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羊の世界

これから書く文章は、ネット記事や文献などから僕が理解できているところで、間違っているかもしれないので、はじめに言い訳しときます。

表紙の写真は2018年に写真家の小野慶輔さんとスコットランドアイラ島にいったときの写真。もちろん小野さんが撮ってくれた写真です。

小野慶輔

手前にも奥にも羊がのんびりと草を食べていてめっちゃ好きな写真です。

2017年、忘年会をしていたときに、ウェブに使っている写真はほとんど小野さんに撮ってもらっていたのですが、肝心の羊の写真がないよね?!という話になり、じゃあ撮りに行こう!ちょうど年始にドイツの展示会の視察にいくからその後そのまま行こう!そしてどうせ行くならアイラ島にいきたい!なぜなら堀田カーペットはアイラ島のスコッチシングルモルトウィスキーBOWMOREみたいになりたいから、BOWMOREの見学も行こう!

「BOWMORE」になりたい!

というノリで行くことを決め、約1週間ほど小野さんと羊の写真を撮りながらアイラ島、グラスゴー、ブラッドフォード、ロンドンを回る楽しい楽しいビジネスバケーションにいってきたのでした。めちゃくちゃ良い写真がとれたのですが、なかなか全部見せるような場もなく、いつかこのときに撮ってもらった写真を、ちゃんとお披露目したいな、なんていう思いもありつつ、本題の羊の話です。

ちなみに小野さんとはカラオケ友達です!(笑)

羊と山羊は何が違うのか?

山羊は、あごひげがあり、角が垂直に伸びている傾向にあるそうです。そして単独で生活している。逆に羊は、あごひげがなく、角は巻いている傾向にあり、集団で生活している臆病な動物です。

だから家畜として向いているのは羊で、現在では様々な交配がされ、世界中に3000種類ほど生息していると言われています。

「白い毛」「柔らかく細い毛」「たくさん羊毛がとれる羊」「岩場などでも住めるような羊」「たくさん肉がとれるように大型に」など、肉として羊毛としてより使いやすくなるように交配されてきた歴史があります。

羊の原種

羊の原種は、4つあるといわれています。

南ヨーロッパの「ムフロン」

中央アジアの「アーガリ(アルガリ)」

北テヘランの「ユルアル」

アメリカの「ビッグホーン」

これらの原種から交配され、有名なメリノ種だったり、カーペットで一番良く使っているロムニーだったりが生まれています。本当は写真でみせたいのですが、著作権とかの問題もあると思うので、ネットサーフィンで見てみてください。おもしろいことに全部角があって、毛は茶褐色なんです!

メリノ種

みなさんが一番馴染みのある羊の名前はおそらく「メリノ」だろうと思います。ユニクロなどでも「メリノウールセーター」が売られていたり、いわゆるブランド羊です。現在メリノウールの最大の生産国はオーストラリアで、一般的に羊=オーストラリアみたいなイメージがありますが、実はメリノ種のが開発されたのは、スペインが最初でした。1300年代にスペインで開発され、当時羊毛はとても貴重な資源であり、現在の金やダイアモンドのような存在。

スペインにとって、外貨を稼ぐ貴重な資源で輸出も厳しく管理されていたわけですが、1800年代、ナポレオンがスペインに侵攻し財政難を招いたスペインは、メリノ羊の輸出で外貨を稼ぐようになり、そのスペインメリノが南アフリカで繁殖されるようになりました。スペインから南アフリカにわたったメリノは6頭と言われえていますが、現在では3000万頭ちかいメリノ羊が生息し、オーストラリアにつぐ第二位のメリノ羊生産国になっています。

詳しくはwikipediaで

メリノ種wikipedia

羊が繊維工業にとって、人間の暮らしにとって、いかに重要な存在であったか?人との共存という意味で、これほどまでに世界中に生息している動物はいないのではないかと思います。

羊のあれこれ

よく聞かれることを少し。

羊1頭から取れるウールの量は?

羊の種類によっても異なりますが、3kg〜4kg程度です。堀田カーペットの商品でいうと2㎡〜3㎡くらいにしかなりません。ちなみに年に2回、春と秋に刈り取りが行われています。

一番良いウールは?

この質問がなかなか難しい質問でして、カーペットに使う場合、あまりにも柔らかい羊毛よりは、少しばさばさした羊毛のほうが反発力があって向いています。メリノウールを使ったカーペットは、たしかに柔らかさや白さは良いのですが、反発力はイギリス産ウールの方がよく、僕が一番良いウールは?と聞かれると、イギリス産のウールをおすすめしています。

産地によってどう違うのか?

カーペットでよく使うウールは、ニュージーランドのロムニーという種類がとても一般的です。ニュージーランドの羊は、番号で管理されており、羊の部位(肩の毛やお腹の毛お尻の毛などの)ごとに分け用途にあわせてブレンドされ番号で出荷されています。肩の毛が一番汚れが少なく、柔らかく良い部分だとされているようです。世界で一番安定した価格、安定した品質で流通しているウールです。

イギリス産のウールは、部位ごとではなく品種ごとに管理され、ブラックウェリッシュやチェビオットなど、キャラクターの強い糸に仕上がります。僕はカーペットには英国が向いていると思っています。とても膨らみがあって艶感もあり、踏み心地のよいカーペットになります。

世界中に羊は生息しているので、他にもたくさんの毛質の羊がいます。人間も金髪の人、黒髪の人、さらさらの人、ごわごわの人、カールがある人、ストレートの人がいるように、羊の種類、個体、刈り取られる季節、それぞれによって毛質はかわるので、無限大の可能性のある素材です。

日本産のウールってないのか?

いわゆる日本オリジナル種というのはいません。現在牧場で飼育されている羊は、世界の様々な地域から輸入されてきた羊種になります。そもそも国内で飼育されている羊の数が10000頭程度だそうです。もともとは100万頭近くいたらしいですが、輸入の解禁など政治的な背景もあって、飼育頭数がとても少なくなっているようです。カーペットのように大量に安定的に必要になる製品にとっては、量が足りず、結果として国産のウールは使っていません。現在出回っている国産ウールは、手工芸としての編み物の糸になっていたりするようです。

そもそも「糸」にするためには、刈り取られた羊のゴミや油などを取り除く「洗い」工程が必要です。「洗い」工程は巨大な設備が必要でそれほど流通していない国内では「洗い」ができない(正確にはやりにくい)環境です。

イギリスのブラッドフォードで、洗い工程を見学してきました。

英国ウールのほとんどはこの地域に集められ「洗い」工程を経て紡績、撚り、染色という流れになるのですが、「洗い」は経済ロットがあまりにも大きく、日本国内でやろうとしても、まったく採算があわないのだと思います。

国産ウールについては、近いうちにどこかの牧場にお邪魔させてもらって、色々お話を聞かせていただける機会があればなと思っています。

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羊の世界は奥が深くて面白い

僕はウールカーペットの専門家ではありますが、まだまだ羊そのもののことについては、勉強不足だな、とちょっとリサーチしただけでも思っています。「カーペットを日本の文化にする!」というビジョンのためにも、ウールの素材そのもののことをもっと深く皆さんに知っていただけるようにしていきたいと思っています。

山形の羊の象徴、佐藤繊維の佐藤社長に負けないように、がんばります!(笑)

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