『銀座に住むのはまだ早い』
”たくさんの街の顔”
『銀座に住むのはまだ早い』 小野寺史宜
『まち』を愛し、
『ひと』を書く作家(千葉在住)、
上限五万で住めるまちをゆく!
★本書の内容
ノー銀座、ノーライフ。銀座がないなら人生じゃない。
それほどに銀座が好きで、可能なら住みたいと思っている。
けれど。小金持ちですらない「僕」には難しい…。
それでも東京23区に住んでみたい。と、昔から思ってきた。
今も千葉県にある家賃5万円弱のワンルームに住んでいる。
同じ条件なら、どこに住めるだろうか?
その他条件は
フロトイレ付
管理費・共益費込み
定期借家を含まない
だけ。
それ、50代がやる企画ですか?
と言われそうだけど、実際に探して歩いてみた。
歩いた通りに、書いてみた。
書いたらもっと、小説を書きたくなった。
本書はそんな、足掛け3年の記録である。
2019年本屋大賞2位『ひと』の作家、人生初のエッセイ集に挑戦! (Amazonより)
街を描いたらピカイチな好きな作家の街にまつわる作品。
「SUUMOタウン」に掲載されていた東京二十三区を全てを巡るエッセイ。
著者も結びで書いているように、深い感動や刺激をもらう内容ではない。純粋に楽しみながら街を歩く様子が淡々と記されている。自分が住んでいる街や馴染みのある場所を訪れていたらより味わい深さが増すんじゃないかな。
当たり前だけど、その場所によって変化する街に対する感覚や考え方、その描写の多彩さが印象的だった。
”(空がちゃんと見えるのだ)これはかなり重要。こんな町でも、屋外にいれば空は見える。でもそれらはたいてい、高い建物でジグザグに縁どられた狭い空だ。かえって息苦しさを感じさせるそれ。だからこうして、ある程度まとまった空を見られるのはいい。そしてそれがアパートの近くにあり、常に意識できることが大事。”
”アパートやマンションは多いが、これぞまさにの住宅地、ではない。住むというよりは、居る。町に紛れる、という感覚になりそうだ。”
”建物はどれも低いが、道が狭いから、空も狭い。そのただでさえ狭い空を電線が重横断している。でもこうなると逆に気持ちいい。潔さを感じる。うるせえな、ここは東京だぞ、と言われた気になる。初めからこういう場所なのだから文句は言わない。というか、文句などはない。”
最後の短編小説もらしさあふれる文章で良かったし、早く銀座で生まれそだった男の物語を読んでみたい。