ミロ太郎ラーメン物語 第6話 選択と集中、リストラと自動化
この物語は、『Miro革命』の第5章にも掲載します。(完全に同じではありませんが、おおよそのストーリーは同じです。)
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それでは、第6話スタートです。
第6話 選択と集中、リストラと自動化
一部上場してフランチャイズを拡大してきたミロ太郎ラーメンの勢いは、長くは続かなかった。
日本の景気が落ち込むのと同時に、売り上げが落ち込んできた。株主からは、「利益を上げられないのなら、コンサルタントを交代すべきだ」という声が上がり、三上は、長年、一緒に経営戦略を練っていた満男との契約を打ち切り、株主が推薦する外資系の大手コンサルタントと契約することにした。新しいコンサルタントに就任した大木常久は、次の公式をホワイトボードに書いて説明した。
「株価は、自己資本利益率ROE(Return On Equity)と連動して推移します。
ROE= 当期純利益/自己資本×100
ですから、景気が悪くて当期純利益が上がらないときは、利益が上がっていない自己資本を売却して分母を減らすことでROEを上げるのが王道です。いわゆる選択と集中です。」
常久は、50店舗の売り上げ状況を調査し、利益率の低い10店舗を閉鎖して売却することを提案した。三上はそれに同意した。ROEの数値が上がり、株価はわずかながら上昇した。
半年ほどたつと、再び業績が悪化し、株価が下がってきた。常久は、三上に対して次のようにアドバイスした。
「御社には、デジタルトランスフォーメーションによる業務効率化が必要です。内部留保がまだありますので、店舗の自動化へ投資しましょう。利益率の低い店舗を閉鎖して30店舗まで絞り込んだうえで、店舗の自動化をすれば、レシピ通りのラーメンを時給の安いアルバイトでも作れるようになります。
自動調理システムで味の画一化ができますので、味見チェッカーの人件費をコストカットできます。調理スキルも必要なくなりますので、熟練した調理人が必要なくなり、アルバイトで店舗を回せるようになります。コストが下がり、利益の上がりやすい体質になります。」
三上は、常久のアドバイスを受け入れ、店舗を30店舗に減らし、自動調理システムと接客ロボットを導入した。かつては商店街から調達していた食材も、安い業者から一括購入するように変えた。ミロ太郎ラーメンのフランチャイズを支えてきた味見チェッカーと店長たちは解雇された。味の画一化は、自動調理システムによって実現し、数名のアルバイトだけで店を回すようになった。
「この後、どうなるんだろう?」
売り上げを伸ばす方法は見つからなかった。利益を出して株価を上げるために、自己資本を売却し、コストカットのために従業員を解雇することの繰り返し。この悪循環スパイラルの先に、三上は、明るい未来を思い描くことができなかった。
「自分は、何をやりたかったのだろうか?」
三上は、ふと思いついて「ミロ太郎ラーメン1号店」に行ってみることにした。
編集後記
バブル崩壊後の日本の大企業は、株主資本主義への移行が進み、株価を上げるために選択と集中。。。
その結果として起こった「失われた30年」。
ここから、どうなっていくのでしょうか。
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