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【ネタバレあり ライブ感想文】クリープハイプ「君は一人だけど 俺も一人だよって」@札幌文化芸術劇場hitaru 2025.2.16(日)
こんばんは。シリアスファイターです。
今回はクリープハイプ、昨年リリースのアルバムを引っ提げての全国ツアー、札幌公演のライブ感想文です。
現在進行形で敢行中のツアーですが、以下の文章では演奏曲から何から何まで、私の覚えている限り、想いのままに感想を綴っていますので、今後ツアーに参加される予定の方は、閲覧をお控えいただくことをお勧めいたします。
それでは。
昨年で現体制15周年を迎えたクリープハイプ。
昨年はライジングサンの大トリでその勇姿を焼き付けるに至りましたが、真っ黒な感情渦巻く深夜から、全てを引きずったままシームレスに朝に、現実につながる美しい…というかあまりにも自分の人生と地続きすぎたライブはあまりにも良すぎて、また大好きなフェスの忘れられない名場面の一つとなったところ。
その場で発売が宣言された「15曲入りのアルバム」は昨年年の瀬に発売され、これまた一癖も二癖もあるギターフレーズてんこ盛りながら、いたって真っ当なギターロックが多分に詰まったアルバムで、長いキャリアを経ても音楽への真摯さはまだまだ健在。
フェスでの遭遇率が高いこともあり、そこそこライブを見てるつもりでいましたが、ワンマンは見たことがなかったクリープハイプ。
この流れで一度、ワンマンを見てみるに越したことはなし。
楽しみでもありつつ、初めてでどこか緊張した面持ちでhitaruへ向かいました。
クリープハイプのワンマンとしては初めてとなるらしいhitaru。
2300人ほどのキャパシティもチケットは即日売り切れで、会場の平均年齢はパッと見では10〜20代でかつ女性の方が多い印象ですが、30〜40代の方もそれなりにいる会場の様子は、長いキャリアの中で信頼を獲得してきたバンドのファン層の広さを感じるものです。
開演予定時刻を廻ってから体感数分。
ゆっくりと暗転した会場に、ステージ上の4人をかろうじて照らし出せるだけのシンプルなスポットライトが、ステージ頭上からゆっくりと灯ります。
やがて淡々と歩いて登場するメンバー。
フェスで見てきた時と同様にSEもなく、拍手が鳴り響いたこと以外はいたって静かな会場で、淡々と準備を進める4人を見守る中、自然と緊張感が高まります。
何の前触れも言葉もなく、その照明が真っ赤なスポットライトにパッと切り替わった先に照らし出されるのはカオナシさん(Ba.)で、ゆっくりと地面をなぞるようにドライブし始めるベースラインを鳴らし始めると、どよめきと悲鳴のような歓声が…!
尾崎さん(Vo.&Gt.)
「いただきます。」
小川さん(Gt.)による生々しいギターのカッティングで、息を呑むほどの静謐な雰囲気を切り裂いて、小泉さん(Dr.)による荒々しいドラムが挿入されれば一曲目は「生レバ」。
肉塊の色を彷彿とさせる真っ赤な照明の下、「れば」という言葉の発音の生々しさと、怪しげなグルーヴに乗った言葉の語感の気持ちよさが、ゾクゾクと心を満たしていく幕開け。
尾崎さん
「ごちそうさまでした。」
曲を終え、沈黙の暗闇を味わうこと数十秒。
せーので音を合わせて始まるのは「dmrks」。
虹色のカラフルな照明の下、小川さんは上半身を揺らしてひょこひょこと歩きながら、テーマパークで流れていても違和感のない愉快な音色のギターをノリノリで弾いています。
そんな楽しげな曲の雰囲気とは対照的に、サビの最後のフレーズである曲タイトルを、後悔と自分への怒りをぶちまけるように歌い放つ尾崎さん。
音も気持ちも少しずつグルグルとエンジンがかかる中、曲が終わるとともに、小泉さんの力強いキックとオープンハイハットが鳴り始めると、客席からは自然とハンドクラップが。
