『犯罪小説集』
不思議な読後感。
『犯罪小説集』吉田修一
田園に続く一本道が分かれるY字路で、1人の少女が消息を絶った。犯人は不明のまま10年の時が過ぎ、少女の祖父の五郎や直前まで一緒にいた紡は罪悪感を抱えたままだった。だが、当初から疑われていた無職の男・豪士の存在が関係者たちを徐々に狂わせていく…。(「青田Y字路」)痴情、ギャンブル、過疎の閉鎖空間、豪奢な生活…幸せな生活を願う人々が陥穽にはまった瞬間の叫びとは?人間の真実を炙り出す小説集。(Amazonより)
まだ観てないけど、実写の宣伝の雰囲気やタイトルからは、かなり重めの話なのかなと思ってた。
たしかにすべて犯罪をテーマとした作品なんだけど、激しさや暗さよりはその罪に至ってしまうまでの悲しみや、なぜその状況に陥ってしまったのかの奇妙さのほうが伝わってくる。しかも短編集だからこそ、それらが各章際立っている。
人間の欲や業をテーマとしたSFを読んでいるような読後感があり、今まで作者に抱いていたイメージにさらに奥深さというか得体のしれなさを感じた。『パレード』が近い感じかな。
映画も含め一度ガッツリまとめて読もう。