見出し画像

新卒でスタートアップ入社は正解だったのか?10年経ったいま振り返ってみる

私が2014年にインターンとしてスタートアップに足を踏み入れてから、今年で10年経過しました。

学生起業でもなく、キャリアの最初からスタートアップにいる人は珍しいこともあり、知人・友人からスタートアップへの転職相談を受けたり、「新卒でスタートアップに行くべきか悩んでいるので話を聞かせてほしい」と学生の方から連絡を頂くこともあります。

私自身は「新卒でスタートアップを選んで良かった」と思っているものの、相談を受けた際には積極的にお勧めしないことが多いです。

この記事ではその理由と、特に若手でスタートアップで働くことを志向する方はどのようにキャリア形成すると良いと私が考えているのかを整理しようと思います。あくまで個人の経験に基づく見解として、参考にしていただけると嬉しいです。


私のキャリアサマリ

  • 大学3年時に創業期のABEJAにインターンで参画

  • 大学4年時にスマートフォン動画広告プラットフォームを開発・提供するFIVEの創業期にインターンとして参画してそのまま新卒入社

  • 主にセールス職として2年半在籍したのちLINE へのM&Aを経験

  • 2018年に外国籍人材の在留資格管理システムを開発するone visaに転職

  • 同年8月より同社取締役COO兼カンボジア現地法人代表として、海外事業及び国内の事業・コーポレートの両面を管掌

  • 3年間で事業を立ち上げきれず、新型コロナの直撃もあり3度の事業撤退、3度の退職勧奨を行って退任

  • その後ミドルステージの建設DX スタートアップに転職し、HR責任者としてエグゼクティブ採用と組織・文化作りを牽引

  • 2022年7月にグッズへ入社し、HRと事業開発を兼任、現在はVP of Business Operationsとして主にセールス領域や採用、組織をリード

自身の選択には満足しているが、再現性はないと思う

まず、前提として私はスタートアップで過ごした10年にはとても満足していて、もしもう一度学生時代に戻っても同じくスタートアップを選ぶと思います。

20代のうちに経営や海外事業の立ち上げ、事業撤退や退職勧奨など負荷の高い業務を経験することができて、それらは大きな財産になっていますし、それらはスタートアップでなければ経験できていないだろうなと思うからです。

一方で、自分が良かったと感じている経験を再現できるか?というとかなり怪しいと思っており、特に新卒でアーリーフェイズのスタートアップを選ぶのは非常にリスクが高く、自分は運が良かっただけだなと思ってます。

成否を分けるのは参画したスタートアップが成功するかどうか。事業が成長しないと「広く・浅い」経験になりやすい

リスクが高いと考える理由は、いかにスタートアップとはいえ、事業が成長しないと個人の成長も難しいからです。

若手の方がスタートアップを志すのは「成長したいから」が大半に感じます。

若くして裁量ある仕事を任されて、成長できるイメージが強いのだと思います。実際アーリーフェイズのスタートアップは裁量があると思いますが、その反面業務内容は広く、浅くになりやすく、専門性が身につきにくいです。

「若手でも裁量を任される」のは、人が少ない組織では人数に対してやるべき仕事が多く、落ちているボールもたくさんあるので、未経験の業務でもアサインされやすいからです。

裏を返せば、未経験でも任せてもらえる業務を専門的にやっている人材はチームにいないケースがほとんどで、そこで積める経験はどうしても「広く、浅く」になってしまいます。

事業が成長すると専門性も高まり、成果を出していれば重要なポジションも任されやすい

事業が順調に成長すると人が増えて分業が進み、専門的な経験を積んだ中途人材がチームに参加して業務がどんどん専門的になっていきます。

初期から在籍しているメンバーはその事業ドメインに詳しくなっていて社内価値が高いこともあり、成果を出し続けていれば重要なポジションにアサインもされやすいです。

そのため個人の成長スピードが事業の成長についていくことができれば、爆発的な経験値を積むことができます。

他方、事業の成長が停滞すると広く浅い経験のままキャリアを過ごすことになってしまいます。事業が停滞していると人を増やせないので、専門性の高い優秀な中途社員もなかなか入ってこず、自分なりのやり方で試行錯誤を続けることになります。

スタートアップやベンチャーを揶揄して「所詮は中小、零細企業だ」と言われることがあり悔しいですが、事業が伸びなければこれもまた事実と言えます。

1社目のFIVEが成功したのは自分の実力ではなく、運が良かっただけ

私の場合、振り返ると新卒でスタートアップに入って良かった理由は1社目の事業が停滞することなく、3年でイグジットを迎えたからに尽きると思います。

私が新卒で入社したFIVEという会社は、創業からわずか3年という短期間で70億円の評価額でLINEに買収されました。当時は停滞しているなと感じる時期もありましたがせいぜい四半期程度で、いま振り返れば事業成長速度は極めて早かったです。