尾崎さん
「今日はよろしくお願いします。
せっかくなので、いいとこ行きましょう。
…タクシーで。」
ドラムのリズムをキープしたまま、ベース→ギターの順で音が重なり、やがて小川さんのギターがイントロのフレーズを奏でると歓声が起こる「NE-TAXI」。
宇宙にゆらゆらと漂うような…いやそんな表現を使いたくなるほど、恥ずかしいほど酔っぱらったようなギターの音色が、心地良くて…。
先ほどまで抱いていた後悔や苛立ちに溢れていた気持ちを引きずったまま、夜のネオン街で自暴自棄になって呑んだくれているような、情けない光景すら目に浮かびます(そんなことしたことないし、できないのに。)。
そんな自分すらも今は許してほしいと思ってしまうほどの心地よさ。
「そんな気持ち、おいでやす〜。」とばかりに、小川さんによる和風な味付けの怪しげなギターイントロが手招きする「キケンナアソビ」。
尾崎さん
「今日は、特別な日だからもっと遊んであげる。」
なんて、2番のAメロで尾崎さんが囁けば悲鳴が起こるのはフェスでも見てきたとおりのクリープハイプですが、これも勝手に前曲からの流れを意識してしまうと、流石にイケナイことをしているよつな想像を自然と掻き立てられます…。
いや、そうだ、このイケナイ気持ちを抱いてしまう自分すら曝け出されてしまうような感覚が生じるのが、このバンドのライブなんだ…。
尾崎さん
「ありがとう。」
耳元で囁くように曲の終わりを告げる尾崎さん…エロティック…。
静かな余韻の残り香が漂う中、薄暗い真っ青な照明の下を、ギターの音色がゆったりと舞い始めます。
やがて一瞬の静けさとともにスポットライトが当たるのは尾崎さんで、そのジャキジャキのストロークは「最夜」…おお…これはライブでやるのはとても珍しい曲なのでは…?
痛いほど鋭く夜を撫でるような音像と声はいたってシリアス。
アウトロではメンバー全員がステージ中央に向き合い、その夜の実感を深めていくように力強く音を重ねていきます…痛く、深く、鋭い夜。
そんな夜を締め括るように、自問自答するような響きに聞こえた「インタビュー」。
イントロとともに回り始めたステージバックにある2つのミラーボールは、エメラルドグリーン色を携えています。
文字面だけ見ると華やかな印象ですが、尾崎さんによる滑らかなボーカルワークと、絹のような柔らかなエフェクトのかかったギターを前にすれば、恥ずかしいほど自分の本性が紐解かれて、自分自身が顕になるだけでした。
原曲で聞いた時以上に広がりを見せるアンサンブルは、ニューアルバムではダントツのライブ映え。
圧倒的に自分とバンドとの対話でしかなかった時間。
また明日話そう
明日につながるギターの余韻が消えるまで、ステージ上の明かりが消えるまで、静かにその余韻を受け止める会場の空気も含めて、あまりにも尊い時間でした。
尾崎さん
「クリープハイプです。
(札幌でのライブとしては)初めての会場で、今までで1番広いところで、来ていただいてありがとうございます。」
その後、4階まであるこの会場について、ステージから見ると、茶色い会場の色と白っぽいお客さんの色が何層にも重なった光景が「クランチチョコに見える」と冗談を飛ばす尾崎さん笑
少しシリアスな雰囲気が続いた中、会場も安堵感のある笑いに包まれます。
その後、昨年のライジングサンでの大トリライブの話に。
当日は新千歳空港での「はさみ騒動(詳しくは各自で検索検索🔍)」に巻き込まれ、羽田空港で3〜4時間ほど待機することとなったらしいメンバー。
いいライブをしようと気持ちを整えていた矢先、できるかどうかすら分からなくなり、ライブの機会を失いかけてとうとう、とにかくライブができればいいという気持ちになっていたという尾崎さん。
それでもいざ飛行機が飛び、できたライブのことはほとんど覚えておらず、夢中で出し切ったとのこと。
そりゃあ、あの時間に「音楽」に没頭できた凄いライブでしたもの…!
