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[書きたくなった1枚]秋山黄色「ONE MORE SHABON」
こんにちは。シリアスファイターです。
突然ですが、しゃぼん玉で遊んだことありますか?
ここでとっておきのしゃぼん玉エピソードの1つでも披露できたら、
note界隈で有名なしゃぼん玉神として名を馳せる未来を夢見ることもできましたが、
生憎そんな話は持ち合わせちゃいません。
ただ、遊んでる時の感覚は割と覚えていて、
作った直後は綺麗でずっと眺めてるけど、すぐに消えてしまう。
もう一度見たくなって、作って、眺める、を永遠ループ。
その一時の綺麗さを求めて、寂しい気持ちを抱えながら、何度も何度も息を吹き込むんですよね。
そんな儚いけど愛おしい、辛くも苦しい現実を一時でも救いあげる言葉と音楽が確かに鳴っているのが、秋山黄色さん3枚目のアルバム、「ONE MORE SHABON」です。
1年に1枚、ハイペースなアルバムリリースながらも、一切クオリティを落とさずにポップな傑作を生み出し続けてきた黄色さん。
今回は、実験的な要素や、凝りに凝りすぎてごった煮になったアレンジの曲も目立つにも関わらず、前2作よりも、更にポップに聞き馴染み良く着陸しています。
そんな一貫した姿勢が不器用ながら正直に鳴っているアルバムの感想です。
それでは。
1.見て呉れ
以前、私の記事でも紹介した、アレンジやアイデアのデパートみたいな、前述した「ごった煮」という表現がピッタリな一曲目。
いつもの黄色さんのオルタナロックサウンドに加え、裏声とピアノで印象付けられる転調が何度も繰り返され、ラップ調のパートもあり、など耳が忙しい!
しかし、サビのポップなメロディと、黄色さんの力強い声が、この曲を何度も聞けるポップスとして、全て正当化している剛腕振り。
「見て呉れ」に振り回される現実はうんざりで仕方ねえ…。
全てのアイデアと詩を詰め込んで、諦めや怒りの気持ちと存分に向き合うための一曲。
2.ナイトダンサー
涙の数を世界がずっと見ないフリしている
何かにつけて、上手くいかないことが積み重なると、人前でも涙が止められなくなるほど、抱えてしまうタイプの私です。
悔しくて流す涙には、それだけ抱いた「想い」が込められてるからこそ、そこから目を背けるなって、歯を食いしばって生きる最後の砦となる曲。
1人で闘い続ける夜に聞くしかない。
一曲目から一転して、ストレートなロックサウンドに載せた歌詞が届くというか、文字通り突き刺さります。
3.燦々と降り積もる夜は
一転して超ポップ。
そろそろ情緒がおかしくなってきそうです。
アルバム全体に言えますが、このアルバム、ピアノがよく登場します。
個人的なこのアルバム、ベストピアノアレンジがこの曲。
ジャジーで自由な、イキイキとしたピアノフレーズが燦々と輝いています…キラッキラ。
歌詞は「1人の夜」の風景という印象。
終盤の一節、
何回も繰り返す夜が
無駄だと思った朝はありますか?
より孤独で、虚しい思いが募りますが、この美しいメロディがあれば、そんな夜も少しは悪くないと思えるかも…。
4.アク
ソリッドで攻撃的な5拍子の曲って、ライブではノリ辛いという声もありますが、かっこいいんでライブでどんどんやってください(切実)。
偶然ですが、歌詞については今の世界情勢を思わざるを得ませんでした…。
普遍的に見ても、自分の中で制御できる範囲で怒って、「愛」で解決する心を忘れるなって、私にはそう聞こえました。
綺麗事のようにも聞こえるかもですが、ロックミュージシャンがそう思ったんだから歌ってなんぼだし、そういう姿勢がグイグイに私を突き動かしてくれます…!
5.あのこと?
