【ネタバレあり ライブ感想文】UNISON SQUARE GARDEN「TOUR 2023 ”Ninth Peel”」@カナモトホール 2023.4.22(土)
こんばんは。シリアスファイターです。
今回はUNISON SQUARE GARDEN(以下、ユニゾン)、ニューアルバムを引っ提げての全国ライブツアー、札幌公演のライブ感想文です。
以下、演奏曲にも触れていますので、これからツアーに参加される方は読まないことを強く強く強く推奨しますが、読む場合はその点ご理解ください。
それでは。
ユニゾンは、今年「も」!、ライブ活動が精力的すぎることが年明け早々に明らかとなり、物好きの一人である私の心もホックホク。
そんなホックホクな心に更なる熱をもたらしたのが、3年振りのフルアルバム「Ninth Peel」でした。
ポップに開けた前々作、ストイックで自由奔放な前作と、自由で楽しいロックバンドに振り回されて辿り着いた今作は、ストイックな演奏と好き勝手なロックバンドの魅力は全く変わらず、それでも前二作と比較して、ガッチリとしたアルバムの型に囚われすぎず、自由で風通しのよい雰囲気がとても気持ち良いアルバムという印象でした。
そんなアルバムを引っ提げて、今年はライブツアーを2周するユニゾン。
変わらないロックバンドのライブを、当たり前のように浴びることができる日々に感謝しつつ、呼吸するように自然とカナモトホールに向かっていました。
ユニゾンの札幌ライブではすっかり定着したカナモトホールで、いつものようにワクワクしながら開演を待ち、北海道地区の主催者の方による注意事項の影アナウンスから、開演時刻にいつものように暗転。
ゆったりとした足取りで現れ、ドラムに辿り着くと堂々たる立ち姿で客席を見渡す鈴木さん、不可思議な準備体操をしながら現れる田淵さん、ステージ中央で大きく片手を挙げる斎藤さんと、全く変わらない出立ちで3人が登場するだけで、毎度毎度新鮮で瑞々しいワクワクに満ちてしまう現象は、この世の七不思議の1つとして認定して差し支えないでしょう。
この不思議を解き明かしたいとは微塵も思いませんが笑
でも、変わらなかったのはここまで。
ゆったりとSEとして流れるイズミカワソラさんの「絵の具」が、突如ぶつっ!と途切れるように鳴り終わり、びっくりした瞬間に、斎藤さんが歌い始めた曲が、「夢が覚めたら(at that river)」だったもので、更にびっくりしてしまい、早くも頭の整理が尽きません。
昨年の同時期のツアーで初めて、ライブで披露されたいわゆる「レア曲」のような立ち位置のバラードを初手から繰り出すというサプライズに、今日もとんでもないセットリストを組んでるに違いないと、更なる期待を寄せてしまいます…!
そんな期待を時に宥めながら、時に煽るように淡々とスケールを広げていくバンドの演奏。
最後のパート。
暗いステージに一筋の光が差し込むかのように、後方から輝き出す美しい照明とアンサンブルに惹かれながら、まるでエンドロールのようなオープニング。
「UNISON SQUARE GARDENです。」
はにかみながら一言発した斎藤さんの瞳の輝きから、既に手応えしかない無邪気で自分勝手なライブは、「シュガーソングとビターステップ」へ引き継がれます。
ド派手にポップにロックに、演奏はストイックにと、欲張りなロックバンドからの一方的な攻撃に、解放されたように腕を上げたり、身体を振ったり、じっと聞き入るようにステージを見つめたりする観客。
ふと周りを見渡した時に、この自由な雰囲気…今日もユニゾンのライブに遊びに来れたんだと実感しつつ、再び目の前の音と光景だけに集中できる時間に嬉々とします…!!
