デジタルファシリテーターは、動的平衡を維持する動的編集者だ(デジファシ構想6)
静的安定構造を維持するための関わり方と、動的平衡を維持するための関わり方は、根本的に異なる。
静的安定構造を維持するためには、人間の考え方や行動を標準化して均質化することが重要になる。そのために、コミュニケーションは一方向的にして、「正解」を一方的に押し付けていくやり方が合理的である。
一方、動的平衡を維持するためには、現場で起こっていることに対するレスポンスの速さが生命線である。生き物が、感覚を統合して姿勢を保つのと同じように、組織や社会は、現場からの情報を統合して、ゆらぎながら「姿勢」を保つのだ。
デジタルファシリテーターとは、組織や社会が、ゆらぎを生み出したり、情報を統合したりして、動的にバランスを保つための役割を担う。
動的平衡とは、個と場との間の対話的な関わりである。
個の主体的な活動によって場が変化し、場が変化することによって生まれた文脈によって個の主体的な活動が引き出されてくる。それらのコミュニケーションは、何かしらのメディアを通してやり取りされる。
かつて、紙メディアで動的平衡を実現した雑誌があった。それが、投稿雑誌「ポンプ」だ。ポンプという雑誌が、読者の間にどのようにして動的平衡を創り出したのかを研究することは、動的平衡を生み出すためのエッセンスを抽出することに繋がる。
上記の連載を熟読しながら思ったのは、編集の橘川幸夫さんは、大量に届く投稿と終わらない対話を続けているのだということだ。
橘川さんたち編集者が、最初から何かを決めているわけではない。大量に届く投稿を読みながら、その場でいろいろ考えて、「じゃあ、これはどうだ?」と編集して、様々なコーナーができて、紙面ができる。
それを受けて、読者たちが、いろんなことを考えて、また投稿してくる。それを受けて、橘川さんたちは・・・となって、延々と続いていく。
様々な投稿を、意図をもって編集していく。そこに編集者の哲学が表現される。その意図や哲学に反応して、投稿者の内側から何かが生まれてくる。
デジタル時代のコミュニティ活動は、多様な交流と、そこから発生するテーマ別の行動とを行き来するものになるだろう。
多様な交流の中から生まれてくる活動の芽を拾い上げて、テーマ別の行動へと繋げていくところにデジタルファシリテーターのスキルが必要になる。
最初から用意したものを作って、そこに、メンバーが合わせていくのでもなく、メンバーの活動を自動的にまとめていくのでもなく、メンバーの活動とデジタルファシリテーターとの創造的緊張から生み出されてくる何かから、テーマ別の活動へとシフトしたとき、テーマ別の活動が創造的に燃え上がっていくのではないかと思う。
それは、まさに、動的編集と呼べるようなものなのではないだろうか。
ファシリテーターの編集者化と編集者のファシリテーター化
メディアがデジタル化して、同期と非同期を組み合わせたコミュニケーションの最適解を探るようになってくると、対話的な場創りに非同期コミュニケーションが組み込まれてくる。
ファシリテーターには、非同期コミュニケーションを構造化するために編集者的なセンスが必要とされるようになる。
一方で、非同期コミュニケーションが中心のWebマガジンなどが中心になってオンラインサロンなどをやり始めると、非同期に同期が組み込まれてくる。
Webマガジンの編集者には、ファシリテーターのセンスが必要とされるようになる。
コミュニケーションの形態がクロスオーバーする時代になり、ファシリテーションと編集とが融合しつつある。その融合された行為を、とりあえず、動的編集と呼んでおきたい。
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