尾崎さん
「直近でライジングサンでトリをやったバンドとしての歴史は後半年くらいだけど、それを誇りに思って今日も演奏します。
せっかく昇った陽を沈ませないために、「陽」という曲をやります。」
うぉぉー…!
これは聞きたかった…!
ライジングでももしかしたらうっすらやるかもと期待していましたがやらなかったので、密かに念願叶ったり…!🙏
今日はハズレ 今日もハズレ そんな毎日でも
明日も進んでいかなきゃいけないのか
大好きになる 大好きになる 今を大好きになる
催眠術なんてもう解いてよ
無理に変わらなくていいから
代わりなんかどこにもないから
もしかしたら明日辺り そんな平日
オレンジ色の照明の下、劇的じゃなくても、ギラっと優しく真っ直ぐに降り注ぐ陽光のような、アウトロの小川さんのギターに何度救われて、この日もどれだけ救われたか…!
クリープハイプで迎える半年振りのライジングサンは、あまりにも暖かくて、優しくて、眩しいものでした。
そんな曲の優しい雰囲気を引き継ぎ、まるで祭囃子でも聞こえてきそうなのんびりとしたリフが、そんなライジングサンのエンドロールにしか聞こえなくてちょっぴり切なくなった「もうおしまいだよさようなら」を挟み、ここで尾崎さんはアコギに持ち替えます。
次の曲は全く聞き覚えがなかったものの、どうやら「喋る」という、尾崎さん名義の曲のようだと後で調べて把握。(下記の動画で一部だけ聞けます。)
前半のしっとり匂い立つ緊張感とは対極にいるようで、どちらもしっかり生活の延長に立っている安心のメロディラインが続きます。
よたよたとリズムを刻み始める小泉さんの静かなハイハットとキックに寄り添うように足を踏み出すギター…これは!長谷川さんボーカルの「のっぺらぼう」!
クリープハイプのライブではほぼ確実に1曲は演奏されるカオナシさん曲ですが、まさかこの曲が選ばれるとは…!
歌謡曲由来の哀愁漂うメロディを歌うその声は、朴訥としていながらも素直に真っ直ぐに耳からするりと心に着地する不思議な魅力があります。
ひたすらに真面目で真っ直ぐ。
ベースを弾きながら歌っていても真っ直ぐ伸びている背筋からも、その人柄がうかがえます。
曲が終わり、沈黙の暗闇に包まれる中、スポットライトが当たるのは尾崎さん。
優しいギターストロークとともに歌い始めるのは、安心安全ゾーンを締め括る「さっきはごめんね、ありがとう」。
じっと固唾を呑んで見守るような場面が多いこのライブですが、この曲の間奏部では、小泉さんのリズミカルなドラムに合わせてお客さんから自然とハンドクラップが起こります。
そんな様子を煽るでもなく、ただただじっと感慨深そうに見つめる尾崎さん。
尾崎さん
「ありがとう。」
大げさなことなんて何もない、素直で柔らかい感謝の気持ちが会場中に行き交う、前半戦のハイライトでした。
2度目のMCタイム。
再びこの会場が4階まであることに触れる尾崎さんは、4階→3階→2階→1階→前→真ん中→後ろと、各フロアのお客さんに満遍なく言及して、ここにいる誰1人置いていかない姿勢をそれとなく示してくれます。
と同時に、ここまでほぼ全員が総立ちだったこの会場ですが、何故かこのMCのタイミングで座って休憩し始める人が多かった様子。
尾崎さん
「えっ?なんかあった?
(疲れたなら)曲減らす?笑
まあせっかく椅子もありますからね…!
全然座ってもらってもいいですけど!」
少し動揺しつつも優しい尾崎さん笑
尾崎さん
「まあ、そのまま座っててもいいですけど…無理矢理たt...
あっ、大事なとこで噛んじゃった笑
(一呼吸置いて)
座っててもいいけど、無理矢理「たた」せてやるよ。」
暗闇から忍び寄るカオナシさんの舐め回すようなベースプレイに、客席が悲鳴とともに総「だち」となった「HE IS MINE」で、後半戦は大沸騰のうちに開幕…!
