「幽囚の心得」第7章 リベラリズムの限界、その内在する問題 「見捨てられた人間」は如何にして救われるか(2)
マイケル・J・サンデルは、「共和主義的政治思想の中心的な考えは、自己統治に共に加わることによってこそ自由があるというものである」としている。治者と被治者の自同性という民主主義の本質は、詰まるところ人は自らに関わる事は自らが決める、自らの権利を制限するのは自らによってでしか出来ないという自己決定の思想に存し、その制度的な擬制にあるのであるから、至極当然の理であろう。しかし、問題はそれが単に制度として保障されているに止まらない実質を備えているか否かということである。
思うに、自己統治の自由を実質的な意味で実現し、当該共同体の構成員が自己実現を果たし、尊厳的な生き方を為すことにを叶え、精神を充足させるためには共同体の個々の構成員が共通の価値をある程度において共有しているということが必要であるというべきである。何らの価値も共有していない場合、そこまで極端でなくともその有する価値の共通性が乏しい場合には、
おそらく議論は全く収束せず、ただ互いの違いを確認するのみで終わることになるであろう。議会主義の意義は議論の弁証法的な発展にあるのにも拘わらずである。
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