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「本のある暮らしーその6」歴史が持つ使命感と、プロ野球新人選手が放つような貪欲さが、より深く地域を「本」で結ぶプロジェクトが結実させていくことになる。@BookHiroshima #note

書店に限らず「地元密着」「地域に根差した」とよく表現するが、実際にはどのようなことを意味するのだろうか。
 
徳島県で1739年に誕生し創業280年を超える新刊書店がある。
「元文4年、紙屋として初代惣吉が富岡町で商いを始めて以来、「紙」を離れたことはありません」
 
こう宣言する株式会社平惣の書籍部責任者兼徳島店店長の八百原さんに伺った。
「コロナ禍以前はどうすれば人が集まるのかを考えていた」と話す。読み聞かせや作家のサイン会や講演会などに長年取り組んできたが、2019年8月「創業280周年記念絵本ワールドinとくしま」を徳島新聞社と共催し、4000人を超える参加者となり成功を収めた。だが、世界を強襲した新型コロナウイルス感染症は当たり前のように、あらゆるイベントを中止に追い込んだ。しかし歴史が持つ使命感と、プロ野球新人選手が放つような貪欲さが、より深く地域を「本」で結ぶプロジェクトが結実させていくことになる。
 
「徳島県の自治体を中心とする団体が制作された絵本「おでかけ」に協力でき、県内に住む3歳~6歳の23000人に絵本を配布することが叶いました」。
 
さらに、徳島県木頭村を舞台にした小説「奇跡の村」(KADOKAWA)の販売促進を兼ね民間企業の木頭柚子商品の店頭販売を実施。同書は平惣史上初の2年連続のトップセールスを記録、また販売個数も企業が驚くほどの数を記録し、新刊書店が従来持つ「モノを売る力」と書店員が発揮する「陳列する力」を再確認できた。
さらに自治体勝浦町ともコラボレーションを行い、同町の特産品販売を試みて、イベント実施の委託へと繋がった。
 
「地域の書店、メディア、自治体、図書館、学校などと連携し、さらに民間企業も一緒に本を通して地域社会を文化で結び、徳島県のPRも行っていきたい」。
 
2021年12月からは「未来の本屋」をテーマにしたワークショップを徳島大学と平惣が開催している。そこで出た知恵を、実際に平惣の店舗で試行し効果を検証するというとても興味深い試みだ。平惣はまた一つ新しい扉を開くことになる。八百原さんの言葉を聞いていて、地域に根差すとは
 
「地域や地元をさらに育てて進化させる意識を持つ」ことではないかと思いはじめている。地域から生まれ出る何か、ではなく本屋という器から地域をさらに創り出していくと言えるのかもしれない。

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