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【アオアシ】あえて失敗させ、腹落ち感を誘引させるコーチング手法
こんにちは、野田と申します。
2014年からずっとスタートアップにいて、営業〜事業立ち上げ〜組織まで幅広く経験してきました。現在はグロース初期フェーズのスタートアップで採用をしています。
僕は漫画が好きで色々な漫画を読むのですが、その中でも特に「キングダム」と「アオアシ」には、ビジネスに活かせる描写がたくさんあるなと思っていて、自分の思考の整理も含めてnoteにしていきたいと思っています。初回はアオアシを題材にしてコーチング編をお送りします。
アオアシを読んでいる人には「その視点面白いね」と思っていただけたら光栄ですし、まだアオアシを読んでいない人には、ネタバレを極力避けつつ、できるだけわかりやすくアオアシの魅力を伝えるよう努力しますので「アオアシ読んでみようかな」と思っていただけたら嬉しいです。
※致命的なネタバレは避けますが場面解説を含むためお気をつけください。
現在メンバーをマネジメントする立場にいらっしゃる方、メンバーの能力開発をしたいと思う方たくさんいらっしゃると思いますが、マネジメントや能力開発をサポートするにあたって、コーチングが上手にできるとすごく成果が出しやすいと思っています。
私は前職でグローバル40名規模の会社のCOOを経験し、現職でもチームで採用を動くにあたってメンバーとマネジメントの関係にあるので、それなりにマネジメントやコーチングに関しては意識的に取り組んではいるものの、まだまだ未熟な部分もありますので、私のマネジメントコーチング論というよりは、「自分がされた際に、これは成長に効いたな」と思った視点からお話ししていきます。それでは本編です。
未熟な一年生が試合を通して成長し、戦力となる描写
アオアシは高校のユース年代を舞台にしたサッカー漫画です。ある特殊な才能を持った主人公の青井が、理論的なコーチや先輩たちに囲まれて能力の未熟さを克服しながら、プロを目指すストーリーです。
今回取り上げるのは14巻~16巻の強豪東京バンズとの一戦での一線での1年生メンバーの成長に関してです。
場面としては、チームの主力が事情により5名抜けて臨むことになった同地区の強豪東京バンズ戦。DFの4名は全員1年生で、内3人は初めてAチームの試合に出るという状況。
DFの4人は試合の2ヶ月前から通常練習の後に守備の特訓をしており、その成果を試す一戦という位置づけの試合です。
深夜練では「守備の横の距離を一定に保つ」ことをテーマに、体にロープを巻いて徹底的に守備陣の距離感を一定に保つように練習し、見事な連携を身につけます。
しかし、いざ試合に入ると守備を突破はされないものの、クリアボールを拾われてしまい、攻撃につながらない。そこで先輩から「横だけではなく、縦の距離を意識しろ」とコーチングを受けます。
コーチングを受けて、縦の距離を意識したことによって少しずつ攻撃が繋がるようになりますが、気づかないうちに連携に歪みが生まれ、前半終了間際に東京バンズに大きく攻め込まれ、前半を終えます。
そして、1年生が「なんで崩されたのかわからない」と混乱する中ハーフタイムに上級生が「俺たちにも臆せず指示をしているか?」と問い、ハッとします。
【コーチングの肝】腹落ち感を出すためには、まず自分のやり方で”失敗させる”
解説です。誰かに何かを教えたい、その通りに動いてほしいと思っても、なかなか相手は思うように動いてくれません。単純なタスクではなく、仕事観など価値観に関わるレベルのものや、本人は上手くできていると錯覚している(実際は直してほしい)ことであれば、特に難しくなります。
こうした課題に対して行動変容させるためには、「なぜそうする必要があるのか」を高いレベルで腹落ちして貰う必要がありますが、このシーンではその手法が示唆されています。
それが「まず自分でやってみて手痛い失敗をしてもらい、その上でどうしたらよいかヒントを出す」です。
特に賢い人ほど、本人の頭で納得しないと指示を本気で聞かなかったり、耳に入っていなかったり、その場だけ流してやり方は変えない傾向が強いです。そのやり方で一定の成果が出ている場合は尚更です。
