ミロ太郎ラーメン物語 最終話 ミロのMiro革命
この物語は、『Miro革命』の第5章にも掲載します。(完全に同じではありませんが、おおよそのストーリーは同じです。)
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それでは、第11話(最終話)スタートです。
最終話 ミロのMiro革命
ある日、陽子と直人が、三上のところにやってきた。陽子が言った。
「三上さん、この活動、小さな仕事がたくさんあって、多くの人が少しずつ関われるところがすばらしいです。関わりのグラデーションがあるから、自分でも何かできるって思いやすいんだと思います。今何が起こっていて、どんな仕事があるのかが、Miroに可視化されているので、みんなが自律的に動けるようになっていますね。」
直人が続けた。
「三上さん、見事に組織ーコミュニティ転換を起こしましたね。子どもの本音から学んだり、バオさんや劉さんから外国文化を学んだり、山田さんから人のために行動することを学んだり、たくさんの学び合いが起こっています。知恵を出し合って工夫して、集合知も生まれています。日曜食堂という共創も起こっています。「AIまかない君」というイノベーションも起こりました。街のみんなが、ミロ太郎ラーメンと子ども食堂の共創のドラマの登場人物になっているんですよね。計画を立てるんじゃなくて、街のみんなが、それぞれ好きなように動いて、それが歴史物語としてMiroに記録されていく。Miroを見ると、いろんな思い出が呼び起こされて、みんなのおしゃべりが自然と始まる。学び合いにも、共創にもMiroが効果的に使われている。これは、Miroを使った革命的な取り組みですよ。ミロのMiro革命ですね。わはは。」
三上は、直人のダジャレに苦笑いをした。
三上は、1号店の取り組みから得た「ラーメン屋と商店街の共創モデル」を、他の店舗にも広げることにした。フランチャイズ化したときは、画一性が重要だったが、今回は、各商店街の個別性を大事にした。そこに住んでいる人たちが、自分たちで考え、工夫し、自分たちの物語を立ち上げていくことが本質的だと思ったからだ。そのためには、陽子や直人のようなファシリテーターが不可欠だと思い、各地域でファシリテーターになってくれる人を探してお願いした。「ミロ太郎ラーメン」と商店街とが、お互いに活かし合う方法をオープンに話し合う場が各地で設けられた。商店街同士がオンラインで連携してイベントをやる試みも始まった。
各商店街から1号店に見学に来る人も増えた。組織化の進んだ「失われた30年間」で冷えてしまった社会が、少しずつ温かみを取り戻してくるように感じた。
その年の株主総会で、三上は、「ミロ太郎ラーメンは、地球環境を含む、すべてのステークホルダーの持続可能な幸せを願うサステナブル経営へと経営方針を転換します。」と宣言した。短期利益を重視する投資家は去ったが、ミロ太郎ラーメンの理念に共感して応援してくれる投資家も現れた。
人口減少期に入る日本では、多くの場所で「組織ーコミュニティ転換」が必要になるだろう。組織の論理では崩壊に見えることが、コミュニティの論理では生成に見える。このような両義的な状況がしばらく続くだろう。異なる立場の人が、それぞれの考えや想いを伝えあうコミュニケーションには、考えの筋道を可視化するビジュアルコミュニケーションが有効だ。学び合いによって相互理解が深まり、関係性が育ち、先の見えない未来へ向かって、一歩ずつ一緒に歴史を作っていく共創のプロセスが、Miroに記録されていくことで、後から参加する人も加わることができ、様々な人を渦に巻き込んでいくことができる。時代がMiroのようなツールを必要としているのだ。
三上は、自分の人生に起こった組織―コミュニティ転換が、これから、社会の各地、各領域で起こっていくのだと実感した。直人の「ミロのMiro革命ですね。わはは」というダジャレが、頭の中で響いた。
(おわり)
編集後記
「Miro革命」の原稿を書き終えてクラウドファンディングをスタートし、原稿を書籍デザインに流し込んでみたら、ページ数が足りないことが発覚。
玄道さんと二人で、
「書きたいことは書いちゃったしなぁー、どうしよう?」
と話し合った結果、玄道さんは、原稿執筆時期に増えてきた事例を増やすことになり、僕は、「物語形式で書いてみようか」ということに。
もともと計画していなかった「物語形式」ですが、連載を始めたら応援して下さる方が出てきて、こちらの気持ちも盛り上がってきて、何かが乗り移ったかのように物語が展開していきました。
この形式だからこそ、伝えられた想いがあったように思います。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
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「Miro革命~ビジュアルコミュニケーションによる新しい共創のカタチ」出版プロジェクト