デジタルモザイクアートによる赤と黒の渦巻くカオスが、ステージバックでグルグルと蠢く中、名MCから繰り出される破壊力に満ちたこの曲…ラスサビ前の「今度会ったら○○○しよう」コールの勢いがどれだけのものだったか…このバンドのライブを一端でもご存知の上で、これを読んでいるあなたならもう、お分かりですよね…(知らない方でセンシティブな表現が大丈夫な方は調べてみましょう🔍)
曲終わり、見た目も心もドス黒く真っ赤なステージ上で、両手で持ったギターを真上にど掲げる尾崎さんの堂々たる立ち姿…!
最後には4人合わせてジャーン!と潔すぎる一本締めで、照明がバツンと落ちる痺れるような幕切れ…興奮と歓声が収まりません…!!
興奮収まらぬ中、小泉さんのドラムを皮切りに小気味よいセッションへ突入。
この流れで鳴らされ始めるのは…なんと「SHE IS FINE」という収録アルバムの曲順どおり聞けるサプライズ…!
生々しい歌詞は前曲からの流れそのまま。
それでも少し春めいた心地のメロディは気持ち良い。
なんだか居心地が悪い気がするのに、心にはピタリとはまり続ける音色が鳴り続けます。
再び暗くなる会場に、ヘロヘロっとしたギターフレーズが飛び出し、次の瞬間にはバチバチに乱反射するミラーボールとともにアップテンポにステップを刻み始めるのは、「星にでも願ってろ」で、ニューアルバムモードに戻って再びカオナシさんのターン。
いたって冷静なボーカルワークは変わりませんが、その声色には先ほどよりも少しずつ熱がこもっているようで、少しずつ聞き手側の体温を上げてくれます。
ニューアルバムモードのまま、突き刺すような尾崎さんのストロークがかっこよすぎる
「人と人と人と人」。
今日のこの夜に求めるのは、「人」の血が通ったロックバンドの音である私にとって、この曲のグルーヴは、夜風に乗ってじんわりと熱を届けてくれます。
生ぬるい風だけど、確かに人が起こしていることが分かる熱。
カオナシさん
「ベースの長谷川と申します。ありがとうございます。」
ここでのMCはカオナシさんの時間。
先日、「圭ちゃん」というカオナシさんの一歳年上のお友達と、20代の3人が集まる会(笑?)があったらしく、その場で圭ちゃんさんが20代の子に対して、ドラゴンボールの例え話をしたところ、とても変な空気になったとのこと。
後日、カオナシさんが、その理由をネットで調べたところ、そのくらいの世代の子にドラゴンボールの例えはやっていけないことが分かったらしく笑、それを圭ちゃんに指摘するも、じゃあどうすればいいのか答えは出なかったそうです笑
カオナシさん
「世代に合わせて、例えば鬼滅の刃とかで例えようとしても、それは私には分からないから難しいんですよ。
何が言いたいかというと、これだけ趣味が多様化してる世の中で、今日一日、我々のために時間を割いて、ここまで足を運んでくださって本当にありがとうございます、ということです。」
何と真面目で誠実なカオナシさん…!
尾崎さん
「ちなみに俺は、ドラゴンボールだと何かな?サイバイマンとか?」
小泉さん
「いや、金髪だからスーパーサイヤ人じゃない?笑」
尾崎さん
「いやいや俺、もう1段階上とかないし笑」
小泉さん
「じゃあ、クリリン!天津飯!」
尾崎さん
「うーん…だんだん客席との溝が…。」
カオナシさん
「こういうのが変な空気になるんですよ。」
ここ1番の爆笑に包まれる会場爆。
小泉さんもおもむろにMCに合流し、ワンマンでなければ確実に見られないチームワーク抜群のMCタイムを経て、唐突に始まるのは「センチメンタルママ」。
風邪でヤケクソな心情を歌いながら、でも妙に楽しげにはしゃぎ回るギターの音色は、身体で暴れ回るウイルスか何かだと思ったら、「ああっっ!!もうちくしょう!!!」とさらにヤケクソな気持ちを喚起させられます。
そのまま原曲よりもテンポが上がった「愛は」へ続くという畳みかけ。
もしかしたら、このライブも流石に終盤戦かも?なんて少し寂しくな…りかけたのも束の間。
曲終わりとともに雪崩れ込む「手と手」の激しいイントロで、弦楽器隊は全員ステージ前方に出て、ギターやベースを弾き倒します…!
