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【ネタバレあり ライブ感想文】家主×カーネーション「YANUSHI LIVE TOUR 2024」@札幌Sound lab mole 2024.8.25(日)



 こんばんは、シリアスファイターです。



 今回は家主のライブツアー、札幌公演のライブ感想文です。


 ツアー自体はこの札幌公演で一区切りで、後は追加公演を残すのみですが、以下の文章では演奏曲等にも触れていますので、今後ツアーに行かれる方で少しでも気になるという方は、閲覧をお控えいただければと思います。


 それでは。




 おそらく、Xやnoteのフォロワーさんがいなければ、このタイミングで出会うことはなかったであろうバンド、家主。




 noteでライブに行った方のレポなどは数回拝見することはあっても、音源を聞いてみようという段階にはなかなか踏み込めなかったバンド、家主。



 しかし突如として訪れたきっかけは昨年のアルバム「石のような自由」が出たタイミング。



 私のXのタイムラインは、バンドの公式アカウントでもフォローしていたかと錯覚するほど、このアルバムを嬉々として語るフォロワーさんで突如として埋め尽くされるという現象が発生。



 ここまで来ると、とうとう気になって聞かざるを得なくなったバンド、家主。
 まあ、まずは一曲目だけでもと再生ボタンを押した瞬間。

悄然(しょうぜん)
1 元気がなく、うちしおれているさま。しょんぼり。
2 ひっそりと静かなさま。

コトバンクより引用



 おいおい、突然どうした自分。
 その、あまりにもぶっきらぼうに暴れ回るギターフレーズと爽やかなボーカルワークというギャップ、1曲目「SHOZEN」の歌詞…ロックバンドとしてあまりにも好きすぎました…なぜ今まで聞かなかった…家主。



 かくして急にハマってしまったからにはライブに行きたくなるのも必然。
 決まったツアーの札幌公演はライジングサンの翌週日曜日、大いにロスを味わっている絶好のタイミング。



 というわけで、8月終わりのモールに足を踏み入れたのです…。
 家主さん、ライブハウスですので土足ですが失礼いたします。


 1.カーネーション


 実に40年以上のキャリアを誇る超ベテランロックバンドですが、大変恥ずかしながら今回の対バン相手が発表されるまで全くといっていいほど存じ上げていませんでした…。


 この際なので、音源にも素性にも触れず、新鮮な気持ちで楽しんでみようということで、一切の予備知識なしでライブを見てみることに。



 定刻を過ぎたあたりでまだ客電も点いていて、BGMも流れている状態のステージにフラット登場した3人は、黙々と準備を整えると会場後方のPAさんに合図をし、静かにライブをスタート。


 ロックンロールを基調とした楽曲を、淡々と3曲立て続けにプレイしていきますが、その佇まいも音もあまりに熟練していて渋すぎる…!


 一体どんな人生を歩んだらこんなに大人びた深煎りコーヒーみたいなグルーヴが匂い立つのか不思議で仕方ありません。
 ついつい身体が動いてしまうリズミカルな瞬間がありつつも、基本的にはその音に浸っていたい…というか酔っていたくて、こういう時少し強めのお酒でも飲めたら最高に気持ち良いのでは、などという妄想まで膨らみます(
ちなみに私はほぼお酒飲めません(カクテル少々が限界。)。)。


 4曲目から事前告知のとおり、家主のヤコブさんを迎えた4人編成でのライブ。
 小学生まで北海道(新琴似のあたり?)に住んでいたというヤコブさんはその当時、ご両親がOASIS(ちょうど「Don't Look Back in Anger」が出ていた頃)や、カーネーションの曲を聞いていたらしく、まさか北海道で対バンできるとは…!と感慨を隠し切れないご様子…!


 そんなヤコブさんを尊敬しているというカーネーションの皆さん。
 ヤコブさんが参加した新しい音源の中から何曲かプレイしますが、先ほどの渋みに、少し風通しがよくなったポップな雰囲気が加わりこれもまた良き…!
 ヤコブさんの暴れ馬のようなギタープレイは家主と変わりませんが、奏でる音色はそんな3人に寄り添うような優しさすら感じられます…バンドが変わるだけでこんなに印象が変わりますか…!


