![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/119055130/rectangle_large_type_2_d5b1a397bb369370887620d95f79628e.jpeg?width=1200)
モーツァルト『魔笛』あれこれ② ザラストロとバセットホルン
「魔笛」のオーケストラに使われている楽器で『特徴的』なものは何だろうか?きっとパパゲーノの鳴らすグロッケンは多くの方が思いつくものだろう。奴隷たちを追っ払ったり、パパゲーナを連れてきたりするキラキラした魔法の鈴の音は、鍵盤グロッケン(ジュドタンブル)で演奏されることが多い。私の場合「特徴的」と問われたら、「バセットホルン」と答えるだろう。
ホルン、とついているけど、ホルン族にあらず。これはクラリネットの仲間であり、クラリネット奏者が持ち替えて演奏する。
クラリネットの名手アントン・シュタードラーはモーツァルト同様フリーメイソンに入会しており、モーツァルトと親しくなるきっかけになったと言われている。モーツァルトはこのバセットホルンが気に入り後期の作品に取り入れた。
バセットホルンはクラリネットに比べて、やや燻んだ音色を持つが、それが荘重さを現すのに適している。そのため「魔笛」に於いては、バセットホルンはザラストロと共に用いられる。1幕フィナーレ、合唱が彼を讃えたあと初めてザラストロが歌う箇所に初登場し、そのあと2幕冒頭の僧侶の行進、会話の中で鳴る「3和音」、そしてザラストロのアリアだ。
![](https://assets.st-note.com/img/1697420763570-Q48AKAlgvW.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1697420820536-FGbZON2ezX.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1697420912387-I2i8nuADkD.jpg?width=1200)
上記3例はすべて"F dur"という共通項がある。バセットホルンがF管の移調楽器であることも関係あろう。(ザラストロの歌い出しはC durだが、パミーナが "Herr"と歌い出すバセットホルンの初出箇所はF dur)
「三和音」はB dur で F dur の近親調である。序曲で初めて出てくる時はバセットホルンは使われていない。まだその真の意味は明かされていないということか。2幕、ザラストロの語りの中で登場する三和音はクラリネットに代わりバセットホルンが演奏する。金管楽器の配置も変化しており、序曲のそれと微妙に色合いが異なる。
![](https://assets.st-note.com/img/1697421406258-4Ug18wQlOb.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1697421406298-FStDkeDltn.jpg?width=1200)
その後、15番ザラストロのアリアはそれまでの民衆や僧侶たちが聞いているオフィシャルな場面と異なり、パミーナとのパーソナルな語り合いである。それゆえ調性はF durの半音下のE durになっている。F管のバセットホルンは、ここではもう使用されない。
クラリネットとの音色の差がはっきり分かるものではないので認識しずらいかもしれない。しかしザラストロが歌ってる時この楽器が彼に寄り添っている、ということを少しでも認識してもらえれば幸いである。
その③につづく、、