしくは発注が来ないっていう状況が多いかなと思います。

最近の駆け出しの方のおそらくほとんどがこの90%の領域にいて、一つの案件を大勢で取り合ってる状況なんじゃないかなと思います。

当然、ライバルは同じ駆け出しだけでなく、既に現場経験があり副業的に仕事してる人たちも含まれます。

“リスクが高い案件”をこなせるデザイナーの市場価値は高い

HIROKI:先ほどリスクが高い案件というお話をしていたのですが、少し補足しますね。
リスクというのは発注サイド視点でのリスクのことで、
例えば外注できる人が限られているとか、体制として慎重なほど議論を固めて挑む必要があるような仕事

それをリスクが高い案件とここでは呼んでるのですが、その分対応力とかコミュニケーションスキルがちゃんとあって、スキルも十分あるような人の需要が当然高まります。

こういう仕事は外注先に求めている期待値が高くなってくるので単価も高くなっている傾向にあります。
逆にリスクが低いっていうのは、外注先の替えがききやすい。
最悪飛ばれても社内か他の外注人材でカバーできるような案件のイメージで、例えば指示したものをただ作ってくれるだけでもいいような案件です。

なので、逆にこういう仕事っていうのは、期待値も低い傾向があるので単価としても低くなっていく傾向にある。

結局、この10%の壁を越えていけるための必要スキルやマインドを、どうしても卒業生に持たせてあげられないのが今のスクールの限界かなと思っています。
2〜4ヶ月ぐらいの期間で作り方を教えて、今このウェビナーで話しているような現実的なギャップの話を正直に伝えていない、だから卒業後に勝手に成長していけるための知識やマインドまでは卒業生に残して上げられない。

というのが、今までのスクールで得られるスキル・マインドの話というところの話になるかなと。少しこれで話し終わっちゃうのもったいないんで、もう少し踏み込んだ話をしていきたいと思います。

スクールのビジネスモデルから考える、「なぜスクールの卒業生は、実案件に対応できるレベルにならないのか?」

HIROKI:ここから話していきたいのが、なぜ今のスクールではこのレベルを超えていくのが難しいのかという点です。これに関しては、意外と明確な理由があると思っています。

スクールって大体受講料が数万円とか数十万円で、その期間が数ヶ月みたいなカリキュラムになっている。このビジネスモデルからそのギャップが生まれると僕は思ってます。

この話をしていくにあたって、スクールのビジネスの目的が一体どういったところにあるのかを考えていく必要があると思います。
もし皆さんががフリーランス育成系のスクールビジネスをやっていたとしたら、将来的に集客していくためにどんな成果があれば次の応募者に響くと思いますか?

僕なりに回答すると、ここで言うところのスクールのビジネスの目的というのは、できるだけ早く受講生に案件を獲得させるとか、少しでも早く稼がせることだと思います。

つまり、その受講生の成果としていくら稼いでもらうとか、早く受注してもらうといったところ。そしてそれをSNSで発信してもらうということを短期的なゴールとして設定している可能性です。

そして、数ヶ月の中でスキルを学ばせて、できるだけ早く仕事取ってもらおうと思ったら、必然的に作ることだけにフォーカスせざるを得ないというのもあり得ます。

しかも、営業のやり方もその短いスパンの中で教えていかないといけないんで、実質スキル学習のウェイトや質も実は低めなのかなと。
受講生にできるだけ効率的に、かつわかりやすい成果を上げてもらうことにフォーカスしているのが、良くも悪くも現在のスクールの実情かなと思います。

なので、ビジネスモデル的にそもそも10%に入れる素質あるデザイナーさんを育てるというのはとても非効率なんですね。
ここまでが今のスクールで得られるスキルやマインドっていう話と、なぜそうなってしまうのかっていうところのお話でした。

スクールで得られるデザインスキル・マインドとの実際求められるレベルとのギャップについて:もち

スクールを卒業したら、そのままデザイナーとして生きていけるわけではない。

もち:デザインスクールでは、二つほどメンターをやったことがあります。
それを踏まえて、スクールごとに得られるスキルやマインドには違いがあるなと思いました。

現状のスクールで得られるスキル・マインドについて by もちさん

まずスキルの観点から話すと、基本的なツールの使い方とデザインの作り方という基礎の部分はどこでも共通して学べると思います。
しかし営業方法やディレクション方法など周辺スキルを学べるかどうかはスクールによって違いがあると思います。

