『ランチのアッコちゃん』
こういう魅力あったんだ。
『ランチのアッコちゃん』柚木麻子
屈託を抱えるOLの三智子。彼女のランチタイムは一週間、有能な上司「アッコ女史」の指令のもとに置かれた。
大手町までジョギングで行き、移動販売車の弁当を買ったり、美味しいカレー屋を急遽手伝うことになったり。
そのうち、なんだか元気が湧いている自分に気付いて……。
表題作ほか、前向きで軽妙洒脱、料理の描写でヨダレが出そうになる、読んでおいしい短編集。(Amazonより)
『BUTTER』でかなりの衝撃と面白いのに消化しきれない悔しさを味わった作者。
朝井リョウと仲が良いってことも気になり、もっと読み漁ってみようと昔の作品を。
これも食が物語の中心になっているけど、伝わってくるイメージや想いが全然異なっていて、振り幅の大きさに驚いた。
中毒性やきらびやかさがあるわけではなく、地味でもしっかり相手のことを想って作られた食事から、様々な人間関係にほんのり光やあたたかさが灯る印象。
またミチコを通じていろいろな仕事の世界や、一見わからない側面、日陰のような職種の縁の下の力持ち加減など、視野を広げてくれる発見がたくさんある。個人的には特に新聞とネット記事の違いのところが最近感じていることで、かなり納得した。
人生に迷っていても、感情がささくれだっていても、提供する側の想いが伝わる料理は美味しさ以上に伝えてくれるものがあり、思いがけず救われることもあると感じた。
この軽快な読み易さとすっとメッセージが入ってくる感じは癖になりそうなのでどんどん読もう。