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上半身が吹っ飛ぶひょうたん島クルーズと小さな世界

予備知識がないので、ひょうたん島自体が何をさすのか分からない。

そもそも徳島に島がある事すらイメージ出来ない。

 

ついさっきまでの僕は、徘徊者チームの一員と間違われてもおかしくなかったのだ。

「何しに来たの?」いやぁ。

「どうやって帰るの?」えっと。

「どこにいるか分かる?」なんとなく。

完全にアウトだ。

頼りにしたのが交番じゃなくて観光案内所で助かった。

 

聞くところによると、街の中が島のようになっていて、ぐるりとお堀のように囲まれているらしい。そこを20分くらい船に乗って一周するのがひょうたん島クルーズだ。

結論から言うと、これは絶対行った方がいいと思う。

 

観光案内所の方は、ちゃんと船の時間やロープウェイの時間、夕日や月や潮位の高さなど、想像をはるかに上回る緻密な計算を元に、一番楽しめるコースを提案してくれたのだと、再認識させられる体験をすることになる。

本当に感謝しかない。

 

こっそり言うと本当は少し失敗していた。

黙っていたらバレないだろうけど、正直に白状すると、観光案内所に入ったとき、思わず「すみません」と言って入ってしまったのだ。

 

人に何かをしてもらった時に、「すみません」と言うタイプと、「有難う」と言うタイプがいる。

 

僕は「すみません」派だったが、「すみません」と言うことは、相手を恐縮させてしまい感謝が伝わらないことに気付いてから、気を付けて「有難う」に変換するようにしていたのだ。

 

同じ何かをしてもらっても、「すみません」と「有難う」では相手の反応も対応も変わる。

自分だって好意でしてあげたのに、恐縮されて「すみません」と謝られてしまうと、喜びは半減するどころか、いらぬことをしてしまったのだろうかと感じてしまう。

 

「有難う」に変換するだけで相手も喜び、もっとしてあげようと提案してくれたりする。

逆の立場であっても役に立てて嬉しいと感じられるようになる。

 

たった一言の積み重ねで人生なんてがらりと変わる。

 

「有難う」に変換してからの僕は、とても人間関係がスムーズで、その効果を、身をもって知っていた。それにも関わらず、観光案内所に入るとき、あまりに一斉に注目を浴びたので、思わず「すみません」と言ってしまったのだ。

 

ああいうときは、「すみません」ではなく、普通に「こんにちは」の方が良いのだと思った。

 

些細な事かも知れないが、「どうせ」や「やっぱり」の後に続く言葉も、

「ダメ」と言う癖のある人と、

「うまくいく」と言う人では、人生が違うものになる。

 

癖といった些細な事は、思っているより大事な事なのだと思っている。

癖と言うとなんでもない事のように感じてしまうが、無意識の領域なのだ。

潜在意識をコントロールしようと、難しい事に取り組むのもいいけど、使う言葉から意識を変える方法だってあると思う。

 

自分の悪い癖=自分の悪い無意識の行動なのだ。

だからこそ気を付けていたのに。

 

クルーズ船乗り場に着いた時、今度は失敗しないぞと思いながら、「こんにちは」と言った。

クルーズ船乗り場のお兄さんも、笑顔で「こんにちは」と返してくれる。

 

気付くのが遅く、もし「すみません」と言ってしまっていたら、クルーズ船乗り場のお兄さんだって笑顔ではなく、何だろうといった表情になっていたかも知れない。

先に気付いた僕はやっぱり運がいい。

 

少し早めに着き、ライフジャケットを装着し、簡単な名簿に記載する。

 

今乗っている人は北海道から来ているらしい。

一体どの部分に魅力を感じ徳島を選んだのだろう。

大阪に住む僕が感じる北の大地みたいに、北海道に住む人が感じる四国は異国レベルなのだろうか?それにしても何故徳島なのだろう?

