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『クララとお日さま』を読んで:心とは何かを問う感動作
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『日の名残り』など数多くの名作で知られるカズオ・イシグロさんの最新作『クララとお日さま』。この作品では、ジョジーという少女の家にやってきた人工親友(AF)のクララが主人公となり、人間とAIの対話を通じて「心」とは何かという命題に向き合います。
文章の表現が美しく、文学作品の中でも最高の一冊です。
特に印象に残ったのは、以下の一節です。
『カパルディさんは、継続できないような特別なものはジョジーの中にないと考えていました。探しに探したが、そういうものは見つからなかった──そう母親に言いました。でも、カパルディさんは探す場所を間違ったのだと思います。特別な何かはあります。ただ、それはジョジーの中ではなく、ジョジーを愛する人々の中にありました。だから、カパルディさんの思うようにはならず、わたしの成功もなかっただろうと思います。わたしは決定を誤らずに幸いでした。』
この文から、人間の心は単に「脳や肉体」に宿るものではなく、周囲の人々との「関係性」にも存在していることがわかります。物語の核心に触れずにその魅力を語るのは難しいですが、なぜAFのクララがジョジーの一家に迎えられたのか、作中で徐々に明らかにされていきます。その理由を知ったとき、多くの人が「大切な人に生き続けてほしい」、「亡くなった人ともう一度会いたい」と願ってきたことに思いを馳せました。
この作品はフィクションですが、AIが人間に近づく未来において、人はその存在をどのように受け入れるのかを考えさせられます。人間の心には理性と感情の両方があり、常に矛盾を抱えているものです。AIとの対比を通じて、人の心が持つ「特別な何か」が浮き彫りになるように感じました。
多くの本を読んできましたが、この作品は名著だと断言できます。最後のページをめくるのが惜しいほど、感動と共に読み終えました。
『クララとお日さま』