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Tristan und Isolde 徒然① マルケ王の嘆き
3月14日より新国立劇場「トリスタンとイゾルデ」公演が開幕するにあたり、この作品の気になる色々を語ってみようと思います。内容はあっちゃこっちゃ飛ぶ予定。簡単な内容ばかりではないかもしれませんが、興味を持っていただける方には楽しい読み物になるのでは?と思います。
まず初回は「マルケ王は何を長々と嘆いているのか?」について考えてみましょう。
トリスタン2幕の後半はマルケ王の独擅場、10分以上!にわたって嘆きます。長〜い愛の場面が終わってお聞きになる皆さんの集中力が途切れそうな時に、ゆったりめの音楽が続くのです。ここを意識が遠のかないで聴き通すためには(笑)マルケが何を言ってるのか知っとくといいんです。
初っ端メロートがマルケに対し「あなたの名誉を護った」と口火を切る。メロートは昼の会議で偽の狩を企て、トリスタンとイゾルデの密会を王様に見せたその人である。そのメロートに対し、
『トリスタンの裏切りにより私の心がつぶされたのに、名誉を守ることなど望めようか!』
それを受けてトリスタンは「昼の亡霊、汚らわしい、消えろ〜!」と叫ぶ。この音楽たった4小節なのに「昼の動機」が8回も連鎖している。マルケはトリスタンの激しい言葉に衝撃を受け、トリスタンに向け語り始める。
『美徳を失ったトリスタンが私を裏切った!
手柄や名声はどこへいった?私の感謝が足りなかったのか?お前には名声や王国を相続させたのに。』
『子供がいないまま妻が亡くなった時もお前を愛していたから再婚しなかったけど「お妃選びに遣わしてくれないとここを去るよ」とお前が脅したから認めたんだ。』
『お前が連れてきてくれた素晴らしい宝(イゾルデ)を得てから私の心は痛みに感じやすくなったのに、そこを責められたらもう立ち直れないじゃないか!』
『夜の闇にまぎれて聞き耳をたて友に忍び寄るなんて、なんたる不名誉!こんな地獄や恥辱を何故与える?その訳を一体誰が教えてくれるのだ』
こんな感じであります。簡単に言ってしまえば「なぜ裏切った?」であります。それを言うためにこれだけの言葉を使って訴えるのです。まさに嘆きというに相応しい内容ではありませんか!情けなくも思いますが、威厳を持った老王により切々と歌われるところにこの場面のよさがあるのです。
このマルケ王のライトモティーフも勿論ありますよ。音程が下がって上がってまた落っこちる、まさに苦悶している王様の気持ちを表す音型です。
偉大なワーグナー先生には大変申し訳ないですが、、、マルケ王のシーンを楽しみたいと思ってる皆様に向けて、このモチーフに歌詞を付けてみました。「マルケ王の嘆き」を端的に言うとこういうことになります。。
「なーーぜ うらぎーったー?」
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