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足摺七不思議。大師一夜建立ならずの華表

~一夜建立の鳥居~
「大師熊野権現遥拝のため建立せんとするも天魔の障害あり竣工に至らざりしと云ふ」
これがお寺さんで配布されている足摺七不思議のお話で、

~大師一夜建立ならずの華表~
「大師が一夜で華表(とりい)を造らせようとしたが、夜明け前にあまのじゃくが鳥の鳴真似をしたため、夜が明けたと勘違いし、やめたといわれています」
これが、看板のお話。

熊野権現遥拝が目的。
深~く深呼吸して、噛まないように、

熊野権現とは。
「熊野本宮大社」。「熊野速玉大社」。「熊野那智大社」。
で、「熊野三山」。

神が衆生を救うため、仏の姿となって現れる権現。

三神の「本来の姿は仏」とする本地垂迹に基づき、
坐神は阿弥陀如来。速玉神は薬師如来。牟須美神は千手観音。
それぞれ仮の姿で現れた権現。

どっちの視点からでもおんなじ権現。
熊野は神仏習合。熊野三山は「熊野三所権現」で、熊野権現と呼ばれる。
金剛福寺の境内。「役の行者堂」横に、今あります。

阿弥陀仏は極楽浄土の中心仏。本宮は西方浄土。
新宮は東方瑠璃浄土。那智は観音菩薩の住む補陀落浄土。
熊野は神々と仏がともにおわす浄土。

お大師さま、その浄土を遙拝しようと、建立する。
遙拝というのは、遠くへだたった所から拝むことね。

ふう。ひと息ついて、
で、今回の主役は「あまのじゃく」

似たお話しが、遙拝しようとする熊野にある。
本州最南端「橋杭岩」伝説。
弘法大師(空海)が天の邪鬼と、夜の間に朝日が昇るまで、大島まで架ける橋をどっちが早く作れるかと、競争をしたそうです。
しかし、負けそうになった天邪鬼(あまのじゃく)は、鶏の鳴きまねをして、夜が明けたと思わせました。
そのため、弘法大師は作業を止め、橋が完成することなく、杭だけで終わったというお話。

と「あまのじゃく」を続けるその前に、

熊野三山「熊野三所権現」。熊野浄土にたいして、
足摺岬は、観音菩薩の住む補陀落浄土へ
足摺七不思議に現れた阿弥陀三尊の来迎地。

足摺七不思議。
「名号の岩」を中尊、阿弥陀如来。
「地獄の穴」を左脇侍、お寺さんにつながる観音菩薩。
「一夜建立の鳥居」を右脇侍、勢至菩薩を配する。
阿弥陀三尊の来迎地。

観音菩薩は阿弥陀如来の「慈悲」をあらわし、
勢至菩薩は「智慧」をあらわす。

「一夜建立の鳥居」の七不思議が現す勢至菩薩さまとは、
どんな菩薩さまなのかご存じですか。ない。多くの方がないですよね。

勢至菩薩は、智慧の光で生あるものはすべて救済し、
「菩提心の種を与える」という菩薩。
力が強く、足を踏み下ろすと大地が揺れるという怪力の持ち主。
偉大な勢力を持つことから、大勢至菩薩とも呼ぶ。
勢至菩薩の知恵は、餓鬼・畜生・地獄の三悪道へ人々が落っこちないように、すべてを照らして救ってくれるといわれています。

勢至菩薩の知恵は、
文殊菩薩の「釈迦の知恵」虚空蔵菩薩の「記憶の知恵」とは異なり、
「人を救う強さの知恵」です。

では主役の「あまのじゃく」
どんな奴かといいますと、これは皆さんよくご存じ。

わざと人に逆らう言動をする人。つむじまがり。へそ曲がり。ひねくれ者。
悪い鬼。物まねがうまく、他人の心を探るのに長じる。あまんじゃく。
わざと他人と反対の言動をする人。
あえて人と違う意見を言ったり、本心とは裏腹な態度を取ったりする人。

で、「あまのじゃく」が育つには、
親や周りの人に十分な愛情をもらえずに育つ。周りの人の愛情や注目が欲しくて、自分の本心とは裏腹な態度を取るようになる。
親に意見を聞き入れてもらなかった人も、自分を否定されたように感じ、あまのじゃくになる。
このような経験が積み重なり、本心を言っても無駄だ。本心を素直に表現できなくなるのです。

餓鬼・畜生・地獄の三悪道へ「あまのじゃく」が落っこちないように救うには、「あまのじゃく」を信じる。あまのじゃくの為に大きな犠牲を払い、愛する姿を見せる。あまのじゃくへ自身を信じ信じられる菩提心の種を与える。

一夜目の、「愛あふれ信頼し合う家庭」の建立。
たとえ、後世に渡り「あまのじゃくの嘘」に騙されたと嘲られようとも、
目の前のあまのじゃくを救う。

何度でも 

あなたのことを信じ続ける。

「ならず」で成したこと。

足摺七不思議「大師一夜建立ならずの華表」の不思議。

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