第2話 人は、それぞれ、暗黙のリーダー像を持っている
2021年春就職予定の男女に対して、ある生命保険会社が実施した、新入社員が選ぶ「理想の上司」総合ランキングの結果は、男性上司では、「内村光良」さん、女性上司では、「水ト麻美」さんが、ともに、“親しみやすい”、“優しい”イメージで5年連続の1位でした。2位は、男性では“知性的・スマート”、“頼もしい”イメージから「櫻井翔」さん、女性では、“頼もしい”、“姉御(肌)”イメージから「天海祐希」さん、3位は、男性では、“指導力がある”、“実力がある”イメージで「イチロー」さん、女性では、“親しみやすい”、“落ち着きのある”、“優しい”イメージで「新垣結衣」さんだそうです。
(「明治安田生命相互会社HP ニュースリリース 2021/02/02」より。)
ほとんどの回答者が彼ら、彼女らとは、親しく付き合っていないにもかかわらず、理想の上司と回答をしているのだと思います。なぜ、回答できるのでしょうか?不思議ですよね。以下、少しこのことについて考えてみましょう。
全員に共通して言えるのは、テレビや映画に出演しているということです。おそらく、回答者は、テレビを見て感じたイメージやテレビドラマや映画などでの配役や発言などから、このような人だろうと類推して理想の上司と回答したのでしょう。類推で回答ができるのならば、理想の上司について、歴史上の人物では誰かということも回答可能なはずです。
事実、2009年3月実施の同アンケートでは、理想の上司について、歴史上の人物では、1位が「坂本龍馬」、2位が「徳川家康」、3位が「織田信長」でした。過去の歴史上の人物においては、話すこともできず、お目にかかることもできないので、史実、テレビドラマ、映画、歴史小説等から類推するしかありません。もしここで、理想の上司に代わりに「理想の夫や妻は誰ですか?」との質問をしたとしても、類推により回答は可能なはずです。
このことは、人は、さまざまな事柄に対する暗黙のイメージを持っているということを示唆しています。そして、個人が持つ暗黙のイメージを評価対象者に当てはめて、暗黙のイメージに近い人を、理想の上司であれば○○さん、理想の夫、妻であれば△△さんや□□さんと回答するのだと考えられます。
ここでは、リーダーシップの議論ですから、リーダーに関する暗黙のイメージについて書いていきます。つまり、人は「○○という結果をもたらすものや、○○という特徴を持っているものがリーダーである」という暗黙のリーダー像を所有しているという考え方です。新入社員にとっては、会社の上司との関係は、リーダーと部下の関係です。多くのアンケート回答者の暗黙のリーダー像に近かったのが、”親しみやすく”、”優しい”イメージがする「内村光良」さん、「水ト麻美」さんだったのでしょう。
【1人でも部下を持つ人が学ぶべき事柄】
1人でも部下を持ったら、部下から理想の上司と言われたり、思われたりしたいものです。理想の上司の下で働く部下社員は、ワークモチベーションも高く、職場への定着率も高くなると思います。そして、その部下が、新入社員であり、その社員にどのように接すればよいかわからなかったら、その接し方は、親しみやすく、優しいがキーワードになると思われます。