そして重要なのはこれは私の実力ではなく、経営陣が優秀で市場選択と参入タイミング、参入角度が最適だったためで、「自分は実力不足にもがき苦しんでいる内に、気づいたら事業が成長してイグジットしていた」という感覚でした。

もちろん多少の貢献はあったとは思いますが、自ら会社の成功を左右できるほどの実力は当時の自分にはありませんでした。

それでも事業の成長に伴う役割の変化に戸惑いつつもやりきれたことで自身の成長には繋がりましたし、間髪入れずに2社目もアーリーなスタートアップを選び、今考えれば完全に背伸びではありましたがCOOとして経営を経験できたことが良かったのだと思います。

アーリーフェイズのスタートアップには2社目以降で挑戦

とはいえ「スタートアップは運なのでやめときましょう」とは思っていなくて、「2社目以降で強みを活かして転職する」のを個人的にはお勧めしています。

1社目では自分のキャリアの軸として何かしらの専門性の種となる強みを身に着けておくことで、2社目でも明確な役割を持って参画しやすくなりますし、アーリーフェイズの曖昧な環境でも成果を出しやすくなります。

学生ならアーリーフェイズのスタートアップで長期インターンする

もしあなたがスタートアップを志す学生ならすぐにインターン先を探すことをお勧めします。キャリア形成という意味では在学中からスタートアップでインターンをすることはメリットしかありません。

3年生の夏からインターンしたとしても最長1年半なので、新卒ではデメリットになる事業停滞リスクも問題になりません。

その間にスタートアップのスピード感に慣れ、「広く・浅く」であっても実際の業務に触れることで、新卒の段階では即戦力になれているはずです。

もしインターンで参画した会社が急成長していたら、そのまま新卒として入社交渉するのもありだと思います。インターンに限って言えば、短期間で複数社で働くよりも、1社で長く経験したほうが得られる経験値は多そうなので、1年くらい働ける会社を探すと良いと思います。

インターンをオープンに募集をしていなくても、会社の問い合わせフォームから丁寧に連絡すれば、しっかり対応してくれるところが多いと思います。

新卒ではミドル・レイタースタートアップ〜メガベンチャーを選ぶ

スタートアップの成功の不確実性は事業フェイズが進むほど下がっていきます。倒産するスタートアップの大半はプロダクトマーケットフィット(PMF)を迎えられないので、PMFしている会社を選べば不確実性はガクッと下がります。

また、現実的に新卒採用をしている会社はある程度育成にリソースを割くことができたり、新卒に任せて成果が出せる業務を生み出せているミドル〜レイターフェイズ以降の会社であることが多いです。

ミドル〜レイターフェイズのスタートアップとはいえ、社員数はまだ100人〜200人位のところが多いと思うので、何千、何万人も社員がいる会社に入社するよりは裁量も大きく、且つ同僚にもスタートアップ人材が多いはずなので将来自分が起業したり、アーリーな会社に転職した際の仲間候補にも多く巡り会えるはずです。

リスクの低下と引き換えに、「吐き気がする、冷や汗をかく」ような裁量の機会は減少

ただし、リスクが下がるのと比例して、創業期特有の裁量の大きな業務は減り、キャリア及び報酬面のアップサイドも小さくなっていきます。

業務面では、レイター以降の会社ではいわゆるコンフォートゾーンをちょっとはみ出したくらいの業務が多いのではないでしょうか。現実的に、人数が揃っている会社では命運を分けるような業務を新卒に任せる必要がないからです。

自分の過去を振り返ると、吐き気がするような重たい意思決定を自分の責任で下すときほど得られた経験値は大きかったように思うのですが、レイターになってくると若手でそこまでの責任を負う局面はなかなかないのではないかなと思います。

報酬面に関しては、一般的にスタートアップのストックオプションは一部CXOクラスを除いてアーリーフェイズに参画するほど多く割り当てられたり、行使価額等の条件が有利に設計されていることが多いです。

更にレイターフェイズではそもそもストックオプションをもらえなかったり、もらえても極少額であるケースが大半です。

敢えて単純化するとアーリーフェイズほどハイリスク・ハイリターン、レイターフェイズほどローリスク・ローリターンです。

理屈で反対されても「そんなの関係ねえ」と思う人だけ新卒で創業期のスタートアップに入るのが一番の納得解

とはいえ、個人の本音としては「リスク取れる人はどんどん取ってほしい」と思っています。ただし、リスクを把握せずに飛び込むのと、あらかじめ織り込んでいるのとではキャリアの納得感に天と地ほどの差があるので知っておくことは大事だと思います。