 そうしてたっぷり5曲ほどヤコブさんとのセッションを終え、最後の2曲は再び3人で。
 普段は様々な編成でライブを行っているとのことですが、2つの形態でのライブを一緒に行う機会はなかなか貴重とのこと…!


 滅多にない機会は、どんなライブも一期一会であることを思い出させてくれるには十分すぎるものでした。
 たっぷり1時間で10曲ほど、音に酔いすぎてすっかり気持ち良くなってきたところでいよいよ…!

 2.家主



 セットチェンジを終え、早々に暗闇でサウンドチェックを始める4人。
 確認段階から怒涛のギターさばきを見せるヤコブさん(Vo&Gt.) ですが、もうスタッフさんからチェックOKの合図が出ていることに気付かず、無心でギターを弾いているご様子笑
 その様に開演前から歓声が上がりますが、ふとそれに気付き、



ヤコブさん
「あっ…大丈夫ですか?
 お恥ずかしいところをお見せしました…
 じゃあ…やりますか!」


 こうしてステージに照明が灯り、ここからは家主のターンです。
 先ほどのカーネーションとのライブ時にも触れた、6歳までの北海道での思い出の話に再び触れながら、


ヤコブさん
「6歳まで北海道にいて、その後大宮に引っ越すんですけど、それからすぐに母が亡くなってしまうんですよ。
 だから北海道に来るといつも、母との思い出が蘇るんですけど。
 今日は親が聞いていたカーネーションと、北海道で対バンできて本当によかったです…!」


 谷江さん(Gt.&Vo.) も「よかったね。」と静かに微笑みながらその話に耳を傾けます。


ヤコブさん
「暗い少年時代だったのに…今、最高に楽しいです…!
 …楽しもうぜ…!!
 よろしくお願いします。」


 突然口調が強くなるヤコブさんに歓声が上がり、ハウリングするギターが鳴れば、いよいよ開戦の合図。


 1曲目はベースの田中さんのボーカル曲(いきなり知らなくてすいません…)で静かにその場を温め始めると、原曲の爽やかさはどこ吹く風とばかりに、台風の目となったステージの中心でヤコブさんが早々にギターを弾き狂い、テンポを上げる「茗荷谷」




 そのままイントロのギターリフで歓声が上がり、岡本さん(Dr.)のタムとスネアが迫り来るたび、ロックンロールが訪れる喜びに胸が高鳴る「家主のテーマ」で、ロックンロールの掴みはバッチリ、圧巻のオープニング…!



 打ち込み主体でパラパラと雨が降る音像を完全に引き継く生のギターの音作りで、よりダンサブルになった「庭と雨」では、リズムに乗りすぎるあまりか、途中岡本さんが片手のスティックを落とすも何なくリズムをキープし続け、元に戻るという場面も、他3人はまるで動じる気配なく音に乗っている様子…!
 いかに自分のプレイに集中して、メンバーを信じているかを証明しているようにも感じられます。




ヤコブさん
「札幌は緯度が高いのに、ステージ上はこのツアーで1番熱いのは矛盾してるなと思って、でもさっきの曲でギターソロを弾きながら、なぜその矛盾が生じるのか考えたんですよ。」




谷江さん
「器用だな笑」




ヤコブさん
「で、答えが出ました。
 北海道は暑くても、意外と家にエアコンないでしょ…!そういうことだ…!」




 今日のライブハウス、客席は比較的空調が効いて涼しいのですが笑、それでも答えが出て一瞬満足するヤコブさん笑




ヤコブさん
「(今の発言で)不安にさせてしまってすいません笑
 もしヤバかったら、手とかグッと挙げてもらえれば、こちらからも気づけるかもしれませんので。
 じゃあ、次の曲やりまーす。」




 とても緩い雰囲気で笑いが起こるMCから、空調の有無など意識の外で、イントロのギターフレーズで私が燃え上がる待望の「SHOZEN」…!
 力強いギターストロークと爽やかなコーラスに徹したり、原曲通りの暴れギターフレーズを弾いたりと、ハイブリッドな活躍で大忙しのヤコブさんですが、そのサウンドは忙しない日常でもどっかりと腰を下ろすため余裕を与えるもの。