ここで初のミドルテンポ曲。
そっと語りかけるような黄色さんの歌声に、ほっと一息…。
不安でたまらない、辛い気持ちは、目を背けていても常に心のどこかに存在していて、何の前触れも無く突然、私の心を蝕みます。
そんな気持ちで満たされまいと、気の許せる人とくだらない話をしたり、眠ったりするのはただの現実逃避…と言われればそうかもしれませんね。
ただ、そんなことを繰り返してる内に、いつかきっと「あのこと」も、何の気なしに打ち明けて、解放される時が来るかもしれない…。
孤独な人が持つある種の「優しさ」への、祈りみたいなものを感じる曲。
6.Nlght park
めっきり、音楽のジャンル分けに弱い私ですが、こういうのを「フューチャーベース」と言うんですよね…。
あまり深い理解がなく恐縮ですが、要するにダンスミュージックの一種ですよね…!
打ち込みのキラキラした音像で、夜道を歩いている時に聞くと、周りの風景が色鮮やかに輝き出すこと山の如しです。
夜の公園って、秘密の社交場?みたいなイメージがあって、何かドキドキワクワクしちゃうんですよね…!
全てを曝け出していいような、開放感に満ちた空気の中で、今なら何か言えそうな、一歩踏み出せそうな気がします…。
ここは聞く人の心境によって印象が変わりそうですが、前曲からの流れで聞くと少し視線が前を向けたような気がします。
7.うつつ
イントロのマンドリンの音色が心地良い…、うつらうつら…。
夢、思い出、過去の世界と現実を行ったり来たり。
結局現実は、思ったようにいかない。
それでも、
笑顔の裏も笑顔でいてくれよ
こんなにも、孤独な瞬間に寄り添う優しさに溢れた一節を、かつて聞いたことがありません。
心から笑える瞬間が訪れますように。
8.PUPA
タイトルは蛹を意味する英単語…ですよね…?(おそるおそる)
前曲の柔らかい余韻なんて豪快にぶっ飛ばす、このアルバムで1番意味を感じさせない歌詞と、黄色さんど真ん中のオルタナロックで、まさしく「かっこいい」曲。
ヘビーで内面的な側面を抉る曲が続く中で、感覚的に「音楽楽しいいい!」って思えるだけの曲は、ある意味これ以上ない救いでしたね。
個人的には、これからもこういう曲が一曲は欲しいです。
ということで、「おかわり!もう一曲!」
9.シャッターチャンス
これ書きたかったんです…!
文句なし!このアルバムで1番愛してる!
やさぐれた雰囲気の黄色節炸裂のギターフレーズ、どっしりとしたビートを刻むグルーヴィなベース&ドラムのトラックに、自然と身体が疼く疼く!
極め付けは冒頭のフレーズ。
哀に触れて ほどよく踊り
未来を歌いニヤッとしたい
恥ずかしげもなく君を浮かべて
哀しくても、辛くても、
二本の足で立って、歌って、踊って、
その瞬間瞬間の生き様は、どんなに無様でも、いつだってシャッターチャンスで、自分が今を、未来を生きるヒントが、そこに隠されているんじゃないか…!?
曲に合わせて身体を揺らす内に、自然と生きる力が湧いてくる曲がまた一曲。
これこそ、日常のBGMとなり得るロックであり、ポップスだ!
10.白夜
最後の曲だからといって分かりやすいハッピーエンドも無ければ、
辛い孤独な夜を越えれば、自然とまた光り輝く朝が待ってるなんて都合の良い展開もありません。
辛い気持ちに朝も夜もない。
辛い時はいつだって辛いし、楽しい時はいつだって楽しい、それだけの現実。
それでも、少なくともこの音楽があれば、それでも生きていたいって、私は思えました。
曲が終わった後も、ピアノとギターの美しい音色が、頭から離れません。
あなたの音楽を聞いている、その一瞬だけでも救われる、そんな瞬間をもう一度…
何度でも再生ボタンを押す度に、「チクショー…報われろ…!」って日々への祈りを込めて鳴らされる、摩訶不思議なロックの世界。
現実を生きる、全ての人の力となれ…この音楽…!
今回はここまでです。
今日もたくさんの音楽に関わった全ての人、音に感謝します。
そして、最後まで読んでくださったあなたへ、ありがとうございました。