間髪入れずに斎藤さんの切り裂くようなギターから、「ミレニアムハッピー・チェーンソーエッヂ」へ。
紅白の照明が交互に照らし出すステージ。
このツアー、まだ2公演目ですし、アルバム発売からまだ1週間しか経ってませんけど、早くもライブ慣れしたアンセム級の盛り上がり…!
青春が、人生が、どうせ終わっちゃうんだから、このライブを全力で楽しもうとするユニゾンと私しかこの場にいないような錯覚に囚われながら、ただただ好きなロックバンドに浸ります。
立て続けに、前半戦の大トリを務めたのは「Nihil Pip Viper」。
ここ最近はセットリストへの採用率も高い印象だったこの曲も、この位置で演奏されてる影響もあってか、サビに入った瞬間の開放感は過去一だったんじゃないでしょうか…!?
また新たな楽曲の魅力とポテンシャルに、勝手に気づいたような気になってウキウキしてると、あっという間に4曲が過ぎ去っていきました。
「札幌、最後までよろしく!」
束の間のブレイクから、鈴木さんのゆったりとしたドラムから短いセッションへ。
一つ一つじっくりと音を積み上げた先に、「City Peel」で、1秒1秒を丁寧に味わうような、のんびりとした音楽の時間旅行へ。
あまりの衝撃に、早くもジェットコースターから振り落とされそうな本日のライブでしたが、こうして「音楽を味わう」というとんでもなく大事なことを思い出して正気を取り戻します。
曲終わりの余韻を、次の時間へ進めるように、ハイハットとシンバルをクレッシェンドしていく鈴木さん。
ハッとするような斎藤さんのギターフレーズが差し込まれると、「静謐甘美秋暮抒情」へ。
前曲からの流れで、これまた美メロのミドルテンポナンバーを繋げてくるとは…そうきたか!メロディがとんでもなく沁みる流れ…。
時計の針が進んだ分、また歩き出せそうな歌詞世界もまた、新たな旅路を予感させるようでワクワクすらしてしまいます。
潔く曲が締まり、どこか優しい余韻とともに大きな拍手が鳴り響く中、微動だにしないメンバー。
拍手は鳴り止み、ステージを包む真っ暗な闇。
数秒の沈黙からの、ひとつひとつ確かめるように鳴らされるアルペジオに息を呑んだ、「WINDOW開ける」。
シリアスでヘヴィなこの曲は、生のライブ現場で堪能するのは初めてでしたが、鈴木さんのドラムと、斎藤さんのギターソロの暴れっぷりがもう原曲の比ではなく、鋭利な攻撃性マシマシの内容にゾクゾクします。
それでも、サビで窓を開け放つかのように、頭上から煌々と照らし出される光の照明は、そんな曲世界と対照的に何だかとても綺麗でした。
綺麗なだけでも、暴れるだけでも足りないから、どっちも大事だし、どっちもあるから生きてる実感がして仕方なくなっていた矢先、曲が潔く終わりを告げるとともに、勢いよく転がり始めたギターイントロを、私はライブで聞ける日をずっと夢見ていました。
紛れもない、「シューゲイザースピーカー」でした。
開け放たれた窓から、自分の理想や、叶えたいことがまとまらないまま、思いだけがロックンロールに乗って転がり続けて止まらない、という、ニューアルバムの一曲目にも通じる選曲で、そんな言葉通り、「嬉しい!」とか、「やっと聞けた!」よりも前に、私から溢れ出したのは感謝と拳と涙でした。
この音楽が!好きでたまらないんだ!私は!
私のような物好きを震わせて、全昼夜信念を鳴らし続ける3人のロックバンドは、涙でほとんど見えなくなっていたこの瞬間もステージ上で、その身一つで無骨に輝いて見えました。
物好きであることを全肯定されたような気分になったところで、そんな気持ちを更に肯定するように「アンチ・トレンディ・クラブ」を放ってくるものですから、もう色々止められません。
自分勝手でつよくてやさしいロックバンドが、MCもせずに次々と繰り出す攻撃の手に、負けじと心を躍らせます。
それでも攻撃の手を緩めず、イントロからとてつもない量の歓声と拍手で沸いた「MIDNIGHT JUNGLE」では、心のサークルモッシュが発動し、本当に視界がぐわんぐわんと歪むような錯覚を起こすほど猛り狂いました…!
