クラウドファンディングはまさに現代のマーケティングだ!
3月1日から4月16日まで生産者支援の一環としてクラウドファンディングを実施し、皆様の応援のおかげでプロジェクトは見事成功することができた!
筆者はこのプロジェクトにおいて企画から準備、実行、募集中のフォロー等をサポートした。その経験を踏まえ、今回はクラウドファンディングについて感じたことを想いのままに書いてみる。
そもそもクラウドファンディングとは?
クラウドファンディングとは「クラウド(群衆)」と「ファウンディング(資金調達)」を掛け合わせた造語であり、不特定多数の人から少額ずつ集める資金調達方法である。
新しいビジネスを行う場合、これまでは事業者が資金を先に集めてから商品やサービスを開発しなければならなかった。しかし、クラウドファンディングでは事業者が「こういうビジネス(取り組み)を実現したい!」という目的に対して、それに共感する消費者(=支援者)から先に資金を集めてから事業ができるようになった。
READY FORの説明によるとクラウドファンディング①購入型、②寄付型、③金融型の3つに分かれているが、今回筆者がサポートしたクラウドファンディングは①の購入型になる。
クラウドファンディングに至る経緯
では、なぜクラウドファンディングを行うことになったのか?筆者は2019年度から6次産業化エグゼクティブプランナーとして、鹿児島県の知覧町にて紅茶の6次産業化に取り組む㈱知覧心茶堂を支援することになった。
お茶業界について簡単に説明すると、お茶の消費量は年々減少傾向にある。特に茶葉(リーフ)を急須で飲む文化が薄れつつあり、その影響でお茶の相場も年々下落し、過去最低を更新している。㈱知覧心茶堂は紅茶の加工することで付加価値を高めようと模索していた。
2019年に筆者が支援をすることになり、まず経営分析を行った結果、㈱知覧心茶堂では10年前から紅茶の発酵過程でGABAの含有量を増やす「GABA茶(紅茶)」の研究・製造にも取り組んでいたことに着目し、その機能性を生かして健康・スポーツ分野にターゲットを絞って販路を開拓した。
しかし、2020年に入り国内でも新型コロナウイルス感染症が蔓延したことによって開拓した外食向けの販路がなくなった。そこでEC向けに販路を切り換えたが「GABA茶」がまだまだ普及していなかったことを実感した。そこで「GABA茶」を世間に広く知ってもらうためにクラウドファンディングに挑戦することになったのである。
救世主の登場により課題の情報発信に光明が
しかし、クラウドファンディングで課題になるのが「情報発信力」。よく「SNSで発信する」と軽々しく言う人が多いが、実際にSNSをやっている人であればあるほど、そんなに簡単ではないことがわかると思う。
㈱知覧心茶堂もSNS(Facebook、Instagram、Twitter)をやっていたが、まだまだ強化中。筆者自身も自分のSNSのフォロワーでは全く力になれないことは理解していた。そこで、㈱知覧心茶堂の繋がりで情報発信力のある人がいないかを模索してみた。
そしたら、なんと元バレーボール日本代表で鹿児島出身の迫田さおり選手と鹿児島のテレビ番組で共演したことがあり、今も繋がっているとのこと。「これだ!」と思い、迫田さおりさんに打診したところ「鹿児島のためになるのであれば」とOKをもらうことができたのである!
