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変化を恐れるな。認知療法から学ぶチーズの探し方
突然ですが、皆さんは「認知療法」という治療方法をご存じでしょうか? 今回は心理カウンセラーらしく、心理療法についての説明をとある著書を用いながら分かりやすく解説できればと思っています。最後まで読んでいただければ幸いです。
認知療法とは
「苦痛を感じている人の考え方は硬直化しやすく、歪んだものになりやすい」と考えられています。認知療法とは、考え方の硬直化や認知の歪みを正す治療方法です。
具体的には以下のような例があります
例: 仕事で小さなミスをしたときに、「自分は全く役に立たない」と考える。
説明: 物事を極端に捉え、中間の状態を認めない思考です。
例: 友人からのLINEの返事が遅いだけで、自分は無視されていると感じる。
説明: 十分な証拠がないのに、ネガティブな結論に飛びつくことです。
こういった考え方の硬直化や認知の歪みを正す治療方法のことを認知療法といいます。
今回のコラムを読んでいただくことで、変化することの大切さや固まった思考を柔らかくする方法を学べると思います。ぜひ自分自身に置き換えながら読んでみてください。
皆さんに質問ですが、これまでの自分が活動していた環境から新しい環境に移る際や、今までやっていたこととは別の全く新しいことを始める際に、不安を感じないという方はおられますか?
ほとんどの方は不安を感じて二の足を踏んだり、なかなか行動に移れなかったりすると思います。 誰だって新しいことを始めるのは怖いし面倒なものです。拒絶されたらどうしようとか失敗したらどうしようといった悩みを持っています。 できることなら自分が今までいた安全地帯から動きたくないと思うものです。 しかし、変化しないと恐ろしいことが起きます。では、変化しないとどうなってしまうのでしょうか?
「周りに置いていかれてしまいます」
それでは、周りに置いていかれることなく変化の大切さを学ぶために、今回は心理学者スペンサー・ジョンソン著書の『チーズはどこへ消えた?』を用いてお話をしていきます。
本の内容の要約
あるところにネズミのスニッフとスカリーと、小人のヘムとホーがいました。彼らはチーズが大好きで、迷路の中でチーズを探していました。 ある日、彼らはチーズステーションCという場所でたくさんのチーズを発見しました。彼らはしばらくの間チーズステーションCで快適な日々を過ごします。しかし当然のことながら、チーズは徐々に減っていきます。そしてある日とうとうチーズがなくなってしまいました。 ネズミのスニッフとスカリーは、なくなったチーズのことは深く考えずに新たなチーズを探しに行きます。 それに対して小人のヘムとホーは「チーズはどこへ消えた?」と喚き散らし、ヘムは「ここでチーズが戻ってくるのを待とう」と言います。チーズステーションCで待っていればチーズが戻ってくると考えたのです。 しかし、しばらく経ってもチーズが戻ってこないので、ホーが「チーズを探しに行こう」と言います。それに対してヘムは「迷路は危険だから、ここで待ったほうがいい」と言います。ホーはなにも手を打たずに事態が好転すると考えるのはどうかしていると考え、「あのチーズは過去のものだ、今は新しいチーズを見つけなければならない」と言い、一人で迷路に飛び出して行きます。 ホーは何日も迷路を歩き回りますが、中々チーズを見つけられずに、ついに今まで行ったことのない地域に足を踏み入れます。しかし、ホーは不安に陥ります。 「このままチーズが見つからなかったらどうしよう」そう考えると恐怖で動けなくなりそうになりました。チーズがないばかりか、危険が潜んでいるかもしれない。しかしホーはこう考えました、「もし恐怖がなければ何をするだろうか」と。 恐怖がなければ笑顔で行ったことのないところへ足を運んでいるだろう。「自分が今抱いている恐怖は自分が作り出したビジョンでしかない」ということに気づきます。そんなものに囚われずに、恐怖がなければすることをしようと決意しました。 それからホーは見知らぬ地域を一人で歩き回り、チーズステーションNという場所にたどり着きます。そこには見たことのないチーズがうず高く積まれており、そこにはネズミのスニッフとスカリーがいました。ホーは大好きなチーズを頬張り、「変化万歳!!」と叫びました。