実際、もう6曲も立て続けに演奏し、ランナーズハイもいいところかと思いますが、むしろ3人のテンションと演奏は天井知らずで、まだまだ加速して暴れ出すことを辞めさせてはくれません…!!!
そう!
このターンはまだ終わらなかったのです!
斎藤さんの呟くようなタイトルコールから入ったのは超高難易度の「Phantom Joke」…!
もうどうなってんだこの3人は…!!??
このブロックの始まりが「City Peel」だったことを考えると、どうしてこのカオティックな曲に辿り着くのか、常識で考えても理解不能だし、そんなことは最早考える必要がありませんでした。
だって、そんなロックバンドのライブが好きな物好きだからここにいるんだし、それを全肯定するようなライブが、ここまで展開されていて最高である…これ以上に必要なものはもうありませんでした。
トグロを巻くように、叩きつけるように同曲が終わると、とてつもない拍手と歓声…!
同時に、ユニゾンのライブでは久々の声出し解禁ということで、メンバーを呼ぶ声が飛び交います。
(鈴木さん多めでしたが、徐々に田淵さん、斎藤さんの声が上がり、最終的に「みんなかっこいいよ!」に繋がるという、とてもフレンドリーな時間でした笑)
そんな歓声はお構いなしに沈黙のブレイク時間を挟み、斎藤さんの暖かいけど、どこかグニャりと癖のあるギターフレーズからジャズ風味のセッションへ。
流石にこの曲かな…と密かに期待した通り、オレンジ色の照明が暖かい「Numbness like a ginger」へ。
ニューアルバムでも言えたことですが、今日のライブはなんだかいつも以上に歌詞が、身体と心によく染み渡ります…。
先ほどまでの100m走マラソン(?)を終え、ゆっくりと腰を下ろして、ジャズのように軽やかに流れる演奏と、斎藤さんの強い意志を帯びたような凜とした歌声に、今生きてここにいることを噛み締めます。
曲終わり、1人スポットライトに照らされる斎藤さんがアカペラで歌い始めたのは…「お人好しカメレオン」…!
こちらも、いつか聞ける日を願った中でも、その強度が高い曲の一つでした。
物好きとして、ユニゾンを信じて見にきた今日のライブ、でも一方的に受け取るわけではなく、受け取り方は、楽しみ方は私の思うままでいい。
この距離感が…最高に気持ちよくこのバンドの音楽を、ライブを楽しめる要因の一つなのです。
一見ポップで乗りやすく、集団的熱狂を生みやすいように見えて、全くそうはならないから、君らしく楽しめ、こっちも好き勝手派手にやるだけだと言ってるかのような音と歌に、何度も大きく頷きながらこの曲を浴びました。
さあ、いよいよ終盤戦。
鈴木さんによる、近くで見てても全く仕組みが分からない、手が500本くらい新たに生えたと思わざるを得ない、尋常ならざる手数の怒涛のドラムソロに興奮を抑えきれないまま、田淵さん、斎藤さんのソロパートも魅せる狂気のセッションパートを得て、終盤戦開幕の号砲を鳴らしたのは、「スペースシャトル・ララバイ」。
アルバムでは一曲目のこの曲も、かなり開かれた大団円曲という印象だったので、この位置にあっても非常にしっくりきてしまいます。
もうここまでくるとくどいかも?…そんなことない!
何度実感させられても嬉しいくらい、またまたこのライブを、バンドを好きで選んで、好き勝手楽しむ決断をした自分を祝われてしまったら、もう最後まで楽しまないわけにはいきません!