悄然、SHOZEN
この気持ちの名前がわかった
僕は僕を責めるのやめよう

SHOZEN




 私も、自分を責めるのやーめた!と気楽に気持ちを放り投げられる音に乗ってるうちに、谷江さんはビヨヨヨ〜ンと、岡本さんのドラミングはバイン!バイン!と飛び跳ねるイントロが楽しすぎた「きかいにおまかせ」へ繋がるのはアルバムと同様の流れ。




 あまりにも心も身体も疲れすぎたとき、タイトル通りの気持ちになることは否定できない日々を過ごしていますが、今目の前で繰り広げられる4人の姿と音は、機械にお任せできないほどには人間味に溢れすぎてバラバラ! 
 イントロの挙動からも分かるとおり、可愛くもへんてこりん、そして至極自由!!





 楽しくなってきたところで少しブレイクタイム…というよりは自分を顧みる時間となった「歩き方から」
 歩くよりもズッシリと遅いテンポに併せて、一音一音がおもりのようにのしかかるサウンドは、無論歩くことを妨げているわけではなく、一歩一歩の足取りを改めて確かめてみようと思えるもので、纏うメロディが優しさに溢れていることでそのことをより強く感じます。



 何度も繰り返される「今持つべきものは自信」というフレーズの意味を自分の中で咀嚼し、噛み締めるのにも十分すぎる時間。





 そうして自分の立ち位置を確かめたからこそ、たとえこのライブハウスから出た後の人生が石のように動かず変われなくても、当たり前のように気付けたことがあった「free as a stone」





 ぴょ〜ん、ぴょ〜んとイントロから飛び跳ねる谷江さん。
 淡々としているように見えて鋭いベースのピッキングに集中する田中さん。
 スネアとシンバルの威力をどんどん底上げしながら、カラッとしたバンドのグルーヴを支える岡本さん。
 どんな曲でも爽やかなメロディとバンドの熱を牽引し続ける凶暴なギターを奏でるヤコブさん。




 「自由」とは「ロック」のことで、どこにも行けないと嘆きながらも、今このロックンロールを自分の意志で浴びに来て、こんなにもロックに縛られながらも、ステージいっぱいに広がる4人それぞれの好き勝手な音と、それが合わさってなぜかどこまでも行けそうなアンサンブルを、頭を空っぽにして、心をフル稼働して浴びているうちに気付きます。




 私、想像以上に「自由」だったんだ。




 そう思うと、さして気負う必要のなかったライブを見る私の心持ちは、さらに肩の力が抜けたような感覚に。





(客席にいたお子さんから、「ばいきんまん!」の声が聞こえ、優しい笑いが起きるフロアの様子を伺いつつ、)




ヤコブさん
「ばいきんまんいた?
 そういえば、札幌に着いてから4人でラーメンいちげん(一幻さんでしょうか?)に行って、1時間半くらい並んで食べたんですけど、あんな高級なもん普段食べないから、便所にこもる時間もできてしまいまして、ここにはばいきんまんがいるんですよ!!
 …あの、一幻さんをディスったわけじゃないです。」





 咄嗟のアドリブが効き過ぎていたヤコブさんのMCにまた笑いが起こりつつ、この間に谷江さんと田中さんは、ベースとギターを入れ替えてパートチェンジ。
 サラッとやっているように見えて、歌も歌えて色んな楽器もできる多彩性はライブに来て初めて分かる家主の魅力ですが、田中さんのギターボーカルによる「オープンエンド」で、更なる自由な音楽の地平に足を踏み入れます。



 ここから、私が知ってる曲と知らない曲のミルフィーユとなりますが、印象的だったのは、田中さんが再びベースボーカルに戻って披露された「カメラ」でしょうか?


 水色の淡い照明に包まれるステージで、語りかけるトーンに限りなく近い声色で、安心感の塊のような田中さんのボーカルと牧歌的なメロディ。
 ゆらゆらと楽しげに横に揺れるギター隊2人の様子も含めて、今のこの瞬間を写真に撮って後から見直したら、きっとこんなのんびりした時間もあったなぁとホッとできるような演奏でした。





 そうしているうちに再びハッとさせられるのは、「耐えることに慣れ過ぎている!」


耐えることに慣れすぎてしまっている
僕は安らぎにさえ頭を抱えている

耐えることに慣れ過ぎている!




