バスケ業界、「潰れ慣れ」してない?
1月下旬、B3リーグ・東京八王子ビートレインズが、チームの会見の内容を発表した。それは、クラブの資金難を理由とした、「Bリーグ準加盟資格の失効」に関するものだった。
ビートレインズは、一時的に選手の移籍自由化にも踏み切り、最悪の場合、アマチュア選手でも試合を運営するという、なりふり構わない体制を発表した。
その直後。ある選手の退団リリースが出された。そして、彼の発言ににわかに注目が集まっている。
夏選手の「メッセージ」
夏達維(なつ・たつゆき)選手。僕にとって、少々懐かしく思う名前だった。2016年のBリーグ開幕時、ロボッツの一員として戦ってくれた選手だ。2018年シーズンからは、B2に参入したビートレインズに加入。そして、チームがB3に降格した今年も在籍していた。
その彼が、ブログに記した内容が、注目を集めている。もし本当ならば、Bリーグ自体の改革が必要なのではないかと感じさせられる一件だった。
スタッフにも、選手にも、生活がある
ただ、選手やスタッフが抜けていく中でこんな声を耳にしました。
「薄情だよね」「裏切りだよね」
こんな事を平気で言えるからチームがうまくいかないと思いました。
―夏選手オフィシャルサイトより
クラブによると、去年10月ごろからスタッフへの給料支払いが遅れるようになった。その中でクラブを離れる選択をしたスタッフもいたという。僕としては、それは至極まっとうなことだと思う。スタッフもボランティアではない。先行きに不安を感じるのも、ある種当然だろう。
見逃せなかったのはもう一つ、クラブと面談に訪れた、Bリーグ理事の言葉である。
「ファンのためにやるべきだよ(無給でも)」「目先のお金よりファンやスポンサーの方を裏切ってはいけない。プレイするべき」
―夏選手オフィシャルサイトより
選手たちもプロ。プレーをすることで、給与・報酬という対価を得る権利がある。それを外部の人間が「ファンのため」という甘い言葉で丸め込もうというのは、虫が良すぎる話だ。「無給でも、ファンのためにプレーする」と言うのは、選手だからこそ許される発言である。ここを履き違えてはいけない。
しかも、リーグは資金的な援助をしないとまで言ったそうだ。「弱者は淘汰されるべき」というつもりなのだろうが、Bリーグが目指す場所は、そうではないはずだろう。
あるはずのセーフティーネット
Bリーグには、「公式試合安定開催融資」という制度がある。クラブの資金難によって試合開催が危ぶまれる事態となった場合に、リーグがクラブに融資を行うものだ。昨年、当時B1に所属していたライジングゼファー福岡に対して、融資が実行されている。
資金難である上、試合運営にもスポンサーや関連会社の「厚意」が存在しているという、現在のビートレインズ。それは「試合開催が危ぶまれる事態」ではないのか。普段の練習の設備代は?遠征費は?かかる費用は尽きない。
それとも、この融資をしないだけの余地が、まだビートレインズにあると踏んでいるのだろうか。ハッキリ言おう。悲鳴が上がってからでは遅いのだ。
「潰れ慣れてしまった」バスケ業界へ
古くはレラカムイ北海道(現レバンガ北海道)や東京アパッチ、さらに言えば(僕が応援する)茨城ロボッツなどプロバスケクラブの消滅や経営破綻の話を挙げようと思えば、きりがないと言ったところが現状だ。これは業界として、どこか麻痺してしまっている表れではないだろうか。
クラブが自立的に経営できる姿は確かに望ましい。しかし、そのためにスタッフや選手の生活が脅かされてしまうようでは本末転倒ではとすら思える。去年のライジングと言いクラブの消滅・破綻やその危機が続く状況は、果たして正解と言えるだろうか?今回の一件が、クラブ、そしてリーグ運営やその拡大にとって、確かな道筋を描くための第一歩になることを祈りたい。
<おわりに>
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