第1章 ヨウとおジィ 昔ばなし 25
数年前、当時の内閣は自衛隊の派遣先を、安全な地域という限定を取っ払って、武器を携帯して米軍に帯同できるという法案を通した。パキスタンで増加し続けるイスラム過激派を掃討するために、アメリカはアフガニスタンから兵を越境駐留させ始めた。
インドで起こった同時テロ以降印パの関係が悪化したことも越境駐留の理由のひとつだ。アメリカ大統領は各国に軍事応援を求め、日本は戦後初めて戦闘地域に自衛隊を送り込んだ。
アメリカは数年前からの不景気で、同時多発テロ後のように、莫大な軍事費の予算を通せなくなった。アメリカ主導で戦争をすることに、アメリカ自身が嫌気をさしていた。たくさんの金をつぎ込んで、アメリカは世界の覇者から世界の嫌われ者になってしまった。
おジィから聞いて知ったけど、アメリカの軍隊は志願制をとっているらしい。貧乏な若者はその後の人生に兵役が就職や大学進学に有利に作用するという理由で軍隊に志願する。将来や学費のために、貧乏な若者は兵隊になる。不景気になったアメリカで、軍に生活の糧を求める若者は増加する。そしてやっぱり貧乏な人間が、戦争で死んだりひどい目にあう。
イラクやアフガニスタンの駐留兵士の自殺率は上昇し続けている。帰国しても神経をやられて狂ったり犯罪者になる者も少なくない。戦争に参加するとその後の人生が有意義なものになるという触れ込みは、いったいどのくらい信憑性があるのだろう。結局貧乏人が貧乏くじを無理やり引かされているだけのような気がした。
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