その見た目だけでなく、このライブ中1番鋭角に鋭いギターの音が前面に出てきていたのは、私の錯覚ではなかったはず…!!
さきほどのライジングサン話が自然と思い出される、失ってから気付くことについてのこの歌(ライジングは結果出られましたが。)。
もうどうしようもなくなった時点での情けなさも引き連れた激情を込めるように、間奏部ではネックを高々と上に突き上げ、ギュワンギュワンのギターソロを奏でる小川さん…!
曲終わりには、ギターを高々と上に掲げる尾崎さん(この日2度目)。
ばっちり駆け抜け切った…と見せかけて、唐突にニューアルバムモードに戻ってストレートなギターロックを聞かせてくれる「ままごと」。
小川さ〜〜ん!!
そのごろっとざらっとしたリフがホントにたまりません!!
今この瞬間も、そのギターの音色に、ギターロックに魅了され続ける自分を再認識するとともに、今なおそれをやり続けているクリープハイプが、結局たまらなくかっこいいのです。それだけなのです。
思わず止めた最低の場面
出会った夜に言った台詞は
ブラは外すけどアレは付けるから全部預けて 空は飛べないけどアレは飛べる
愛とヘイトバイト 明日もう休もう
二人で一緒にいたい
ハンドマイクに持ち替えた尾崎さん。
真っ暗なステージ上でうっすらと灯る真っ青な照明の下、一言一言ポツリポツリと言葉を紡いだ先に、ふわり浮かび上がる小川さんのギターフレーズから「ナイトオンザプラネット」が始まるのは、昨年のライジングサンで見たものと同様の光景ですが、この日は「朝焼けに近い夜」というよりは、まだまだ朝は先だけど、何となく朝の気配を感じられるような深い夜の中、という印象。
色んなものを引きずったまま、それでもじっと明日が来るのを待ってる時、そばで鳴っていてほしいのはやっぱりこういう音かもな…なんて1人思いながら、その音と言葉が身体に染み込んでいく感覚を味わいます。
するとメンバー全員、表情も姿も見えなくほどの逆光で、強烈なオレンジ色の光が灯るステージ。
鳴らされ始めるのは「さっきの話」で、ふとした朝方の帰り道に鳴っていてほしい、ロックバンドのアンサンブル。
前曲でポツリポツリと曝け出した気持ちが恥ずかしかったことを隠すでもなく、ちょっと照れながらも、誰かを思う気持ちは止められないとばかりに少しずつ昂り続ける演奏。
あまりにも眩しすぎたオレンジ色の照明は、アウトロの最後の一音がフェードアウトするとともに、ゆっくりと絞られていきます。
ドラムも、ギターも、ベースも、スパッと音を止めることはなく、ただただその一音が鳴り止むまでの道のりを、メンバーも、客席も、固唾を呑んで静かに見守って噛み締めた時間…あまりにも心地良すぎました。
誰が何を言うでもなく、終わりが近づいているに違いないこのライブ。
このまま静かにゆったりと終わるかな、とも思いましたが…尾崎さんが鳴らし始めるギターリフの先に、まだまだ感情の昂りが…昂りが…!
その昂りそのもののように、イントロとともにステージ前方から勢いよく銀テープが発射され、大団円ムードで迎えられたのはメジャーデビュー曲…!
これほどライブの終わりに相応しい、始まりの曲があったでしょうか…!?
