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【公認心理師は果たして食べていけるのかを検証】 スクールカウンセラー雇い止め問題

スクールカウンセラーら「不当」「雇い止め」都を集団提訴へ 
(2024年9月24日 東京新聞朝刊1面)

公認心理師は医療、産業、福祉、司法、教育の5つの分野が活動領域である。
その中でスクールカウンセラーは教育領域の中の花形職種と言って良い。
なぜ花形か? 
それは給与が良いからだ。
例えば病院のカウンセラーだと給与が高そうに思うだろうが、それは全くの誤解だ。
病院のカウンセラーは時給1,200円くらいがスタートだ。
この1,200円は東京都の最低時給(1,163円)とほぼイコールである。
当然この時給はスタート時なので、昇給していくことは可能性はあるとは言え
大学院まで行って、修士課程を終わらせ、公認心理師試験に合格して働けると思ったらこの程度。
いくら自分が希望した仕事とはいえ、ちょっとあんまりな給与だと思ってしまう。
なぜ、こんなに公認心理士の給与が安いのか?
それは公認心理師という資格は医師のように業務独占資格、名称独占資格であることが大きい。
業務独占資格とは医師免許をもつ医師しか医療行為ができない、つまり医療行為は医師が独占しているということ。
一方名称独占資格とは、公認心理師の資格をとってもあくまで、公認心理師を名乗って良いと許されるだけで、心理療法などは別に公認心理師以外もできてしまう、という意味である。
このように業務が独占できないため競合があり、仕事の取り合いが起きてしまう。
その最たるものが臨床心理士である。
臨床心理士は国家資格ではないが、歴史も長く、心理職の資格の中でのステータスが高く、歴史の浅い公認心理師より信頼性が高いと思っている心理関係者も多い。
もう一つ歴史が長いものに産業カウンセラーという資格もある。
しかしこの産業カウンセラーという資格は正直言ってお金と時間があれば誰でもとれる。母体である産業カウンセラー協会もそのことはよくわかっていて、昨今はキャリアコンサルタント(こちらは国家資格)の教育を熱心に行なっているくらいだ。
当然カウンセラーとして医療とか福祉ではたらくことは産業カウンセラーの資格だけ持っていても無理である。
したがって、まともな心理カウンセラーの仕事をしようとする若者は、臨床心理士と公認心理師の両方の資格取得を目指している。
多くの大学院でも両方の資格がとれるようにカリキュラムを組んでいるのが現状である。
そんな状況なので、心理職を目指すのは結構大変なのだが、いざ就職となると医療分野では非常勤で働く場合が多く、前述の通り時給も安い。

では、スクールカウンセラーはどうか。
立場は非常勤の公務員と、やはり恒久的な仕事とは言えない。
しかし時給はなんと2,400円! 
医療分野の倍である。
学校を2校くらいを掛け持ちすればなんとか食べていける収入は得られるのだ。
私の知り合いのカウンセラーは大体このスクールカウンセラーを主業として副業で自分のカウンセリングルームを持ってそこでお小遣いかせぎをしている人が多い。
公認心理師の資格だけで医療分野で食べていっている人を私は知らない。
医療分野では精神科の先生が公認心理師資格も持っていて、必要に応じてカウンセリングを行なっている。
このような状況なので公認心理師のみの資格の人は医療分野では医師免許を持っている医者と仕事の取り合いをするわけだが、当然医師には勝てない。
そのため公認心理師は医師の下働きとしての仕事しかなく、時給も安いという憂き目ににあうことになる。
残った産業、司法はどうか。
そもそもこの2分野からは公認心理師の求人が少ない。
したがって公認心理師にとってスクールカウンセラーはどうしてもやりたい仕事であり、応募者も多い。

では、スクールカウンセラーの雇い止めの話に戻そう。
「訴状によると、訴えた10人は5〜26年 都のSC(スクールカウンセラー)として任用を更新してきた。23年度は任用の更新上限に達したため公募試験を受けた結果、「不合格」や補欠に当たる「補充任用」となり、24年から任用されないと通知された。
さらに東京新聞の3面では公募試験の合格者数や都内のSCの人数の情報があるのでそこから都のSCの人数構成を想定してみた。

・全くの新規でスクールカウンセラーになった人 440名程度(受験者800名程度)
・更新回数の制限に達せず公募試験を受けなかった人 420名程度
・公募試験での合格者 700〜800名(受験者1,000名程度)

この想定が正しいとするとなんやかんや言って公募試験の合格者が一番多いのだ。
しかも合格率も新規より更新の方が高いのである。
逆を返すと今回公募試験に受からなかった人はもしかして能力がなかっただけなのではと訝ってしまう。
能力がないのに、既得権益にしがみつく輩かもしれない。
それはさておき、やる気があってこれから心理職として世の中に貢献しようとして公認心理師の資格を取得しても、唯一食っていけそうな教育分野では既得権益を振りかざす先輩公認心理師が幅を利かせているという状況なのかもしれないのだ。

では、最後にこの記事のタイトルに掲げた
「公認心理師は果たして食べていけるのかを検証」
してみよう。
公認心理師の資格だけとっても食ってはいけない
というのが私の結論だ。
もし医療系のみで食べていこうとするなら、精神科医になるのが無難だろう。
前述の通り医療分野以外の他の分野はどこも厳しい、と思った方良い。
それでも心理職としてやっていくのであればそれ相応の覚悟が必要となる。
覚悟がつかないなら、趣味として心理を勉強し、セカンドライフとして心理職を目指すというのがおすすめである。←因みに私がこのタイプである。



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