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プロローグ 02

そこがパキスタンのどこかは分らない。ヒョウゴさんがパキスタンに行くといったからパキスタンとわかるだけで、イランやアフガニスタンだといわれても僕には判断がつかない。男達は、ターバンを巻き、ダボっとした肌触りがよさそうな服を着て、ライフルをばりばり撃っている。

何語だか分らないが、男達は激しく喚き合っている。映像の向こうには、背嚢を背負い、戦闘用のヘルメットとゴーグルを着けた白人や黒人が映っている。白人や黒人は明らかに劣勢で、周囲を囲まれている。ワンボックスカー二台を遮蔽物にして、白人や黒人は、でたらめに飛び交う銃弾の隙間を縫って、的確な応戦をする。

彼らは鍛え抜かれた軍人なのだろう。銃身の長いライフルを構えた男が立ったまま照準を覗いて狙撃体勢に入ると、別の黒人の大男がサブマシンガンで援護する。とてもリズムよく、正確に。狙撃手のライフルの砲先が煌いた瞬間、ブルーのターバンを巻いた男が倒れた。カメラの十メートルほど向こうでの出来事だ。狙撃手は恐ろしく的確に、一発の弾丸で、一人の人間に致命傷を与える。しかし周りはパキスタン人だらけだ。

パキスタン人は構わず突撃銃を連射する。ひとりの男が何か大声を出して、パキスタン人の間から歓声が上がっている。携帯ロケット砲を肩に担いだのだ。そして、撃った。ヘルメットの一団から「アールピージー、アールピージー」という怒声が飛んだ。説得力と緊迫感の塊のような声だった。ターバンの男が発射の瞬間よろめいて、ロケット砲はワンボックスカーからは逸れたが、爆心地の一番近くにいた白人が、ちゃちなヒーローものの特撮でビニールの怪人がそうなるように、無機質に吹き飛んだ。

ヘルメットの一団が、ガーネットと繰り返し叫んでいる。ひとりが両脇にサブマシンガンを抱えて連射しながら、もうひとりがガーネットであろう、吹き飛んだ男を救出するために、車の陰まで引きずっていく。パキスタンの側でも悲鳴が聞こえる。左のわき腹から、溢れるように血が噴出している男に向かって、もうひとりの男が狂ったように叫んでいる。

白い衣は一瞬で、赤黒くびしょ濡れになった。左のわき腹から血を流す男の呼吸が停止するのを確認してから、叫び続けていた男は、思い立ったように突然、無防備のまま、ワンボクッスカーに向かって走り出した。タタッという二連射が聞こえたと同時に、パキスタン人は前のめりに倒れこんだ。

ゲットアウト、マン──。銃撃戦の最中何度かこの言葉が聞こえてきて、カメラが揺れる瞬間があった。この戦闘で何者でもないヒョウゴさんは、煙たがられている。カメラが下を向いたとき、おそらく撮影している人間が持っているであろう、ライフルが映った。ヒョウゴさんはライフルを持っている。

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