バンドのキャリアの中でも群を抜いてハイトーンな曲を、全く衰えしらずのハイトーンボイスで鋭く突き刺してくる尾崎さんに、ギュンギュンに暴れ回るギター。
何度でも実感する、全く変わらないクリープハイプのギターロックの形。
「裏声バンド」etc...言われて、苦い思いもあったかもしれないデビュー時の曲も、このライブの夜明けの景色の下で堂々と鳴らされて、こんなにたくさんの気持ちを奮い立たせてくれたんです…!
クリープハイプは、どこまでいってもクリープハイプでした。
その事実が確かにそこに鳴っていて、私はその音に胸が高鳴ったんです…そのことが、この瞬間にはあまりにも尊すぎました…!!!
尾崎さん
「いつも北海道に来るたび…というか北海道に限らずいつもだけど、いいライブしたいなと思ってて。
そうしないと、(帰りに飛行機で)空飛んでるの、なんで?ってもやもやするから。」
カオナシさん
「じゃあ、ダメだったらフェリーで帰りますか?」
尾崎さん
「フェリーね?笑
でも、今回は飛行機で帰れそうです。
なんならいつもより(高度を)高くお願いします!って気持ちだけど、どうかな?」
カオナシさん
「それは航空会社のさじ加減じゃないですか?」
尾崎さん
「確かにね笑
「何で高く飛ばないんだ!?」って駄々こねて、それで飛行機遅れたりしてね笑」
飛行機ネタすら笑い飛ばせるほど、今日のライブに手応えを感じている尾崎さん。
それは客席も同様で、惜しみない拍手が送られます。
そんなお客さんに優しく感謝の気持ちを伝えつつ、最近はSNSなどでそうじゃない声もたくさん目にするようになったことについて話す尾崎さん。
だからこそ、真っ直ぐに好きな気持ちを届けてくれるファンの声に救われていること、そういう人たちのためにも、これからもこういう時間を共有していきたいことを話した上で、クリープハイプは好きだけど、今日のライブが何だか気に食わなかったり、刺さらなかったりした「お前」にもしっかり歌うことを宣言する尾崎さん。
尾崎さん
「最後の曲です。」
苛立ちも優しさも、誰に対しても、とにかく伝われと思うままに、正直な気持ちだけが歌と言葉と音に乗って降ってきます。
聞きたい時も、聞きたくない時も、届けと思って鳴らしてくれてるロックバンドは、今日も確かにここにいました。
お茶の間に家族の団欒
君の部屋はそこから徒歩3秒
なんとなく死にたい夜に 光も届かない窓に
それなりに売れようとして
「桜散る」とか歌ってみる
こんなところに居たのかやっと見つけたよ
最後のフレーズを歌い終えて、10秒近くの沈黙。
尾崎さん
「ありがとうございました。」
余韻をがっちりと噛み締めつつ、晴れやかな表情の4人。
最後までステージに残っていた尾崎さん。
尾崎さん
「別にもう言うことはないんだけど笑…ありがとうございました。」
深々とお辞儀しつつ、去り際の直前まで客席を振り返っていて、尾崎さんにとっても本当に良いライブだったんだなと私もしみじみ。
私もじんわりと確かな余韻を引きずったまま、会場を後にしました。
ライブ全体を通してほぼ終始静かで落ち着いた雰囲気の中、恥ずかしげもなく曝け出して突き刺してくるギターの音色を主軸にしたサウンドは、やっぱり私が好きなロックバンドそのものでした。
そのバンドサウンドだから、その声だから、ふと1人になった時に救われるんです。
そんなロックバンドに、最上級の感謝を。
セットリスト
1.生レバ
2.dmrks
3.NE-TAXI
4.キケンナアソビ
5.最夜
6.インタビュー
7.陽
8.もうおしまいだよさようなら
9.喋る
10.のっぺらぼう
11.さっきはごめんね、ありがとう
12.HE IS MINE
13.SHE IS FINE
14.星にでも願ってろ
15.人と人と人と人
16.センチメンタルママ
17.愛は
18.手と手
19.ままごと
20.ナイトオンザプラネット
21.さっきの話
22.おやすみ泣き声、さよなら歌姫
23.天の声
今回は以上です。
最後まで読んでいただいたそこのあなた、本当にありがとうございました。