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寒い日に シロクマ文芸部
寒い日に女の子が1人で公園のベンチに座っていた。雨が降っているのに特に何をしている様子もないし、人を待っている様子もない。ただ凍えながら俯き加減に佇んでいた。
まるで何かを悲しんでいるように雨はしとしと降っている。当然子どもたちも遊んでいる様子はないし公園に面する歩道にも人通りはほとんどない。
誰も入ってこない公園。そこにアメカジでキメた大学生くらいの男の子が突然入ってきた。どうやら座っている女の子のことが気になった様子。
「雨降ってますから風邪引きますよ。早く帰った方がいいですよ」
男の子は1つしかない傘を女の子に差し出して自分はパーカーのフードをおもむろに被った。
「あ、ありがとうございます。実はさっきまでここに子猫がいたんです。」
女の子はここ、とベンチの近くにあるゴミ箱を指差した。
「段ボールの中に捨てられていたんですけど、少し目を離した隙にいなくなったんです。」
パーカーのフードを気にしながら、男性も少し雨で濡れたベンチに座って女の子の話を聞いた。
「うちはペット禁止のマンションなので、飼いたくても飼えないんです。でもまだ生まれて間もないくらいの子で……可哀想で気になって仕方がなくて。 雨で凍えてないかな、飲み物は飲めてるかな、飢え死にしてないかなって……」
男性はゆっくり頷きながら女の子の話を聞いていた。やがて小雨も上がり、ほんの少しだけ太陽が顔を出した。
「傘、ありがとうございました。」
女の子が傘を畳み男の子に返そうとした時、猫が女の子の足元で小さく固まっていることに気づいた。
「良かったですね!ちょっと元気ないみたいですけど、ミルクを飲めば大丈夫なんじゃないかな。」
「そうですね。でも私飼えないので。どうしたらいいんだろう……」
女の子が子猫の頭を撫でると、小さな声でミューミュー鳴き出した。
「それなら僕が引き取り手を探してみます。大学の連中に聞いてみたら1人くらいは飼いたいやつがいるんじゃないかな。もし1人もいなかったら僕が飼いますよ。」
男の子は両手で子猫を抱き上げ、体全体をじっくり観察している。
「え?いいんですか?良かったね、ミュウ。あ、今名付けたんです。ミューミュー鳴くから。それじゃあ引き取り手が誰になったか、年のため連絡いただけませんか?」
彼女は名刺をスマホカバーから取り出し男の子に手渡した。
「分かりました。必ず連絡しますね。」
「ありがとうございます。」
彼女は心の温かい男性と巡り会えたことを子猫に感謝した。
「ありがとねー。素敵な出会いってひょんなところに落ちてるんだねえ。」
それを聞いた男の子も
「恋のキューピットになってくれてありがとう、ミュウ。」
と子猫を一瞥した後、彼女と目を合わせて幸せそうな笑みを浮かべた。
【了】
(1121文字)
小牧部長、この度もよろしくお願いいたします。
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今日もありがとうございます🫶🏻️
今日が締切だと忘れてました!!
前々から仕上がっていたので投稿します。
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