あとは、Figma / AdobeXD / Photoshop / Illustrator / STUDIOなど学べるツールの違いもあります。
個人的にこれからWebデザインを学ぶのであれば、Figmaを使用しているスクールは汎用性が高くて良いなと思っています。

やりたいジャンルによって、勉強するべきツールは変わってきます。
そのため自分の興味があるジャンルと、どのツールを使用して学ぶことになるという点は事前に確認しておいた方がいいですね。

またマインドに関しては、ググり力(検索力)を重要視しているところが多い印象です。「なにか分からないことがあったら、まずは自分で調べてみよう」というマインドです。

次にスクールでは教えてくれないことについて、少し触れていきます。
要件定義、情報設計、ユーザビリティ、UX、クライアントとのコミュニケーション方法など、これらは実際の仕事で必須とされる知識やスキルですが、多くの場合は教えてもらえない可能性が高いと思っていたほうが良いでしょう。

スクール卒業後、デザインで食べていける人はまだまだ少ない

もち:そして、さっきHIROKIさんが言ってたように結局スクールというものはビジネスとして運営されているので、受講生である皆さんが卒業後のライフスタイルを想像した際にテンションが上がるかどうかという点もスクール側は重要視していると思います。
ある程度夢を見させたまま卒業してもらうことが重要なんです。

例えばメンターとして課題のレビューをするのですが、正直実務で通用するレベルのデザインが来ることはほぼないです。
肌感として1%もないです。それでも受講生にはスクールを卒業してもらわないといけない。

普段レビューする際はモチベーションを下げないように、出来る限り良い点を見つけて褒めたり、指摘するにしてもめちゃくちゃ気を使って丁寧に優しくフィードバックを書いています。

まずは続けることが大事なので仕方ない部分もありますが、そのような対応をしていると、実際に現場で通用するデザインのレベルが一体どれくらいのものなのか、という真実は知れなかったりもします。

私の感覚だとスクールを卒業して、実際にデザインで稼げている人は受講生全体の5%ぐらいかなと思っています。それも補足があって、1つのスクールだけではなく何校かスクールをはしごした人(多い人だと3校とかもある)は成功率が高い印象です。

残念ながら1つのスクールを卒業しただけだと、成功率はもっと下がると思っています。厳しいですが、これが今のリアルではないかと。
なので、どこか1つのスクールを卒業したら、すぐにデザイナーとして生きていけるというわけでは「全くないです!」というのは言っておきたいです。

スクールに行ってなれるのは、いわゆる最近Twitterでよく見る「量産型デザイナー」だと思います。量産型デザイナーはあくまでスタートライン。

そこからどう生き残っていくかは本当にその人次第。それはどこのスクールに行ったかとかはもはや関係なく、その人がきちんと生き残るために道を模索して、正しく努力していけるかどうか次第なんです。

デザインに興味はあるけど、本当に自分にはデザインへの適性があるのかどうか確かめたいという目的でスクールに通ってみるのは有効的だと思ってます。スクール入学&卒業を最終目標にせず、試しにやってみる!くらいの感覚が適切なんじゃないかなと。

先程も言いましたが、本気でデザインで稼いで生きていくなら卒業してからが本番なので。スクールはあくまで過程だと思っていた方がギャップがないです。

量産型デザイナーからの卒業をしよう

今、量産型デザイナーというワードを出しました。
そこで量産型デザイナー診断というのを作ってみました。

量産型デザイナー診断 by もちさん


当てはまる項目が多いほど危険です。半分以上あてはまった人は、改めて生き残る戦略を立て直しましょう。
まず、「ポートフォリオにスクールの課題制作しか載ってない」
もうこれは残念ながらアウトですね。架空のものでいいので課題以外の自主制作も載せましょう!

次に、「模写やトレースをポートフォリオに載せている」です。
これも今すぐやめましょう。
実際私がデザイナーを募集した時に、ポートフォリオを見ていて、1個だけクオリティがずば抜けて高い作品が1つだけあったんです。

「駆け出しって言ってたけど、めっちゃ綺麗にできてるじゃん!これはいいかも!」って思ったら、その作品はトレース(模写)だったんです。模写を載せても自分の作品と他人の作品を比較されて、実力の無さが目立つだけなのでやめましょう。

次に「ポートフォリオサイト作成ツールを使う」
foriioなどポートフォリオ作成ツールを使用している人も多いと思います。
しかし出来ればオリジナルのポートフォリオサイトを持っていた方がアピールとして理想的です。
なぜなら、ツールを使うとみんな見た目が一緒になってしまいますし、作品の見せ方や情報設計への工夫ができず、差別化が難しいからです。