どう消費者の興味を惹く返礼品を準備するか
「よし、これでイケる!」と思ったが、そんな簡単なわけがなかった。いざ準備をするとなると考えなければならないことが山ほどあった。特に難しかったのが商品設計。商品の内容だけでなく、どう購入単価を上げるか?というのも重要なポイントである。
返礼品として「何を」準備するのか。もちろん、今回の目的は「GABA茶」を広めることなので「GABA茶」がメイン商品になるのは間違いない。ただ「GABA茶○袋を買ってください!」だけでは支援者も興味を持ってくれないだろう。
まずGABA茶を日常的に手軽に飲んでもらうために「マイボトルとセットが良いのでは?」と考えた。そこで「今回限定」としてプロジェクトを応援してくれる迫田さおりさんの直筆サイン入りのマイボトルを用意した。
さらに、「GABA茶」を継続して飲んでもらうためにどうするか?も重要である。その点では昨今注目されているサブスクリプション(定期配達)用の商品も準備した。他にも茶畑のオーナー制度やワークショップ体験など、消費者の興味を惹く商品をチームメンバーで意見を出し合って考えた。
募集中はプロジェクトをいかに周知できるか
3月1日にいざ募集開始!迫田さおりさんや㈱知覧心茶堂、そしてチームメンバー全員でSNSでの発信はもちろんメディアへのプレスリリースや個別のメールでの案内を一斉に行った。
幸いなことにスタートダッシュは成功!
しかし、開始5日を過ぎるを徐々に支援数も減ってくる。するとだんだん心配になってきて、頻繁に携帯で進捗を確認するように。
「もし失敗したら迫田さおりさんのブランドにも傷をつけてしまう・・・」「このままではせっかく準備したプロジェクトが水の泡に・・・」
と常に不安が付きまとう。
しかし、ここで有難かったのが、READY FORの担当者と定期的に打ち合わせができたこと。READY FORではクラウドファンディングを行う際にフルサポート支援がある(※手数料は高くなる)。その定例ミーティングで、現在の進捗が他の案件と比べてどうなのか?支援者はどういう経路でサイトを訪れているのかなどを知ることができ、今後どう周知していくはも相談できる。
そこで、さらに周知を図るために迫田さおりさんにご協力いただき、知覧町でインスタLiveをしたり、㈱知覧心茶堂の東垂水社長と迫田さおりさんの対談(司会:筆者)をYouTuve Liveで配信するなど、私自身も初めてのプロモーション手法についても試行錯誤しながら発信した。
クラウドファンディングはSNSマーケの集約版
結果として、本プロジェクトは184万9,500円(達成率123%)、延べ170人の方から支援をいただき見事目標金額150万を大幅に超えて達成することができた。
しかし、このクラウドファンディングについては、私一人の力でどうにかできるものではなかったということ改めて強調したい。そもそも迫田さおりさんの協力がなければ成功すら難しかったし、他のチームメンバーも協力してくれたからこそ商品設計やプロモーションもできた。本当に感謝しかない。
自分自身もサポートする立場でありながら沢山のことを勉強させてもらえた。特に動画の編集やYouTube Liveなどは初めての経験であった。また、SNSでの発信についても知ってたつもりで全然知らないことばかりであり、今回のプロジェクトはまさに目から鱗であった。
最後に「結局クラウドファンディングとは何だったのか?」について考えてみたい。クラウドファンディングとは一言で表すと「現代のマーケティングの集約版」である。
共感を生む目的・ストーリー : Vision (ビジョン)
購入したいと思わせる商品設計 : Product (商品) & Price (価格)
Webの募集・SNSでの情報発信 : Place (チャネル) & Promotion (広告)
これを農林漁業者がいきなりやれと言われても難しい。
以前、あるセミナーで「クラウドファンディングはリスクがないので是非チャレンジしてください!」と声高々に言っていた講師がいた。確かに運営会社への手数料は成功報酬だし、プロジェクトが成功しなければ費用は発生しない。
しかし、企画や準備にかける人件費や募集ページに掲載する写真撮影や動画の作成費、また新商品であれば試作費などはプロジェクトが失敗に終われば持ち出しになってしまうし、さらに募集期間の心理的負担も大きい。そういったこともきちんと伝えるべきである。
では、「クラウドファンディングはやらない方が良いのか?」
筆者の答えは「敢えてチャレンジするべき!」である。
「自分達の想いや商品が消費者に受け入れられるのか?応援してもらえるのか?」を試す絶好の機会である。またSNSについても否が応でも勉強しなければならない。
そういった意味ではクラウドファンディングというツールはまさにビジネスをしながら現代のマーケティングを身につける絶好の機会であり、是非チャレンジしてみて欲しい!