「本のある暮らしーその9」古本屋の使命とは何か。|MASATO ZAITSU @BookHiroshima #note
今回は古本の値段について考えてみる。古本屋の仕入れは大半が一般の方から依頼される買取である。買取は古物商の免許が必要になるが、お宅に伺ったり送ってもらったりした本を査定する。査定とは「この本は一体いくらで売れるか」と見極めて、仕入れ値を決めることを意味する。
土地や家屋などのような一般評価額はない。いわば査定する人間の心ひとつであるが、古本屋に共通する認識みたいなものはいくつかある。ここが一般の方と古本屋が大きく異なる点でもある。
まず、査定する本の元々の価格はあまり関係ない。例えば高額の百科辞典など今や買い取る古本屋はほぼない。理由は明確で、百科辞典を買う方がいないからである。次に、沢山売れたか否かも関係ない。古本屋は希少価値を重視する。また刊行時期は古いほどいい。
一方新古書店では「発売3カ月以内の新しい単行本は定価の〇〇%で買い取ります」という時がある。県外の新刊書店チェーンは新古書部門もあるが、「古いことによる付加価値や希少価値は査定に加味しません」と明言されており、古本屋とは対極の価値観の上にある。
いい悪いではない。同じ本でも売る場所によって査定方法や査定金額が大きく異なるのはこのためである。古本屋はデータ化した査定金額の共有などをしていないので、店によって査定金額が異なるのはあたりまえで、同じ店であっても在庫や繁盛の時期により少しずつ査定額が異なる場合もある。
もう一つの仕入れは業者市会、交換会と呼ばれるものでこれらは各地の古書籍商業協同組合に加盟していれば全国の市場に参加できる。基本入札制度なので、参加している古書店の店数などでも落札金額は変わる。このように仕入れ価格がめまぐるしく上下するのが古本屋なのである。売れないと在庫はどんどんたまってくる。
何をどうしても売れない本はある。それも結構ある。でも、古書店舗や倉庫にはもちろんキャパがある。その時、古本屋は本を最後まで看ることになる。本を再利用してくれる形でその最後を見届ける。これも古本屋の宿命である。
このように、扱うものが本であることを除けば、新刊書店と古本屋は別の商売と言ってもいいだろう。総じて「古本屋は自分で自由に決めていい」のだ。
世の中は自由と不安定がセットになっていることが多いが、古本屋も例外ではない。
同時に古本屋の魅力はここにもある。新刊書店出身の人が古本屋を始めるケースが割とあるが、その自由を求めてかどうかはわからない。ただ新刊書店で発売された本が長い年月と読者の手を経て古本屋にたどり着くことがなければ、古書店は決して成り立たない。
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