夢見モグラは空を待ち侘びて 45日目

モグラは自分の気持ちが上手く伝わらないことに対して、
とてももどかしく思っていた。
お腹が減った、あれが欲しい、
見様見真似のジャスチャーには限度があった。
文字は綺麗な方がかっこいいと思ったし、
言葉も丁寧に扱えるほうが素敵だなと思った。
部屋に届けられた本の中から、
最も分厚い本を選んで、
そっくりそのまま写すことを始めたし、
また、壁に向かってそこから気に入った言葉を選び、
その読み方を調べては、
息を大きく吸い込んで、
お腹に力を込めて、はっきりと、くっきりと、
発音できるまでそれを繰り返した。
納得いく頃にはクタクタになりながら、
その成果はなかなか試す場もなかったが、
なんだかとても意味のある行為のような気がして、
モグラはそれに熱中していた。

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ゔぇえあの話。

本日は３日間連続であった歌の録音の最終日。
つまりは次の作品の録音の作業は全て終了。
この後は編集作業、
一旦自分の手を離れてここからはエンジニアさんが、
バランスを整えたり、音の細かい調整、MIXをする。

良くも悪くも今現在のBIGMAMA案件は、
作詞、作曲に加えてプロデューサーも兼ねているのだけれど（多分）、
今回は歌の発音をチェックしてもらう人、
という人を特別に招いてレコーディングをしていたところ。
（発音とか発声とかってとてもムズカシイ。）
あらゆる場面において、
先入観の無い第三者に判断をしてもらうということはとても大切なことだし、
あと単純に新しい人と仕事をすると、
全く新しい発見があっていろいろと楽しいことが多い。

今日一番心に残っていることは、
“aware”という単語を発音する時に、
文頭の”a”の部分は、

「腹をパンチされた時に思わず出ちゃったaみたいな、か細い音で発音してみてください。」

というアドバイスを頂き、
なるほど！合点承知！と思った僕は歌詞カードのその単語の横に、
腹をパンチと赤鉛筆で書き込んでいそいそレコーディングブースに戻った。
そして、いざ本番、マイクを前にして、
ちょうどその歌詞”aware”に合わせて、試しに腹をパンチしてみたのだけれど、
普通に「ゔっ」みたいな全然違う声が出た、ということでした。

「ゔぇえあぁ」

ソウイウコトジャナイヨ。

疲労感というのは、
普段なかなかネガティブな響きを持った言葉だけれど、
きちんと、やりがいという言葉とイコールで結んであげることが出来れば、
突然幸せな響きをして輝き出すから不思議だ。
明日からは別のチャンネルで違う仕事に取り掛かるので、
違う内容になりそうな予感（希望的観測）。
それではまた明日。

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本日の表紙は＿h.aikoさんの写真を使用させていただいております。