ここで個人的には意外だった、ちょっと可愛らしい「放課後マリアージュ」。
Aメロ部で田淵さんが、内股でこじんまりとベースを弾く姿が何とも愛らしいと思いつつ、シングルのカップリングがアルバムツアーでバッチリ採用されるというサプライズに驚きつつ、最後のサビ前の手拍子をバッチリ決めつつ、楽しい楽しいライブを駆け抜けていきます。
「3!4!5678!」
鈴木さんの気合の入ったスティックカウントから、「徹頭徹尾夜な夜なドライブ」…!久々に来たーー!!!
ステージ左右から溢れ出すスモーク!
ライブで聞くと理解不能な興奮で細胞が暴れ出す同曲は、2年半前は着席指定→去年は立ち→そして今回はとうとう、サビのコーラスを声に出して歌っていい状況となり、思わず溜め込んでいた思いが溢れ出してしまいました…!!!
客席中から気合の入った声が聞こえてくるとともに、斎藤さんの伸びのあるボーカルも当然絶好調でしたが、何よりもコーラスで声を張り上げまくる鈴木さんの声が1番出ていたような気がして、流石に高揚しないわけにはいきません!
この狂乱のドライブが終着を迎えると同時に、田淵さんは大きく手を横に縦に広げ、やってやったぞ!感満載の血気迫る表情を浮かべていました…。
そりゃそうですよ…ここで「カオスが極まる」をぶっ込んでくるもんですから、もういよいよ理性は崩壊です!!
もう気が気じゃなくて、ただただ目の前のロックショーが最高で、楽しくて、超気持ちよくて仕方ない、獣と化していました。
まだまだ、ロックバンドはどこまでも行けるんだと、とんでもない熱量で襲いかかる曲を喰らい尽くし、あっという間に…
「UNISON SQUARE GARDENでした。ラスト!」
体感3秒で過ぎ去った楽しいロックバンドのライブは、「恋する惑星」でド派手に幕切れ。
2Aで田淵さんが、ルームランナーに乗って走っているかのように、ずっと足をバタバタしながらベースを弾く姿が何だか焼き付いて離れませんでした笑
ステージ後方の装飾もとにかく派手で、でもそれ以上に派手な演奏を目一杯晴れやかな表情で演奏する3人が、結局1番楽しんでることがよく分かる大団円…!
でもあまりに早すぎる…もうちょっと…アンコールが…と思って手を叩き始めたらなんと数秒で再登場するメンバー!笑
それはそれで早すぎるアンコール登場を決め、いそいそと準備し、さっさと構えてよーいどん!「ガリレオのショーケース」!!
お互いに銃を向け合うようにベースとギターを構えたり、間奏部でキメの部分に従って、ドラム台に飛び乗ったり、ちょこんと降りたりを繰り返す、仲良しの田淵さんと斎藤さん、お構いなしにド派手なドラムを叩く鈴木さんと、やりたい放題なのに外に向けた演奏はストイックで聞いていて気持ち良すぎる、という書いていてもよく分からないけどカオスで楽しい時間を、しっかりと焼き付けたい気持ちがありましたが、あまりに楽しすぎてあっという間に過ぎていきます…!!!
「またね!」
本当に呆気に取られてる内に、ド派手なラストと、またその先を暗示するかのような始まりを指し示したのは「kaleido proud fiesta」でした。
ライブなんて所詮暇つぶしかもしれないし、現実逃避かもしれない、でも仮にそうだったとしても、それが生きる糧となる人もいて、ライブが終わった直後からの人生を、明日を、またさらにその先を生きる力に変えられる。
色々あっても、また始まっていく人生に、ロックバンドがいてくれること、物好きでいさせてくれることに最大級の感謝を込めて拳を振りかざし、あっという間の90分は幕を閉じました。
今回は以上です。
最後まで読んでいただいたそこのあなた、本当にありがとうございました。