「シャン・チー/テン・リングスの伝説」の感想。原作未読。
正直、残念だった。
残念な所その1:部外者の登場
「家族の物語」に部外者が乱入。台無しだ。何故、ラスボスに魂を吸い取るモンスターなんか出したのか。唐突すぎる。何故、父VS息子のガチバトルをクライマックスに持ってこなかったのか。
わけのわからないモンスターに父がやられてしまうのは本当に萎えた。一時休戦、親子で協力してボスを倒す。邪魔物を片付けてから、改めて決着を着けるという展開でもいい。
家族の物語に、父と息子の決闘に、部外者がしゃしゃり出るんじゃない。
あの親子にはコミュニケーションが不足してる。面と向かって話してもいいし、拳を交えてもいい。戦うこともある意味コミュニケーションだ。むしろそっちのほうがいいかもしれない。
何度も言うが家族の物語なんだから、世界の命運がどうこうなんて蛇足。無駄にデカいスケールを削って、家族ドラマにもっと焦点を絞ってほしかった。家族ドラマや親子の交流が充分に描写されていないから、息子が父を殺そうとしたり許したり、父が息子をかばったりが唐突に感じる。
ラスト、悪の秘密結社テンリングスはシャン・チーの妹をリーダーとして迎え、新しく生まれ変わる。伝統的な組織が現代の価値観を取り入れ、オープンで多様性を重視する組織に生まれ変わる。これは昨今の社会情勢を反映しているんだろう。それは良い。しかし、そこに父親がいないのが引っかかる。何故死なせてしまったのか。父は死なないといけなかったのか。
息子が父を倒す。父は息子の成長と新世代の誕生を認めて引退。後のことは後進に託す。これじゃダメなのか。悪の首領でも、愛を知れば生まれ変わる。やり直せる。異なる価値観でも分かり合える。そういう話じゃなかったか。それが多様性じゃないのか。
父親の「血には血で報いる」というやり方を息子は否定した。なのに死なせてしまうのは乱暴に感じる。死なせるにしたって、別れの言葉も何もないってのはどうなんだ。あの二人は親子の絆を取り戻せたのだろうか。最期に何か一言ぐらいあってもいい。というかあるべきじゃないのか。
モンスターとの決戦を削ってでもいれてほしかった。
残念な所その2:テンリングスがしょぼい。
MCUシリーズには歴史の裏で暗躍し、世界を影で操っている秘密結社がよく出てくる。今作の秘密結社テンリングスは設定だけ見るとスゴそうだが、劇中の描写を見る限りではそのスゴさや恐ろしさをイマイチ感じない。地味すぎる。
現代のテロリスト軍団ならもっと刀剣だけでなく近代的な銃火器も活用してないとおかしい。ヒドラやレッドルームなどなど様々な秘密結社がいそうなMCUの世界で、テンリングスが覇権争いに参加できるとは思えない。ただのニンジャ軍団に何ができるんだ。現実のテロリストにも負けそうだ。
母親の故郷のカンフー軍団もどうかと思う。棒と盾と弓矢って。「気」を使える人もいるみたいだけど、もしテンリングスが銃火器使ってきたらどうするつもりだったのか。あれでは一瞬でハチの巣だ。「ダークゲートの守護者」としての説得力がない。実際シャン・チーがいなかったら全員やられていた。設定やセリフで説明するだけでなく、ちゃんと強いって所を見せてほしい。
後半、テンリングスは村を焼き払おうとする。どんな展開になるかと思ったら、ニンジャ軍団とカンフー軍団の合戦だった。拍子抜けだ。戦いのスケールを必要以上に広げ過ぎだ。
残念な所その3:カンフーアクションが足りない。
カンフーアクションは素晴らしい。しかし、盛り上がりそうになったらは魔法バトルになってしまう。お預けされてる気分だ。巨大なモンスターが相手だと、カンフーが活きない。ビーム撃ったり、飛んだり跳ねたりは他のヒーローが散々やってる。シャン・チーの売りはカンフーじゃないのか。もっともっとカンフーバトルが見たかった。モンスターとの決戦よりも、人間同士のカンフーバトルのほうが断然迫力があった。
ニンジャ軍団とカンフー軍団の合戦には迫力がない。シャン・チーとその仲間がテンリングスのアジトに乗り込むみたいな展開なら、武術を極めたテンリングスの強さも示せるだろうし他の組織との差別化にもなったはず。
残念な所その4:テンリングスの覆面のニンジャマスターの扱い
中ボスっぽい見た目なのに呆気なく退場。すごく萎えた。モブニンジャがやられ役ではダメだったのか。テンリングスの新首領の横には彼?彼女?が立ってたほうが絵になる。
パンフレットには各キャラクターの設定が色々書いてあるが、ほとんど劇中で描かれていない。
残念な所その5:予告編のキャッチコピー
「最強ゆえに戦うことを禁じた新ヒーロー」最強?どこらへんが?
本当に残念だった。