BtoCビジネスではなくBtoCコミュニケーション
最近取材などで、堀田カーペットのビジネスの話をさせていただくと、「BtoBビジネスからBtoCビジネスに向かっていくんですね!」と言われます。
僕自身はまったくそんな感覚はありません。僕が意識していることは、BtoBのバイヤーや営業の方々も含めた「BtoCコミュニケーション」です。
BtoCビジネスの罠
BtoBビジネスでの行き詰まりを感じている会社が、BtoCビジネスに向かっていく、というのはよく耳にするし、僕自身もその気持はよく分かる。下請けメーカーとして、本能的にそう思ってしまう気もします。実際にウールラグブランド「COURT」や9月発表のDIYカーペットブランド「WOOLTILE」は、いわゆるゼネコン業界から離れた流通で勝負をしているという意味では、BtoCビジネスに切り替えていっているようにみえるのだと思います。
ですが、BtoCビジネスは、そんなに甘くはありません。ちょっとおしゃれなものは世の中に溢れかえっています。これまでエンドユーザーとの接点の少ないビジネスをしてきた会社が、簡単に突破できるようなハードルではありません。
1件あたりの単価もまったく違ってきます。今までBtoBビジネスで、1回のオーダーが例えば100万円あったところが、1回のオーダーが1万円になるということです。BtoBビジネスのほうが圧倒的に効率が良いわけです。
カーペットメーカーでも、いくつかの会社はBtoCビジネスに取り組んでいます。僕の予測でしかありませんが、流通を飛ばし、中間マージンを抜くことで、お客様に選ばれている、いわゆる「安売り」をしているのではないかと思うのです。もちろん適正ではない中間マージンをとっている会社もあるのかもしれませんが、流通に関わる費用があるのは間違いないわけで、ただマージンを抜くという発想だけではうまくいきません。事実、このような選択をした会社のいくつかは、倒産に追いやられた会社もあります。
BtoBビジネスに行き詰まりを感じるとき、確かにBtoCビジネスは魅力的に感じます。実際にうまくいっている会社もあると思います。ですが、本当にBtoCビジネスが、BtoBビジネスの行き詰まりを解消する手段として適当なのか?は、業界、自社の状況、自分の好き嫌い、会社のビジョン、様々なことに照らし合わせて慎重に行わないと、根本的な問題の解決には至らないのだと思います。
流通には必要ないけど、一般のお客様には必要とされる
僕が今行っていることは、一般のお客様とのコミュニケーションをとっていくことです(BtoCコミュニケーション)。それは、「カーペット」という商材、特に堀田カーペットがつくっている「ウールのロールカーペット」は、おおげさにいうと流通の方々には求められていない商品だからです。
弊社がつくるロールカーペットは、カーペット全体の生産量のわずか0.1%程度しかありません。オフィスに使われているようなタイルカーペットが主流です。堀田カーペットの販売先である、インテリア大手メーカーにとっては、わずか0.1%の市場なので、おのずと市場性がある商品にリソースをシフトしていくものです。僕が経営者でも、そう考えると思います。
また、ロールカーペットは、施工性が良いわけでもありませんし、良さを表現するのが大変むずかしい商品でもあります。市場は小さい、販売に手間もかかかるし、きちんとご説明をしないとクレームにつながる可能性もあります。
別の市場でいうと、ハウスメーカーや工務店の市場もあります。こちらはこちらで、ハウスメーカーや工務店の仕事は、「家を売る」ことです。カーペットが家を売る武器になれば、もちろんご採用していただけるわけですが、今現在の環境でいうと、お客様から「カーペットにしてください!」と言われない限り、わざわざカーペットをおすすめする理由はありません。また、壁紙のように、家をたてると必ず使う(ほとんどが使う)ものではない商品です。ハウスメーカーや工務店にとっても、圧倒的に触れる機会が少ない商品でもあります。
つまり、現在のインテリア流通において、それほど必要性が高い商品ではない、ということです。
一方で、一般のお客様はどうなのか?
弊社にご来社いただいたり、私の家の見学に来られたりする、お客様の反応は、大変評価していただいています。
カーペットにしかできない暮らし方(床に近づく暮らし)や、ウールカーペットの汚れがつきにくく落ちやすい特性、堀田カーペットのものづくりの姿勢、来ていただいたお客様は、その後多くのお客様からご発注をいただけるようになってきました。
そして、設計事務所、工務店、ハウスメーカー、いわゆる家のプロの方々も、一般のお客様と同じです。今まで、ほとんどカーペットについて触れる機会がなかっただけで、いざご説明をさせていただくと、皆さんカーペットに魅力を感じていただけるようになります。僕にとっては、何度も家を建てていただけて、家のことに詳しい、魅力的な一般のお客様というわけです。
つまり、一般のお客様に、正しく伝えることができれば、必要としていただける商品であるということです。
「カーペット」という切り口だけでは不十分なコミュニケーション
「カーペット」という商材の特徴として、圧倒的にコンタクトポイントが少ない商材です。カーペットを買う(興味を持つ)というタイミングは、エンドユーザーにとって、多くても一生に5回くらいではないでしょうか?結婚、新築、引っ越しなど、人生においても大きな節目にしか登場しない商品です。
つまり、「堀田カーペットの商品の良さ」をいくら伝えても、そもそも興味を持っていただけるタイミングがほとんどないので、「カーペット」という土俵だけでコミュニケーションをとっていてもお客様の頭にはほとんど残ることがありません。
僕自身が今力をいれていることは、「カーペット」という切り口ではないコミュニケーションの方法です。例えば「ラグ」、「DIY」、「ものづくり」、「経営」、「デザイン」、「イギリス」・・・、堀田カーペットに結びつく可能性がある様々な切り口でコミュニケーションをとっていくことです。
その結果、お客様がいざ家を建てよう、カーペットを敷きかえよう、と思ったときに、「堀田カーペットという会社があったな」くらいのやんわりとした印象をお客様の頭に残しておくことです。
まだまだ知恵が足りなくて、コミュニケーションの打ち手が少ないですが、BtoCコミュニケーションBtoBビジネスをすることで、お客様から選ばれる会社になっていくことを目指しています。
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