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第5話 スペシャリスト課長とゼネラリスト課長:リーダーのつぶやき、フォロワーのつぶやき

 いつもお読みいただきありがとうございます。久しぶりの投稿になってしまいましたが、今回は、人生100年時代を生き抜くためのリーダーの思考方法について、スペシャリスト型かゼネラリスト型かどちらが適しているかについて述べてみたいと思います。

 A課の課長であるA課長とB課の課長であるB課長とがいます。A課長は、何事も追求しなければ気が済まない質で、部下社員が企画案をもってきても「なるほど、良く出来ている。でも、もう少し考えてみよう。」あるいは場合によっては「一緒に考えてみよう。」といって、部下社員に再考を促す指導を繰り返しています。
 これに対しB課長は、部下社員がどのような企画をもってきても、「君に任せるよ」と部下社員に任せる指導をしています。
 どちらの指導方法が良いかは、一概には言えません。というのは、A課長の場合、部下社員が、自身の企画案の再考につながり、さらなる高みへとつながる可能性を秘めています。しかし、ダメ出しを食らった社員は、意気消沈することもあるかもしれないし、面倒くさいと感じる社員もいるかもしれないというデメリットもあります。B課長の場合、どのような企画案でも部下社員に任せるというので、部下社員の自律性は育つかもしれませんが、その成果は部下社員の能力次第であるというデメリットもあります。

 ここで、両課長になぜそのような指導をするのかについて、つぶやいてもらいましょう。
 まず、A課長のつぶやきです。「俺が一番恐れているのは、担当者としてやっていた時と比べて腕が鈍ること、自分自身の発想が枯渇することだ。だから、部下社員が企画案を持ってきた時も場合によったら一緒に考えたりするようにしている。時間は、一つのことを深く掘り下げることに使いたい。でも一緒に考えたからには、その企画については自身も責任を持つことを心がけている。」
 B課長はどうでしょうか、「俺の一番の関心事は、昇進だ。組織の階層を上がり、権限を手にするようになれば、何でもできる。だから、現在の部所は腰掛程度にしか考えていない。現在の部所の仕事を深く追求しようとは考えていない。時間は、広く浅い知識で、自身の上司や会社上層部にうまくプレゼンすることや、調整に使うことだ。専門的な事柄になってくると、自分の課の担当者に説明させればいい。」
部下の失敗についてはどうでしょう。A課長は「一緒に考えたからは、その企画については自身にも責任があるので、失敗しても部下社員とともに、もう一度失敗の原因を追究していく。」B課長は、「自己責任の時代ですよ。失敗の責任は当然企画をした当事者がとるべきでしょう。」とつぶやいています。
 次に、フォロワーである部下社員につぶやいてもらいましょう。最初は、A課長の下で働いているCさんのつぶやきです。「A課長は、どのような企画案をもっていっても必ず再考を促されるので、企画の完成まで時間がかかってしようがない。しかし、再考を促されることによって、自身の企画案の問題点や一つのことを深く掘り下げる点では確かに勉強になるし、場合によってはA課長とともに検討することもあるので、自身の思慮の浅さに気づくこともある。」同じくA課のDさんのつぶやきです。「面倒だから最初は手抜きした企画案を持っていき、その後再考したという形で一部修正した企画案を持ち込んだことがあるのだが、あのときはこっぴどく怒られた。時間を節約しようと、ゆるい企画をもっていくとA課長に見透かされてしまい、結果的に、また再考ということになり、かえって時間がかかった。企画内容を見抜く力は、さすがとしか言いようがない。」
 では、B課長の下で働くEさんのつぶやきを紹介します。「B課長の下では、企画を通すのは簡単だが、その後が大変よ。B課長の上司に説明する際、上司から指摘されると、その責任は全て部下である自分に返ってくる。うまくいったときはいいけど、うまくいかないときは最悪な状態になってしまう。」
 A課長とB課長の指導方法は対照的です。この背景には、2人の思考方法の差異があります。思考方法の差異は指導方法の差異につながります。あえてパターン化するならば、A課長はスペシャリスト型でありB課長はゼネラリスト型です。

 今後、人生100年時代を生き抜くために、どちらの課長の思考方法が有効でしょうか。人生100年時代そして少子化の時代においては、定年も延長されるでしょうから、昇進スピードは緩やかになり、組織もフラット化してくることが想定されます。そのような時代にB課長のようなゼネラリスト型の思考パターンで組織の中を泳ぎ切れるでしょうか。そもそも、組織のフラット化により就くべきポストは少なくなり、かつ、昇進スピードは緩やかになってくることが予測されます。階層構造が多くある従来型の組織においては、それぞれの階層のプールの中で泳ぎ切ればよかったのですが、その階層が少なくなった場合、広い海で長い期間泳がなければならなくなります。その際に頼ることができるのは、自身の技能しかありません。人生100年時代においては、組織の中のどの役職にあるかよりも、何ができるかの方が重要視されてくることが予測されます。そのような時代を生き抜く思考パターンこそA課長のようなスペシャリスト型の思考方法と、それに基づく部下社員の指導方法であると思われます。本稿のテーマであるリーダーシップに沿って言い換えるならば、リーダーとフォロワーとがともに深く考え、ともに深く学び、ともに深く経験し、ともに失敗し、ともに失敗の原因を深く究明していく相互に深い影響関係のプロセスの継続こそ重視すべき事柄と思います。

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