ポイント1: 「オール・オア・ナッシング」
「成功か失敗のどちらかしかない」や「⭕️か❌️のどちらかしかない」といった考え方。中間は認めないという考え。
→世の中には成功か失敗や⭕️か❌️のような二択ではなく選択肢は複数あるもの。
チーズを探しに行ったネズミのスニッフとスカリー、小人のホーに対して、現状維持を選択したヘムには破滅しかありません。このときのヘムは、「今まで自分はこのやり方でうまくいっていたんだから、このやり方を変える必要はない。このやり方なら成功する。危険を冒してまでチーズを探しに行く必要はない」と考えています。(「このやり方で成功していたんだ。他の方法だと失敗するんだ」)
皆さんは富士フィルムという会社をご存知でしょうか? 富士フイルムは元々使い捨てカメラのフィルムを作っている会社でしたが、デジタルカメラの普及によりフィルムが売れなくなり、このままでは倒産してしまうという事態に陥りました。しかし、フィルム産業に固執するのではなく、フィルム製造のノウハウを活かして現在は医療器具の開発を行っています。
例えば新社会人の方に置き換えると、学生生活で通用していたやり方が会社では通用しない部分が出てくるかもしれません。その時に「このやり方じゃないと駄目なんだ」と自分のやり方に固執すると、なかなか結果が出せなくなるかもしれません。しかし、これまでとは環境が変わっており、取れる手段も増えています。やり方を工夫したり、うまくいっている先輩が身近にいるので先輩のやり方を真似たりすることで、富士フイルムのように新しい形で成功をすることができるかもしれません。
進化論で有名なダーウィンも「唯一生き残ることができるものは変化できるものである」と言っています。
ポイント2: 「結論の飛躍(自分の勝手な思い込み)」
チーズが消えてしまったのは自分のせいじゃないんだ、他人のせいだから自分から新しいチーズを探すべきではないというヘムの固まった思考や思い込み。 要するに、状況に対して情報が不足しているにもかかわらず、無理やり結論を出している状況です。実際はそうではありません。ヘムもホーもチーズを日常的に食べていたので減っていくし、時間が経てば腐っていきます。その事実を見ておらず、自分は悪くないんだと思い込んでいます。
例えば普段の生活に置き換えると以下のような考え方があります
例: 昨日行ったレストランのサービスが悪かった。だから、あのチェーン店はどこでもサービスが悪いに違いない。
例: 一度も宝くじに当たったことがないから、宝くじは絶対に当たらない。
しかし、実際はそうではありません。一つの店舗での経験を全体のサービスに結びつけることや、個人的な経験をもとに普遍的な結論を出すのは早計です。
結論の飛躍は、対話や意思決定の際に誤解や誤判断を生じさせることがあります。注意して論理的な根拠を持った判断を行うことが大切です。
まとめ
変化は避けられないものであり、私たちがどのように対応するかが成功の鍵となります。認知療法のような方法を用いることで、私たちは柔軟な思考を持ち、適応能力を高めることができます。
最後に、今回のコラムで紹介したポイントを振り返りましょう
オール・オア・ナッシングの思考を避け、複数の選択肢を模索すること
結論の飛躍を避け、情報に基づいた判断を行うこと
これらの考え方を日常生活に取り入れ、自分の可能性を最大限に引き出して自分だけのチーズを見つけてみてください。変化を恐れず、新しい挑戦に対して前向きに取り組むことで、より充実した人生を歩むことができるでしょう。
最後まで読んで頂きありがとうございました。今回は心理療法と本の内容を絡めた内容にしてみましたがいかがでしたでしょうか? もしよろしければコメント・感想を頂けますと嬉しいです。