RRR(アールアールアール)
2021年10月21日に日本で劇場公開され、現在(原稿を書いている時点)も全国各地で劇場公開が続いているS.S.ラージャマウリ監督の『RRR』。3時間近い上映時間ながらもスゴイい、面白いといった声を聞いていたが、長尺ということで観る機会を逸していた。だが、ニューヨーク映画批評家協会賞でラージャマウリ監督が監督賞、第28回クリティックス・チョイス・アワードで外国語映画賞を獲得。第80回ゴールデングローブ賞では非英語映画賞と主題歌賞の2部門でノミネートされ、劇中歌「Naatu Naatu(ナートゥ ナートゥ)」が最優秀主題歌賞に、第95回のオスカーで歌曲賞(主題歌賞)にノミネートされた(その後、見事に受賞)ことから、ようやく立川シネマシティの“極上音響上映”(休憩20分あり)で観た。これが噂以上の面白さで、3時間近い上映時間を感じさせない見せ場の連続で、久々に興奮を味わった。なぜ、もっと早く観なかったのかを後悔し、もし、昨年の間に観ていたら、個人的には断トツの1位にしただろう。
思えば、筆者がインド映画を初めて観たのは、NHK教育でかつて放送されていた『アジア映画劇場』で観た巨匠サタジット・レイ監督の『遠い雷鳴』だった。その後、1998年に公開されて大ヒット(シネマライズ渋谷の動員記録を作った)した“スーパースター”ラジニカーント主演の『ムトゥ 踊るマハラジャ』も劇場では観ていなくて、レーザーディスクは持っていた。そして、2018年にリバイバル上映されたときにようやくキネカ大森で観て、その面白さに改めて驚かされた。そのほか、ラージャマウリ監督の『マッキー』、ラジニカーント主演の『ロボット』や『ロボット2.0』はマスコミ試写で観ていたし、大ヒットしたラージャマウリ監督の『バーフバリ』シリーズは劇場上映でもなかなか席が取れなくて、未だに劇場のスクリーンでは観られていない。だが、『RRR』をきっかけに、『バーフバリ』シリーズも機会があったらスクリーンで観てみようか、という気にもなっている。
で、『RRR』だが、舞台は1920年、英国植民地時代のインド。英国軍にさらわれた少女(妹)を救うため立ち上がったN・T・ラーマ・ラオ・Jr演じるビームと、大義のため英国の警察官となったラーム・チャラン演じるラーマは、互いの素性を知らずに親友となるが……というのが大まかな流れだ。だが、物語の構造はいたってシンプルでベタ。男たちの友情、さらわれた妹の救出、ビームとオリビア・モリス演じるイギリス人女性ジェニーとの恋、ビームととある人物(未見の方のためにここでは内緒)の英国軍に対する報復と、さまざまなジャンルがごった煮になった、まさに満漢全席の料理を食べたような満腹感が味わえる。CGを駆使したド派手なアクション、ビームとラームが英国軍主催のパーティーで歌い踊る「Naatu Naatu(ナートゥ ナートゥ)」を始めとする劇中に流れる曲の数々、クライマックスで怒涛のごとく展開される英国軍との戦いなど、まさかと思えるような描写の数々には圧倒される。3時間という長尺を感じさせないアイデアが満載で、エンドロールもただ名前だけを流すのではなく、クレジットは画面の4分の1ぐらいの幅で、他の4分の3はキャストや監督も加わった大ミュージカルシーンが展開し、観客を途中で立たせず、最後まで楽しませようとするサービス精神には頭が下がるし、終幕後には思わず拍手をしたくなる(実際、立川の映画館では拍手が起こっていた)ような気分にもさせられる。それぐらい、『RRR』には現在の日本映画(特にメジャー系のコミック原作の映画やテレビドラマの映画版など)では足元にも及ばない、到底かなわない強烈なパワーと勢いが映画から炸裂している。あと、『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』に出演していたアリソン・ドゥーディが出演していたことに後から気付いて驚いた。
日本でロングラン上映され、応援上映がすぐにソールドアウトするなど、『RRR』の快進撃はしばらく続きそうだ。筆者はすっかり乗り遅れてしまったが、これでようやくブームに追いついたかなと思う。上映がしばらく続くようなら、配信もソフト発売もかなり先になるだろう。そうなったら、やはりこの映画は劇場の大きなスクリーンで観ておくべきだ。ジョージ・ミラー監督の『マッドマックス 怒りのデス・ロード』以来の劇場通いも考えてみようか。それほど魅力あふれる作品であることは間違いない。
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