『なぎさ』
言い表せないけど面白かった…。
『なぎさ』山本文緒
家事だけが取り柄の主婦、冬乃と、会社員の佐々井。同窓生夫婦二人は故郷長野を飛び出し、久里浜で静かに暮らしていた。佐々井は毎日妻の作る弁当を食べながら、出社せず釣り三昧。佐々井と行動を共にする会社の後輩の川崎は、自分たちの勤め先がブラック企業だと気づいていた。元芸人志望、何をやっても中途半端な川崎は、恋人以外の女性とも関係を持ち、自堕落に日々を過ごしている。夫と川崎に黙々と弁当を作っていた冬乃だったが、転がり込んできた元漫画家の妹、菫に誘われ、「なぎさカフェ」を始めることになる。姉妹が開店準備に忙殺されるうち、佐々井と川崎の身にはそれぞれ大変なことが起こっていた―。苦難を乗り越え生きることの希望を描く、著者15年ぶりの長編小説!(Amazonより)
『自転しながら公転する』でハマった作者、今作もなんとも言えない大人の苦味が多分にあった。
仕事、家族、恋愛、どれかひとつに苦しむんじゃなくて、全部ひっくるめて「人生」として揺れ動いている感じが30代の、「若者」とは言えなくなった世代の悩み方だなと感じた。
あと大筋ではないけど、作者が描く「不潔感」というか、汚さの表現が生きていることを強調している感じがして個人的に好き。
ハッとするできごとや、どんでん返しがあるわけではなく、読んでいて感情の起伏が大きくなるわけではないけど、読み終わった後の爽快でもなくズッシリと重たいわけでもない、ちょっと軽くなった適度な重さが残る作品だった。