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感情の濃淡 青ブラ文学部

この前テレビで感情の濃淡が測れる試験紙というものが売られていることを知った。

俺はそれが欲しくなった。元々感情の起伏が少ない方だったので、紙キレ1枚で俺の気持ちが細やかに分かるならどれだけ金を出しても価値があると思った。

感情の起伏が穏やかすぎて好きな女にはつまらないと言われて振られ、親からはあっさりし過ぎて拍子抜けで面白くないと言われて育った。

もし本当に正しく反応するならそれを元に感情をコントロールすればいい。反応が薄ければより感情を強めたらいいだけだ。そしてネットでいいものを見つけた。値段はバカ高かったがそれで人生が変わるなら安いものだ。

届いた日、俺は早速試験紙を使ってみようと荷物の封を開けた。それはリトマス試験紙のように楽しければ赤く、怒っていれば青く反応すると説明書に書いてあった。

試しに手を少量の水で濡らして試験紙につけてみた。ほとんど何も色は変化しない。しばらく経ってようやくほんのりピンクに変化した。

喜んでいる。ほんのりながら喜んでいる色を示している。俺は嬉しくなってまた手を水につけてそのまま新しい試験紙に乗せた。

すると試験紙はさっきより濃いピンクに変化した。そうなんだ、俺は今かなり嬉しいんだ。でも青くなるところも見てみたい。ちょっと怒るようなことがないかと俺は過去にあった嫌な出来事を振り返った。  

あの女はオレが怒ることも喜ぶこともあまりないからと言って振ってきた。少し腹が立つ。親は何を食べせても美味しいと言わないから食事の作り甲斐がないと嘆いた。子供の飯は親が作って当たり前だろう。かなりイライラする。

一つ一つ考える度に試験紙に指をつける。すると水に近い青色だった試験紙の色がどんどんスカイブルーにまで濃くなってきた。

俺はイライラどころか徐々に無性に腹が立ってきた。なんで完全な青にならないんだ。ここまで来たらどうしても青く反応するところを見てみたい。

思い立って本が全て落ちるくらいの勢いで傍にあった本棚を勢いに任せて投げ倒し散らかった本を蹴散らした。そして机の上に置いてあった花瓶を投げた。これで濃くハッキリした青色に反応するはずだ。

また試験紙に指をつけてみた。すると紙はなぜか鮮血のような色に変化した。俺は今嬉しいのか?どうして青に変化しないんだ?分からない!分からない!

急いで手を離して指を見ると、花瓶の欠片でできた傷から真っ赤な血がドクドクと流れ出していた。
 

(993文字)

【了】


#青ブラ文学部

山根あきらさんの企画に参加させていただくつもりが、締め切りに間に合わず!!

すでに昨日の段階でできあがっていたのに悔しいです。

とりあえず公開はさせてください。


本日もお読みいただきありがとうございました。

週明け、無理せずご自分のペースで過ごせますように!

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