参加型社会の細胞は、参加型プロジェクトだ
橘川幸夫著『参加型社会宣言』は、以下の言葉から始まる。
上からではなく下から、外側からではなく内側から、遠くからではなく近くから、全体からではなく個人から、制度からではなく思いから、アルゴリズムからではなくライブから、組織からではなくバンドから、権威からではなく親しみから、多数からではなく少数から。
参加型社会は、個人の想いによって結成された少人数による社会的バンドのライブ活動からスタートする。ここでは、
社会的バンドのライブ活動=参加型プロジェクト
と、より一般的な言葉で呼ぶことにする。これは、参加型社会の基本単位、つまり、細胞である。
参加型プロジェクトを基本単位にした社会デザイン
現在の社会は、組織を基本単位にした社会デザインである。
参加型プロジェクトを基本単位とした社会を想定したときに、あらゆるものが、再考されることになる。
以下、探究テーマになりそうなものを列挙する。
・参加型プロジェクトが自然発生する土壌
・参加型プロジェクトを通して学ぶ⇒参加型プロジェクト学習
・参加型プロジェクトで働く⇒収入を発生する方法や分配方法
・参加型プロジェクト同士の連携⇒共通インフラの活用
・参加型プロジェクトをドライブするもの⇒共創エンジン
・参加型プロジェクトの進め方⇒デジタルファシリテーション
・参加型プロジェクトの生態系づくり⇒組織の次の方法論
参加型プロジェクトが生まれる土壌
列挙した探究テーマのうち、参加型プロジェクトが生まれる土壌について考えてみる。
きっかけは、「こういうものが大事だ」と漠然と感じていることを、誰かが言葉にするところからはじまる。
それに、「そうだ!まさにそれが、自分が言いたかったことだ!」と思う人が呼応する。
漠然とだけど、同じ何かに触れている人たちが集まってきて、参加型プロジェクトのチームが結成される。
このようなコミュニケーションは、どこで起こるのだろうか?
かつては、酒場や喫茶店で社会的バンドが結成されたのだろう。
時代の同じ匂いを感じ取って集まってきた人たちの緩やかなネットワークが自然と形成され、そこでの会話の中から「それだ!やろう!」という感じで盛り上がり、「それなら、あいつも誘おう!」ということになって数名が呼ばれてきて、コアメンバーが決まる。
ブログや掲示板、書籍を通しての出会いもあっただろう。
今は、このようなコミュニケーションが、Zoomでも頻繁に行われている。
参加型社会の実現のためには、その細胞である参加型プロジェクトが自然発生するための土壌が必要になる。
出会うべき人と出会うための機会を、現在の社会状況の中で、どう作るのか、ということを考えたい。
参加者が自分の想いを5分ずつ語っていく未来フェスは、社会的バンドを組む仲間を探している人にとっては、絶好の機会となる。「この人だ!」と思った人に、それぞれが連絡をとることで、参加型プロジェクトの種が生まれる。
参加型プロジェクトの土壌づくりという観点から参加型メディアを見直すとどうなるだろうか?
現在、YAMI大学深呼吸学部では、プロジェクト投稿型のマガジンの創刊を準備している。それは、まさに、参加型プロジェクトの土壌づくりのためのメディアだと言える。
参加型プロジェクトの仲間を募り、進捗を報告し合い、結果を報告し合うことで、新たな参加型プロジェクトが立ち上がっていくという循環が生まれるだろう。
参加型社会が実現したときには、きっと、プロジェクト投稿型の雑誌が、数多く出版されているのだろう。
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