次の嘘は、君に喜ばれるだろうか?
蝉の抜け殻を足元に眺め、立ち尽くす青年を見た。
夕立の匂いが街に張り付いて、雲の影が魚影のように澱みなく進んでいく。
次の嘘は、君に喜ばれるだろうか?自我の隅っこで、裏切られるギリギリをにやけながら歩けたらと思う。時間はもうない。厳密には、ずっとあり続けるし、ずっともうないような感じだ。
雨が夏の街を壊して、虫の声が少し止む。彼の頭の中にも大いなる何かが渦巻いて、瞬く間に次の嘘で、誰かへの筋を通そうとしている。
「筋なんて通さなくて良い!」と叫んだら、風向きが変わるように君はこちらを睨んだ。そして何秒かの後、遠くへ走り去る。
抜け殻を踏み壊して、己の影を歪めて、そうして朝へと走る。君が待っている。強い予感がする。
2024.07.22
「夕立の匂い」という言葉から作った文章