それは何者
不気味な笑いが聞こえる 遠くのほうから
その声を探して暗闇を進むと
遠くのほうにぼんやりと光るそれがいた
それは 不気味な笑みを浮かべて
また遠くに消えていく
そこで私はいつも目を覚ます
不気味な それ が一体何者かわからないまま
そんな夢を何度も数えきれないほど見てきたが
あまり深くも考えておらず
それどころか 目が覚めて仕事に向かう頃には忘れてしまっていた
でも気づいてしまった
仕事帰りに毎日通るこの道の傍らに 毎日私を見つめる それ がいることを
どの時間に通っても それ は必ず同じ場所で私を待っている
そしていつも不気味に私に微笑みかけている
その不気味さに恐怖を感じながら急ぎ足で帰宅する
そんなある日
いつものように帰宅していたのだが それ がいない
暑い日も寒い日も雨の日も かならずそこにいる それが
今日はいない
次の日も その次の日も
それ をみかけなくなってしまった
いつもなら不気味な それに出くわすたびに恐怖を感じ
急ぎ足になっていたのに
見かけなくなると寂しい気持ちになる
そんなある日の夜
ゆめを見た
夢の中でその それ は
はじめて私に語り掛ける
『ぼくをさがして・・・』
胸騒ぎを感じ それ が一体何者なのか 人なのか
いつからこの夢を見るようになったのか
ほぼ毎日のように それ は私の夢の中で
『ぼくをさがして』とはなしかけてくる
少し時間のある帰り道で
月明かりの明るい夜に
天気の良い日に
思い出せば それの姿を追いかける自分がいた
10月も終わりに差し掛かったある日の帰り道
それはそこに立っていた
とんがり帽子をかぶり かぼちゃのランプを手にもって
今にもこっちに駆け寄ってきそうな格好で
そして やっぱり不気味な笑顔で
とある交差点の隅っこに それはいつも立っている
それに 微笑みかけられると 思わぬ事故にあうという言い伝え
よく見るとあどけない子供だが
不気味なうわさもひろがっている
飛び出し坊や それが彼の名前
わたしの帰りを いつも待っていてくれて
不気味な夜道で 私を見守っていてくれる
そろそろハロウィン 今夜も それは 不気味な笑顔で
みんなを見守っている
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