夢見モグラは空を待ち侘びて 61日目
モグラはこうしたい、ああしたい、
こうして欲しい、ああして欲しい、
頭で考えたことを、相手に伝えることに苦労した。
口はひりついてうまく動かないし、
震えた手で文字を書くこともままならなかった。
それでも母や医師たちは、
根気強く、自分の気持ちを、
汲み取ろうと、一生懸命に目を見つめてくれたので、
ゆっくり、ゆっくりと、
差し出してくれた文字盤の中へ目線を送り、
ほんの少し頷くことで、最小限のコミュニケーションを成立させていった。
それはとても焦ったいのだけれど、
伝わるということは、とても幸せなことなんだ、
と、その喜びを噛み締めていた。
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時差の話。
ワンマンのライブを控えて、
真緒さんとのアコースティックライブの準備をして、
ここで毎日原稿を書いて、
夜な夜な長編の小説を仕込みながら、
作詞や作曲の頂いた仕事を睨みつけながら(まだ手をつけられてないだけ)、
誘ってもらったそれ以外の仕事に反射神経で挑む毎日をおくっている。
なかなか芽が出ないことも多いけれど、
それでもなんとなしに水やりを欠かすことはなくて。
こういうのは少なくとも半年〜一年後、
ものによってはもっと先に成果が出てくるので、
なかなかにして焦ったいけれど、
それは花が咲いた時の美しさを知っていて、
それ以上のものを夢見ているからなんだろうな、と思う。
時差、というのは、常に、
自分と、これを読んでくれたあなたと、世界と、の間には常に存在している。
例えばあなたの好きなアーティストが新曲を出したとして、
おそらく最低でも、その新曲は3ヶ月前にはレコーディングしているはず。
そして、それを作っているのは、歌詞を書いているのは、
アイデアとして構想しているのは、それよりももっともっと前のはず。
良くも悪くもだけれど、
作品を受け取ってもらった時には、実はとても過去のものになってしまっている。
上手なアーティストはインタビューなどで、
それをきちんと今の出来事としてそれを伝えていくのだけれど、
実のところ最低でも3ヶ月前の自分と、今の自分を比較するとそれはもうちょっと、別人だなあ、と言い訳したくなる気持ちがある。
もうすぐ僕らも新しい作品のアナウンスを控えているのだけれど、
つまり、あなたに届く僕は、常に3ヶ月以上前の別人の僕です、
という、ちょっとした言い訳、時差の話。
それではまた明日。
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本日の表紙はyuzu__exさんの写真を使用させていただいております。