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白 散歩
2018年12月19日 21:37
指先だけで撫でるような癖のないその声が好きだった。ただいま。ブラウンの扉。窓際の観葉植物を抱えた土は湿っていて、薄いカーテンから綻んだ光を浴びている。ささやかな霧吹きの音が響く。鼻歌はまた変わったのにあなたは変わらない。指先だけで撫でるような癖のないその声がずっと好きだった。おはよう。ブラウンの扉。けれどあなたはもう居ないのかもしれない。私はいつの間にか
2018年12月2日 13:11
この人が私を殺そうとしていることは、会話の最中で察知した。砂のようで無機質な何かが敷き詰められた、外なのに室内のような場所を二人で歩きながら、その人は気づかれないように慎重に私に間合いを詰めていた。しかし私は怖れと同時に、その思考ごと呑み込んでしまおうと煙に巻く支度を始めていた。会話で時間を稼いだ。「空と海の境界がだんだん無くなっていくんです」「聞こえますか?この音」水が