あとは「営業メールがテンプレ」ですね。
テンプレを使いまわしているとバレるとまず好意を持ってもらえません。
何でうちに連絡してきたのか、どうしてこの案件をやりたいのかなど、一つ一つ想いを込めてメールを書いて欲しいなと思います。

これもよくあるのですが、「プロフィールに強みがない」
ここがないと、なぜあなたを選ぶ必要があるの?と思われてしまいます。
なので常に自分を選ぶべき理由をを意識しましょう。
人は理由がなければ選べない、逆に理由があれば選んでもらえる可能性が高まります。

あとは「Twitterでキラキラした発信ばっかりして作品のアウトプットが薄い」
これもよく見かけるんですけど、耳障りの良い精神論ばっかりつぶやいていて、肝心なデザインのアウトプットが全然載ってない。
作品はいっぱい載せた方がいいです。マインドも大事だけど、まずは作品を載せましょう!

で、最後ですね「未経験ですがやる気はあります」って言ってる人。
要注意です!!そのままでは間違いなくお仕事とれません!
特にTwitterで募集すると「未経験なんですけど、やる気はあります!丁寧に仕事やるんでやらせてください!」と連絡が来るのですが、まずは未経験から頑張って脱出してください。

Twitter募集など応募者と関係値がない状態だと、やはりどうしても未経験には仕事を任せられないのが正直な所です。

まずは友達や仕事の知り合い、もしくは家族からの依頼でいいです!とにかくデザインを仕事として経験してみましょう。
1,000円で知り合いの名刺をデザインするとか、そんなレベルでいいんです。

とにかく「未経験」というステータスだけはなんとしてでも打破しましょう。それだけでも相当見え方が変わるはずです。大変かもしれないけど、まずは1歩!是非頑張ってみてください。

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※本編3/3に開催されたウェビナーの内容を記事化したものになります。        ※前回の記事は下記になります。
【採用側の本音】プロのデザイナーに求められるスキルセットとマインドの基準とは?

さいごに

今回のウェビナーに関しては、非常に多くの駆け出しデザイナーや現在スクールに通っている方等、様々な方にご参加いただきました。(参加人数は500名越え!)
また、非常に好評の声もいただくことができ、今後も採用目線からデザイナーにとって、役に立つウェビナーや記事を公開していく予定ですので、ぜひnote・Twitterのフォローをお願いいたします!

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このnoteを運営するMaslowは企業の潜在価値を引き出すコーチングデザインカンパニーです。

デザインとコーチングで、企業が本来持っている価値や魅力を最大化させ、中長期的なブランディングを作っていくための支援を、ベンチャーから上場企業まで幅広いお客様に提供しておりますので、もしデザインに関してお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください!

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【登壇者プロフィール】

安達 卓則(あっくん | Maslow)Maslow株式会社 代表取締役CEO兼CDO
株式会社Branding EngineerにてtoB営業を経験。その後、株式会社Spaceeで営業、カスタマーサポートを通してUI/UXの重要性を認識し、広告代理店にWebデザイナーとして転職。Web制作の上流から下流まで全てを経験。2018年、自身が天職を見つけ、自己実現した原体験から、人の持つ潜在能力を開花させるため、Maslow株式会社を創業。

馬場 洋輝 | URBAN プロジェクトマネージャー/Webディレクター/Webデザイナー
2018年より独立し、Web制作・マーケティング事業をスタートし、制作事業の傍ら、Webデザイナーの教育にも携わり、これまで300人以上のデザイナー育成に従事。
2020年、令和時代の働き方や新しい組織づくりの一環として、様々なジャンルのWebクリエイティブに精通した即戦力のフリーランスメンバーを組織化/体制化したWeb制作事業「URBAN」を立ち上げる。

もち | BtoBスタートアップ CDO
AI系BtoB SaaSのスタートアップ株式会社xenodata lab. CDO(Chief Design Officer)
専門学校でグラフィックデザインを学んだのち、複数のスタートアップでプロダクトのUIデザインを経験し、現在はUI・UXデザインを中心に社内の全クリエイティブを担当。
IT業界でのデザイナー歴は10年以上。本業以外ではSTUDIO公式パートナーとしてweb制作も行う。オンラインスクールのデザインメンターやTwtterの発信などデザインを教える活動も積極的に行っている。

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マズロー安達
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