そうしたケースに非常に有効なのが、失敗させて課題を自分ゴト化させてからヒントを出すというやり方です。
自分の頭で「こうやったらうまくいくはず」と思っていたことが上手く行かず、やり方が分からなくなった時は謙虚に人の意見を聞き入れやすいですし、自分の中で課題の仮説も立っている状態なので、アドバイスの意味も非常によく理解できます。
この状況を、伝えたいことから逆算して作り出して、助言を受け入れやすくなっているタイミングで上手くヒントを伝える。これがベストです。
この状況を作るためにはいくつか注意点があります。
注意点①取れるリスクを計算して経験させる
1つ目は、再起不能になるほどの大きな怪我をさせないことです。そのために(1)アサインする機会の大きさを調整する(2)失敗が広がらないように、フォローに入る(丸投げしない)が重要です。
(1)は例えば営業マン育成のケースでいうと、その商談が失敗すると、四半期の予算未達が確定するとか、会社の売上が半分なくなるとか、そういう商談で試してはいけません。
基本的に失敗させることを前提で動くので会社への損失がでかすぎますし、最悪トラウマになります。アサインとしては、あなたが自分では動かないレベルの小さな商談がよいです。(ただし、上手く行けば受注に繋がるようなものだとベストです)
(2)は失敗するポイントを予め想定しておき、自由にやらせつつも致命傷にはならないようにサポートをすることで、本来失敗してほしいポイントまで順調にたどり着きつつ、上手く行けば会社にも受注などのメリットをもたらします。
これを怠ると、本来失敗してほしいポイントのはるか手前でつまずいたり、ただ恥をかいたり、顧客に迷惑をかけたり、自信をなくして終わるといったケースが普通に起こります。
例えば商談を一人で回し、受注がとれるように育成したいであれば、商談では
-要点を抑えたヒアリング
-説得力のある切り返し
-幅広い質問に対する正確な回答
などを学ばせたいと思います。これらを学んでもらうには、最低限商談として形になっている必要があります。
なので例えば
-作成した資料は事前にチェックする
→資料作成はできるようになるのに時間がかかるのでサポートして良い
-答えられない質問が来たときのサポート
→答えられないな、という雰囲気を察してから5秒間を置くだけでOKです。それで十分冷や汗をかくので、「この知識は知っておかないといけないんだ」と学習できます。
など、失敗のセーフティネットを張っておくことで、失敗経験を積みつつ、場としては問題なく進む、という事ができます。
注意点②上手くいってなくても、ある程度自由にやらせること
そもそも今回のポイントは「上手に失敗させること」なので、上手く行ってないときに代わりに出ていってしまっては意味がありません。上でも書きましたが、例えば商談で答えられない質問が飛んできたときに、すぐに答えてしまってはいけません。最低限「冷や汗をかく所」まではしないといけないので、答えられないなという雰囲気が出てから5秒は待ちます。
アオアシでも、試合開始直後から縦の距離感が意識できていないのは一目瞭然でしたが、ある程度自由にやらせた結果1年生メンバーの腹落ち感を誘引できています。さらに、上級生に対等なコミュニケーションが取れていないとわかった上で、前半終了のハーフタイムで指摘することで、下級生はハッとすることができています。
いきなり最初から全部言われても、本人に課題意識が芽生えていなければ意味がありません。その課題意識を上手く芽生えさせるためにも、本人に「失敗した」「上手く行かなかった」「なぜそうなったのか知りたい」というマインドが生まれるまでは、自由にやってもらうのが肝だと思います。
アオアシはマネジメント・コーチングの最高の教科書
結果的にこの試合では下級生と上級生が噛み合い、後半から持ち直していくのですが、この記事で取り上げたシーン以外にも、「エゴとの向き合い方」をテーマに盛り上がっていくので、ぜひまだ読んでない方は読んでみてください!
しばらくはアオアシを題材にマネジメントやコーチングに関して執筆していこうと思います。Twitterやってますので、もしよろしければフォローしていただければ、更新情報はそちらからご覧いただけます。それでは!