予備知識0の僕が、興奮してしまうくらいの魅力を、教えてほしいほどだった。

 

年齢を書くところで、一旦ペンが止まる。

受け付けが綺麗なお姉さんなら無駄な抵抗をしたかも知れないが、お兄さんだったので正直に書いておく。

 

ライフジャケットなんて何年ぶりだろう。

座ってお待ちくださいと言われ、おとなしく待っていると、先ほどの人達が帰ってきた。

 

5~6人の方がぞろぞろと降りてきて皆興奮気味だ。

そんなに興奮するようなものなのか?漠然と感じながら待っていると、

「どうぞー行きましょうか」とお兄さんが告げる。

 

あれっ?僕しかいないんですけど。

 

ちょっと申し訳なく思い、「いいんですか?」と聞いてしまう。

 

気さくなお兄さんはニコニコしながら「いいですよ 行きましょう!」と船を動かし始める。

 

外から見たら高級な船には見えなかったが、ソファーがとてもいいもので、まさにクルーズ船だと思う。

 

「持って帰っていいですか?」などと冗談を言うと「アメリカ製なのですよ」と教えてくれる。

 

このソファーはまさに、イメージしていたクルーズ船にあるようなソファーだ。

テーブルとシャンパン、そして綺麗なお姉さんでもプラスすれば、高級クルーズの世界だろう。

 

お兄さんと二人きりになってしまい、ちょっと困ったと思ったのは一瞬で、すぐに楽しい会話に変わっていく。

お兄さんののんびりした穏やかなキャラが、そうさせてくれたのかも知れない。

 

「いいんですか?」と聞いてしまったのも、どうせ船を動かすなら、一定数の顧客を確保しないと「損」をするのではないかと感じたからだ。

最大限に載せて運航しようが、たったひとりを載せて運航しようが、運航する側からしたら同じだけの労働力や燃料を使う。

 

僕なら同じ仕事をするのに、「ちっ!たったひとりかよ」、そんな風に感じてしまったかも知れない。

 

それなのにお兄さんにはそんな部分は微塵も感じられず、楽しみながら操船し、何度も話したであろう話を少しずつ変えて楽しませてくれる。

 

徳島に住むと心が広くなるのか?

いや鳴門金時を食べるとそうなるのか?

イレギュラーにスダチがアクセントなのか?

 

どちらにせよ、見る世界だけではなく、その世界の大きさに合わせて、自分自身までも小さくなっていたことに気が付いた。

 

どうやらその日は潮位が高く一周出来ないとのことだった。

なんの事か分からないけど、別にいいですよと任せることにする。

 

説明を聞くと本来はひょうたん島を一周するのだが、醍醐味は橋の下をくぐるときなのだ。これがびっくりするくらい低い所をくぐっていく。

勿論座っていたら上半身がなくなってしまうので、くぐるときは船上で伏せる。もう迫力満点。

 

予期していなかったアトラクションに度肝を抜かれる。

橋に触れてしまうどころか、ぼーっとしていると上半身が吹っ飛ぶアトラクションなんてあるだろうか?

安全装置だらけのアトラクションではなく、自己責任の命がけアトラクション。

 

勿論橋の手前で速度を落としてくれるが、「伏せてください」なんて指示はない。

そんなことくらい自分で考えろといった世界で、この場所の普通や当たり前なのだ。

 

あれ?

僕は本当に自分で考えて決断していただろうか?

インターネットで調べて、どこの誰か分からないような人が書いた口コミやレビューを信用し、本当か嘘かも分からない無責任な記事を読んで、考えたつもりになっていなかっただろうか?

「損」に敏感に反応しすぎじゃなかったか?

 

それって結局、失敗したときに誰かのせいに出来るよう、保険をかけていただけで、もはや参考にするレベルではなく、誰かに決定してもらっていたのではないだろうか?

 

失敗したときに不満が出るのは、自分で考えて決断したといったルートじゃなかったからかも知れない。

 

満潮とか干潮とか大潮とか、色々関係があって、その日は潮位が高く低すぎて通れない為、ある程度行って引き返すコースになるということだった。

元々予備知識0何だから、なんだっていい。

 

船の風がとても心地よく、橋に差し掛かったらあまりの低さにびっくり。

嫌でもテンションが上がってしまう。

 

テンションランキングだと、自分史上最強クラスに分類される。

夏の日のビニールプールとも肩を並べる勢いだ。

 

さっきの人達が興奮気味だったのも分かる。

更に引き返すコースにはなるが、帰りは山の向こうから夕日が見えて綺麗だと教えてもらう。

 

「ちょっと待ってもらっていいですか?」


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何も考えずに無計画で来ているのに、全てがスムーズで、めでたい電車やらイレギュラーなラッキーが重なり、更にクルーズ船は貸切りで、その上綺麗な夕日付きなのか?

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