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ナラボートとトリスタン
リヒャルト・シュトラウス「サロメ」の始まりは印象的です。前奏曲もなくいきなりナラボートのセリフから始まります。
「なんと美しい、今宵のサロメ姫は。」
この歌の「サーーロメー」の直後に聴こえるチェロが奏でるメロディーが「ナラボートのモティーフ」です。
![](https://assets.st-note.com/img/1669338180852-YGxLyXjF6Z.jpg?width=1200)
この「ナラボートのモチーフ」の音程進行に注目してみると
6度上昇(ど→ら)
2度下降(ら→ら♭)
6度上昇(ら♭→ふぁ)
2度ずつ下降(ふぁ→み→み♭)
サロメへの憧れを示す6度の上昇が2度、そして溜息をつくように半音で下降します。
この進行を見ていると思い出されるものがあります。そう、「トリスタンとイゾルデ」の冒頭です。
![](https://assets.st-note.com/img/1669338545448-CUJwJqXmYd.jpg?width=1200)
チェロの弾く「トリスタンの憧憬(あこがれ)の動機」の音程進行は
6度上昇(ら→ふぁ)
2度ずつ下降(ふぁ→み→み♭)
となっています。
「イゾルデに憧れるトリスタン」
「サロメに憧れるナラボート」
ある意味状況が似ていますね。シュトラウスは憧れの表現のためにワーグナーの音程進行を参考にして「ナラボートのモティーフ」を作ったものと考えられます。本人に確かめようがないので断定はしませんが、明らかにそう思えます。
最近東京交響楽団での公演が話題になりましたが、舞台上演は来年5月に新国立劇場であります。やはり実際の舞台を見てわかることって一杯あるのですよ。読み替えなしの演出ですから安心して作品の世界観に浸れます。今から是非チェックしておきましょう。