13の理由 #2

『13の理由』の続きです。#1では、あらすじや基本的な背景について書きましたが、#2ではもっと掘り下げた内容について。ネタバレも含みますので、これから見るという方は、ぜひ見終わってから読んでください。

まず、このドラマがアメリカで意味のある作品になったのは、単純にドラマの内容だけでなく、深みのあるキャラクターにも理由があったはずです。ドラマにはたくさんのキャラクターが出てきますが、それぞれが良い人悪い人で片付けられるほど単純ではなく、彼らの心理に寄り添った多面的な描かれ方をしていること(一見悪い人に見えるキャラクターでも、それぞれの悩みを持っている)、またたくさんのマイノリティーのキャラクターを、ステレオタイプを極力排除した上で登場させています。例えばバスケ部のザックはアスリート系だけどアジア系だし、クレイに謎のつきまとい方をするトニーは、ラテン系で男っぽいけど、ある日クレイにゲイであることを「知らなかった?」みたいなノリで突然カミングアウトしたりします。そういうところが、「多様性」が重要な社会的価値の一つである現在のアメリカにおいて、このドラマが広く受け入れられた理由の一つだと思います。

物語は、クレイと、ハンナの元親友であったジェシカ、そしてハンナの元彼で今はジェシカと付き合っているジャスティン、そしてハンナとジェシカの二人とよくカフェでつるんでいたアレックスを中心に、徐々にバスケ部のアスリート達、チアリーダー達、ハンナやクレイのクラスメート達も巻き込んで進んでいきます。一見良い人に見えるキャラクターが、実は意外な形でハンナを傷つけていたり、直接攻撃をしなくても、何かが起きていることを知りながら助けなかったことで、ハンナが自分の孤独と無力感を悟ったり、さらには明らかに悪いキャラクターが想像の上を行く悪さだったり、テープを聴きながらそのときのハンナの気持ちを追体験するクレイは、何もしてあげられなかった自分に対する怒りから、涙が止まらなくなります。

レイプやドラッグ、複雑な家庭事情など、まだまだ精神的に不安定でナイーブな高校生が正面から受け入れるには難しい問題がどんどん出てきますが、そこにある不安、無力感、孤独感、モラルと自己防衛の間に生まれる葛藤などは、国や文化を越えた普遍的な感情だと思います。実際ものすごく暗くて感情に訴えるドラマですが、「この人はハンナに何をしたんだろう?」という疑問から、つい最後まで一気に観てしまいます。

6月の初めに、ロサンゼルスで行なわれたこのドラマの上映会とキャスト、製作者陣によるQ&Aパネルに出席することができました。ちょうどシーズン2製作決定のアナウンスがされた直後に行なわれたこのイベントでしたが、もちろん気になるシーズン2以降についての質問も出ました。製作側からの答えを要約すると、「シーズン1がまだハンナの視点からの物語を見せたに過ぎない。他にキャラクターが12人いるが、それぞれが重要なストーリーをもっている。」というものでした。「同じ話を違う視点から12シーズンも見せられるんかいっ!」と一瞬突っ込みそうになりましたが、このメインの物語以外にも、最後のエピソードではアレックスが重傷で救急車で運ばれたり、タイラーが銃を部屋に隠し持っているところが映し出されたり、そしてジャスティンが街を出て行くと言ったり、まだまだ回収されていない伏線がたくさんありますので、その辺りを追っていくのではと思います。日本でもアメリカの高校や大学での銃乱射事件がしばしば報道されますが、アメリカでは若者による銃の乱用が本当に深刻な社会問題なのです。

筆者個人的には、(以下ネタバレがあります)


ジェフが事故に遭って死んでしまうのが、一番ショックでした。

(写真は作中でJeffを演じるブランドン・ララクエンテ)

長くなりましたが、中毒度、おすすめ度、両方最高です。

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