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桜の咲く公園で

桜が咲き出すと私にはいつも行くところがある。それは大きな植物園でも桜並木でもない。本当にこじんまりしたごくごくそこら辺にあるような近所の小さな公園。

普段は近くにある幼稚園の児童やそのママさんたちが井戸端会議をしている。その公園に見事な桜の木が何本か生えていて春になるとちょっとした花見ができる。

私は去年もその前の年もそこへ花見に行った。桜の便りがちらほら聞こえてくると心がザワザワし出す。その公園に行かなきゃと、何か義務感のようなものを感じて。

小さな公園とはいえ一応近所では桜の名所として有名で、その時期にはぼんぼりまで灯される。ここで花見をしてくださいと言わんばかりに。

そこに2年前桜を見に行ったとき。私はスマホを片手に写真を撮ろうとしていた。そこに知らないおばさんが近づいてきて声をかけられた。

「まだあんまり咲いてないでしょう?」

私は近所に知り合いがいない。ふとその人を見てみるとやっぱり知らない普段着のおばさんだった。

「そうですねー」

写真を撮るのをやめておばさんと向き合ってみた。でもなぜかそれ以上会話は続かない。おばさんはすぐにどこかへ消えてしまって私は1人そこに取り残された。

まるで春風みたい。サーっと近づいて、サーっと離れて。でもごくごく自然で違和感がなかった。普段は知らない人に声をかけられると申し訳ないけど少し鬱陶しい気持ちになるのに。

というのも、私は対人恐怖症だから。当時は今より症状が重かった。知らない人とすれ違うだけで緊張して目を逸らすほど。なのにどうしてこのおばさんには違和感を感じなかったのだろう。

その後ベンチで缶コーヒーをすすりながらおばさんの言葉を反芻していた。コーヒーの温もりとかけられた言葉の温もりに心も体も緩んだ。

他のシチュエーションとその日のできごとに何か大きな違いがあったとは思えない。でもおばさんがまるで私を友達のように私に話しかけてくれたことで私の心のバリアが少し低くなった気がした。

知らない人に遭遇するとついつい身構えてしまう。でも誰かと心を通わせて話せることがどれだけ幸せなことか。打ち解けるまでの過程が私にはつらく感じられるのかもしれない。

今年も桜が咲く頃にその公園に行くつもりだ。またちょっと人との距離が近くなる機会があるのかもしれない。ほんの少しそんな期待もしながら今年もその公園の桜を心待ちにしている。

(986文字)



三條凛花さんの企画に参加します。
先程上げたものは本当に私の言いたかったことがごっそり抜け落ちていました。情けなくて落ち込みましたが、何とか書き直し!!

もし気分を害した方がいたら本当にすみませんでした。慎重に書かないとと改めて気が引き締まっていい機会だったのかもしれません。

サムネは前のものが見つからずやむなく変更しました。


いつきさん
いつもありがとうございます🌷

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春野ましゃこ
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