 この曲を聞いて私が頭を抱えるのは、すでにこのライブを通して、あまりにも自分が自由であることに気付いてしまっているからで、ヤコブさんのギターが暴れ出すたびに、「あれっ?おかしくない?」と思っていた日々の出来事とそれにまつわる想いが沸々と湧き上がってきます…!




 そんか気持ちをぶつけるには持ってこいの「PUNK」コールにこの日一番の拳が突き上がった「p.u.n.k.」…!


 ヤコブさんの突き刺さるようなシャウトに、サビでは七色に光る照明と、目に見えて盛り上がりが伝わる要素も多かったこの時間ですが、それにそのまま乗っかるのも、ぽけーっと音を浴びるのも全て自由。
 そのくらいの緩い雰囲気が最初から最後まで変わることがなかったのが今日のライブで、「緩い自由度」だけで言えば今年見たライブの中で最上級のもの…!





 続く「NFP」は、見た目としては少しデフォルメされた可愛いライオンのような野獣が、本物の野獣のように叫び猛り狂うような激しいギターがお好みの曲!!
 もはや例えは自分以外には伝わらない可能性あり!!




 サビに入ってもギターの音色は歪んだままでも、ヤコブさんの歌声とメロディは至極爽やか!
 谷江さんは気付けば被っていたバケットハットを脱いでいて、終盤にはギターを高々と掲げ、晴れ晴れとした表情で堂々と演奏を放棄!!
 ハロー!ハロー!ハロー!
 たくさんの歌声がライブハウスに木霊します!!




ヤコブさん
「気付けば最後の一曲です。
 今日は本当にありがとうございました!」




 最後は「オープンカー」


僕達の金なんだ 
どう使っても構わないだろう 

オープンカー



 4人全員でのサビの歌唱。
 気持ち良く音はユニゾンしているのに、4人それぞれの表情がその声からも見えてしまうのが最高に痛快で楽しかった時間はあっという間にすぎ、止まらぬ心で拍手していると素早くアンコールに登場する4人!




 先日は岩見沢のジョインアライブに出演していた4人。
 ヤコブさんがその後、北海道の知人宅で3日間ほど滞在した際、白老牛を食べたり、過去のMVに登場した「DOOMな猫(?)」が白老町で生存していることを確認したりした近況報告を聞いたところで、アンコールは1曲のみとのこと。




ヤコブさん
「北海道と全然関係ないんですけど笑
 僕マンションに住んでて、隣がすごくうるさくてですね。
 こちらもと思って、思い切ってアンプで大きい音を出しながら曲作ってたら、壁ドンされて笑、このやろぉぉ!ってなって!
 そんな、某有名私立大学バレーボール部への怒りをここに置いていきます。
 ありがとうございました。家主でした。




 ………FUXX YOU!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」




 平熱のようなMCから、真っ赤な照明とうねりを上げるギターフレーズとともに、この日1番の怒りを込めたヤコブさんのシャウト。
 地獄のマグマのごとく煮え立つラストソングは「近づく」…!


 普段は冷静でも、抑えきれないほどの気持ちは音楽で晴らし切るとばかりに、この日何十度目かの超絶ギターフレーズが何度も大爆発する、ロックンロールのライブとしての決定的名場面!!





 溢れんばかりのノイズを残………さずある程度伸ばしたところで律儀にエフェクターを切って、低めの腰で退場。





 ダブルアンコールを求める拍手もありましたが、最後はヤコブさんのみササっと出てきて一本締めで終了🙏





 何度でも奮い立つ凶暴なギターソロとか、4者4様のステージ上での立ち回りや演奏とか、打ち合わせゼロの緩すぎるMCとか、全てが自由に共存して「大丈夫」であることが、こんなにも安心できてホッとするライブハウスの景色…愛おしっ!





 初めての家主は音源と変わらず、今日もロックが大好きな私の味方でした。



 今回は以上です。

 最後まで読んでいただいたそこのあなた、本当にありがとうございました。

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