AIが人を動かす時代~人を動かし始めたUber~

Uberが乗客とドライバーを思い通りに動かし始めた。

■乗客を動かし始めたUber

Uberが開始したサービスにExpress Poolというサービスがある。乗客がUberのアプリが指定するポイントまで歩くと、通常のUber料金の50%~75%Offで乗車できるというサービスである。Uberの料金は、通常のTaxiより30%~40%ほど安いが、そこからの割引である。30km以上乗って$15程度しかかからない事もある。サンフランシスコなど都市部の駐車場料金は、2時間で$30ほどかかるので、経済的にも自家用車よりExpress Poolを利用した方がお得である。そのため、私も時間に余裕がある時はExpress Poolを利用している。

Uberは以前より、乗客を他の乗客と相乗りをさせるUber Poolというサービスを展開している。ところが実際にサービスを利用しても、相乗りにならないこともあった。同じルートに向かう人を効率的にマッチングするのはそれだけ難しいのだろう。ところが、Express Poolでは、ほとんど毎回相乗りになる。Uberは、Express Poolのサービスで乗客を指定のポイントまで動かし、かつ、ポイントを指定するまでに2分間の猶予を持たせることにより、相乗りすべき乗客をマッチングし効率的な移動を実現することに成功したのである。

つい最近、Express Poolに変更が行われた。ポイントを指定するまでの時間が、2分間から5分間に延長された。今回の変更により、Uberはより相乗りを行いやすいポイントに乗客を誘導できる。この変更後、ほとんど毎回、2組以上の乗客と相乗りをすることになった。移動に多少時間がかかるようになったが、そもそも時間がある時に利用するサービスである。ストレスを感じることなくUberが指定するポイントに足を運んでいる自分がいる。慣れとは恐ろしいものである。

■ドライバーを動かし始めたUber

Uberドライバーと、「Uberでどれぐらい稼げるのか。」「どうやったら儲かるのか。」などと雑談していた時のことである。あるドライバーは、「サンフランシスコでは需要が超過している。少しの時間でもしっかり稼げるんだ。」と、また、あるドライバーは、「平日は住んでいる田舎からサンフランシスコに出て来て働くんだ。サンフランシスコは他の地域の2倍は稼げる。」という。Uberは需給の関係で料金を変動させるダイナミックプライシングを採用している事で知られている。サンフランシスコのように、移動の需要が超過している地域は、料金も高く、乗客もつかまりやすいのでしっかり儲けやすいんだなと妙に納得した。また、ルールをしっかりと理解して先回りできるドライバーが稼げるんだなとも思った。

先月、Uberがどこの地域でドライバーが足りず、料金が高騰しているか、ドライバーに知らせるサービスを開始した。これにより、ドライバーが需要が超過している地域に動き、需給は平準化する。乗客としては、ドライバーを捕まえやすくなり、安い価格で乗れるようになる。一方で、頭を使って儲けていたドライバーの所得が減る事になる。ビッグデータを活用したAIアルゴリズムによって、人が動き、世の中が効率化することになる。

■AIが人を動かす時代

Uberは、経済的なインセンティブを示し、ドライバーと乗客を自らの動かしたい場所に動かし始めている。取得したデータに基づいて、AIアルゴリズムが世の中が効率的になる方向性を示していく。このような世界では、人間がAIの示した最適解を受入れ、動いていくようになる。映画のように、AIが人を思い通りに動かす世界が頭をよぎった。

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