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非暴力アナーキスト宣言

台湾のデジタル大臣オードリー・タン氏は、自らを「保守的アナーキスト」と呼んでいる。

鶴見俊輔のアナキズムの定義によると、「アナキズムは、権力による強制なしに人間がたがいに助けあって生きてゆくことを理想とする思想」とのことだ。

そっかー。コントロールを手放して、それぞれが自由に自分をやったうえで、共創的に自己組織化していく世界を望んでいる自分は、アナーキストじゃんか。今頃自覚したよ。

問題は、「権力による強制なしに」の部分を、どうやって実現するか。

昔のアナキストは、革命によって実現しようとして国家権力と対決して弾圧されたりした。

現在のアナキストの代表的な活動はハッカーだ。権力というのは、特定の情報へのアクセス権によって発生するから、セキュリティを破って情報を流出させて権力を分散させる。ウィキリークスが、まさにそれだよね。

オードリー・タン氏によると、ハッカーには3種類いるらしい。ホワイトハッカー、ブラックハッカー、創造的ハッカー。

ホワイトハッカーは、セキュリティの問題を指摘して改善を助ける人。ブラックハッカーはセキュリティを破ってシステムを攻撃する人。創造的ハッカーは、システムを深く理解してより良い代案を提案する人。

情報を透明化して、集合知によって効果的な活動をしていこうというオープンソースの試みは、創造的ハッカー精神によって進められてきた。LinuxとかWikipediaとかを思い浮かべてほしい。

創造的ハッカーであるオードリー・タン氏は、台湾という国家システムが、より効果的なものになるように、創造的ハッカーとして取り組んでいる。

彼女は、「ラディカルな透明性」という言葉を掲げて、情報の透明化を進めている。vTaiwanというプラットフォームで国民がオープンに議論して政策提言できるようにしている。サンドボックスという仕組みを作って、あらゆる法律を試しに変えてみる実験ができるようにしている。これらの試みが向かう先が、権力が中央に集まるのではなく国民全体へ分散していく社会だ。デジタル技術によって、今だから可能になる新しい国家の在り方。政府に権力が集まる中央集権的国家から、政府が存在しない(あるいは最小限の機能だけを持つ)自律分散型の国家をアナーキスト(無政府主義者)のタン氏は目指しているはずだ。言うなれば、タン氏は、台湾をティール組織ならぬティール国家にしようとしているのだ。

変化を起こそうとすると、多くの場合抵抗にあって失敗する。そこで、大きなカギになるのが、「保守的」という言葉だ。

タン氏は、保守的という言葉を2つの意味に使っている。1つは、台湾の伝統を大事にするということ。もう一つは、一気に変えるのではなく漸進的にじわじわ変化させるということ。

今まで頑張ってきた政治家のことも尊重されて、その考えも大事にした上で、いろんなことを試しながら少しずつより良いものにしていきましょう。デジタルのことは、タン氏のほうが圧倒的に詳しいから、若いタン氏が年長者の政治家に対してメンターになる「リバースメンター」になって、一緒に理解を深めながら進めていきましょう!というやり方をするということ。

アナーキストという言葉の持つ「政府なんていらない!政府を転覆させてやる」というセックスピストルズ的な反逆イメージが、「保守的」という言葉で緩和されて、新しい意味が生まれている。

僕は、なんて名乗ろうかな?

インターネットがなかった時代に、地域的にも離れている人たちが協力して国家という巨大プロジェクトをやるためには、中央集権的なやり方が最適だったんだと思う。

でも、権力によって支配されると、抑圧によって心の自由が失われて、そこから発生する怒りと攻撃性が、自分や他人に向かってしまい、暴力の連鎖が止まらなくなるってことが、数百年の歴史によって分かってきたのだと思う。

だから、インターネットを使った双方向コミュニケーションによって権力を分散させて抑圧を減らして、暴力の連鎖を止めて、それぞれのありのままが受容されたうえで生命原理によって調和するような世界を思い描きたい。

そのための手段としてのZoom革命だし、デジタルファシリテーションだよ。

よし決まった!

非暴力アナーキスト(Non Violent Anarchist)だ。

NVAだ。






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