ものすごい成長をしたり成果を出す人はこういった目に見えるリスクを分かった上で飛び込める人であり、飛び込んだうえで自分の選んだ道を正解にするんだ、自分が会社を勝たせるんだ!という胆力がある人だったりします。

なので、色んな人に反対されても意を決して飛び込む人のことは心から応援します。

アーリーフェイズのスタートアップに飛び込むなら

では、アーリーフェイズのスタートアップで働きたいと考えていて会社探しをしている人は、どんな基準で会社を選ぶとよいのでしょうか。

ミッションや事業ドメインに共感できることは大前提ですが、それだけでは不十分です。私はやはり事業として成立し、成功する会社を選ぶ必要があると考えています。

前述のように個人の成長や報酬の観点もありますが、どれだけミッションが素晴らしくても、事業が伸びないということは社会やユーザーに価値が届いていないということであり、誰のためにもならないからです。これは自分自身が過去経営に失敗したことへの反省でもあります。

私なりの解釈では「どのように入社するスタートアップを選ぶべきか」という問いは「成功するスタートアップをどうやって見極めるか」という問いの解の上に成り立っています。

もし簡単にそれが分かったら世の中の投資家は困らないわけですが、候補者目線で確率を上げる方法はあります。

マーケットサイズや参入タイミングの確からしさ、直近の成長率など、自分のチェックポイントを細かく上げればきりがないですが、候補者目線で特に判断がつきやすい基準を2つあげます。

①シリアルアントレプレナーの会社

シリアルアントレプレナー(連続起業家)の中でも、一回以上事業を立ち上げて成功させている起業家はビジネス戦闘力が別格です。

スタートアップは事業フェイズ毎に成長の罠があったり、再現性の高いアンチパターンがあったりするのでそれらを一周経験していて回避できるだけでも成功確率は段違いです。

それに加えて、特定の領域で上手くいく仕組みに精通しているために成功を再現できる人もいます。例えば9月にグッズにCPOとして着任した福山さんはシリアルアントレプレナーであり、コミュニティビルディングの達人です。

福山さんはMixChannel(現ミクチャ)という10代向けの動画コミュニティを立ち上げて数百万ユーザー規模まで成長させましたが、その後起業して、車好きのためのコミュニティ「CARTUNE」を作り、1年超で65万DL、30万アクティブユーザーまで育てた後15億円でメルカリにM&Aしています。
グッズで一緒に仕事をしていても、ユーザー心理の洞察や注目すべきKPIの切り口などには、明らかに再現性を感じます。

直接の面識はありませんが、他にはSmartHRの代表を退任してNstockを立ち上げた宮田昇始さん、Gunosy上場後にLayerXを立ち上げた福島 良典さん、ウノウの後にメルカリを立ち上げた山田進太郎さんなど、やはり強い起業家の2回目の起業は強いです。

②有力な投資家が投資している会社

成功確率が高いスタートアップを見極めるというのは、投資家の業務そのものです。投資家は候補者がアクセスできる情報よりも遥かに詳細な情報を元にデューデリジェンスして、且つ膨大なスタートアップの情報に触れている中で「この会社は伸びる」と判断して投資しているわけです。

印象としてコーポレートVCは事業シナジーを評価して投資実行する傾向が強いのに対し、独立系のベンチャーキャピタルは事業面でのデューデリジェンスが相対的に厳しく、シリーズAくらいのアーリーフェイズでも蓋然性の証明を強く求める傾向を感じます。

裏を返せば、特に有力なキャピタリストの厳しいデューデリジェンスをくぐり抜けたスタートアップは伸びる確率が相対的に高い、少なくとも何かしらの評価ポイントがある会社だと考えて良いと思います。

資金調達のニュースは金額ばかりにフォーカスが当たりがちですが、個人的には調達額の総額は重要ではなく、どこが出資しているかや何故出資されたのかの方が候補者目線では重要だと思います。

スタートアップは楽しい。チャレンジしたい方お話しましょう

色々書きましたが、私はスタートアップで働くことも、スタートアップのエコシステムも大好きです。こんなにやりがいのある仕事はないと心から思っています。(その辺りについては以下のnoteで書いてます)

ちょっとスタートアップに興味あるかも、という方はぜひお気軽にご連絡ください。特にセールスやカスタマーサクセス、エンジニア、デザイナーの職種の方はグッズのお話もできるかもしれません。

野田とのカジュアル面談をご希望の方はこちらのフォームからご応募ください

▼グッズの会社説明note

▼採用中職種一覧

▼グッズ コーポレートサイト

▼サービスサイト

▼資金調達特設サイト



いいなと思ったら応援しよう!