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【ネタバレあり ライブ感想文】amazarashi「Live Tour 2023「永遠市」」@カナモトホール2023.11.13(月)
こんばんは。シリアスファイターです。
今回はamazarashi、ニューアルバムを引っ提げてのライブツアー札幌公演のライブ感想文です。
例によって継続中のツアーですが、以下の文章では演奏曲や演出に一通り触れていますので、これからツアーに参戦される方は閲覧注意でお願いいたします。というかこれから参戦される方はできれば見ないでほしいので、よろしければ終わった後にでも覗きにきていただければ幸いです。
それでは。
初めてamazarashiのライブに足を踏み入れたロストボーイズツアーは気付けば1年半前。
身体中が踊り出す訳でもなく、大きな声で一緒に歌う訳でもなく、1曲1曲身体中から絞り出される秋田さん、豊川さんの歌声と、終始重量感のあるバンドサウンドから溢れ出すエネルギーを受け取るうちに、心の隅から隅まで、思いが、言葉が、感情が溢れて止まらなくなる体験で、あまりにたくさんのものが溢れて収集が付かず、こういうnoteを書き始めてから一番言語化が難しかったのを今でも覚えています。
そうして気持ちに何とか整理を付けた後、年末のCDJでも圧巻のライブで再び放心させられたり、「カシオペア係留所」、「アンチノミー」、「スワイプ」etc…その間のリリース楽曲を1曲1曲、1分1秒噛みしめるように聞いていれば今年も終わりが見えていた11月中旬。
とうとうニューアルバムの発売を経て、再びカナモトホールにて対峙する時がやってきました。
この日は月曜日ということで、(その後、4日間の現実(平日)に戻っていけるのかという意味で)限りなく不安でしたが、容赦なく目の前の現実と向き合うamazarashiのライブとくれば、もうこれ以上のストイックな状況は今後ないでしょう。おそらく。
私がライブに行くバンドの中で、楽しみよりも緊張の方が圧倒的に大きいこのバンドの音を迎え撃つべく、仕事終わりの職場から集中力を高めて挑んだライブの記録です。
会場に入るといつものように大きな幕が貼られたステージがお出迎え。
バンドロゴが中央に映し出されるスクリーンを見つめたり、少しざわざわした会場の雰囲気を感じつつ、まもなく始まるライブに向けて、静かに期待と緊張を高めていきます。
開演時間を廻ると、まだ暗転していないにも関わらず、特にアナウンスがあったわけでもなく、スッと静まる会場。
緊張感がグッと高まる中、1〜2分後にはBGMが途切れ、瞬時に暗転。
ステージ後方に、バンドを象徴するてるてる坊主のキャラクターが、振り子のようにゆらゆらと左右に揺れる映像が映し出される中、既にステージに登場している秋田さんが歌い出し、語り出したのは「俯きヶ丘」。
スクリーンに映し出される歌詞と、響き渡る重低音の相乗効果で、言葉と音がどこまでも途切れない、途方もない宇宙空間に放り出されたような感覚に陥ります。
バンドサウンドが重なり合った瞬間、ベースとバスドラムの重低音が凄まじく、文字通り身体の芯から震える中、秋田さんの声は伸びやかで力強く、自らを、このライブを、掘り進めていく強い意志を感じさせます。
そしてアウトロ。
「ツアー2023!
永遠市!札幌!カナモトホール!
青森から来ました!
…amazarashiです!」
ライブの始まりを告げるお馴染みの口上に拍手が起こる中、そのままアルバムの一曲目、「インヒューマンエンパシー」へ。
イントロのギターは、音色だけ聞くと西部劇風で渋くかっこいい印象ですが、引き続き揺れ動くてるてる坊主を見る限り、どうやらそんなことばかり言っていられる様子ではありません。
前方のスクリーンに次々と現れる歌詞は、書き殴ったような荒い筆跡で、現れるたび文字からはインクが垂れています。
色は黒でしたが、おそらく「血」の比喩でもある、心からの叫び。
揺れ動いていたてるてる坊主も、サビになると血塗られた手を顕にして、何度も何度も目の前の何かを叩き続けます。
ヒビ割れるばかりで割れることはないその何かは、叩き続ける手から流れる血で真っ赤に染まるばかり。
こんなに生きたくてたまらないのに、閉じ込められたようなこの世界はこんなにも生きづらい…!
原曲以上にそんな想像を掻き立てる演出とともに、バンドの雄大なグルーヴは着実に力強さを増します。
曲終わりから微かな余韻を残したまま、間髪入れずに秋田さんが優しく歌い始めるのは「下を向いて歩こう」。
道の地面に浮かび上がり続ける歌詞の映像は曲のイメージ通りで、太陽で照らせないなら、自分の言葉と音で道を切り開いていくという力強さを感じるものです。
これは映画じゃなく生活
ある意味非日常空間とも言えるライブの中で、もがきながらも歩く私の生活の延長線上に、足元を照らす暖かいグルーヴが、確かに鳴り響きます。
「ありがとうございます!」
途方もない歩みや、言葉や、音を重ねて、今日ここに辿り着いたという趣旨のMCに続き、アルバムでは終盤に配置されていた「ディザスター」。
円形に配置され浮かび上がる歌詞は、曲後半で激しく銃弾が撃ち込まれ、ひび割れるように文字通りの災害が起こる映像から察するに、「銃口」の比喩でもあったのでしょうか…?
歌詞はシリアス極まりないですが、宇宙を軽やかに飛び交うようなギターの音像と、豊川さんの美しいコーラスの支えもあってか、例え皮肉まじりだとしても何とか笑えてきそうです。
鋭い言葉に載せた想いが、音楽と混ざり合う中で、自分の外の世界との接点を見つけて、飛び立っていくような感覚です。
そのまま砂嵐のような映像に切り替わり、ザラザラとした視界の中で、静かな祈りのように紡がれる2人のボーカルからじっと聞き入った「14歳」。
楽しくないけど笑ってみた
それでも僕等空っぽだから 今すぐ何かを始めなくちゃ
それなら僕は歌を歌うよ
好きな歌を歌う
それがやりたいから、それしかできないから。
そんな思いの始まりであり、原点のようなものを感じる選曲。
「好きな歌を歌う」は、人によって色んなことに置き換えられると思いますが、私も歌うことが好きな身としては、歌詞そのままに想いを委ねずにはいられませんでしたし、口ずさまずにはいられないフレーズでした。
そうしてやりたいこと、これしかできないことをやり続けた先の景色を描くような「無題」。
その先にある景色には、自分を理解してくれたことへの喜びや、曝け出したことによる痛みが横たわっていました。
それでもこの曲の主人公は、そうすることでしか手に入らない思いも含めて、自分のやりたいこと(この曲では「絵を描くこと」)をやめませんでした。
きっと、それが本当にやりたかったことで、自分と外の世界の接点そのものだったから。
最終的に自分を信じて貫いた主人公には、数少ない理解者が戻ってくるこの曲と、この世界と改めて対峙しようと試みたという「永遠市」のテーマが、このバンドのここに至るまでの道のりが、ガッチリと手を取り合って離れなくなります。
無論そんな私も、そうしてバンドを続けてきたamazarashiの音楽と、今日も対峙できていることへの重みと感謝を、改めて実感するに至ります。
短いMCを挟み、続けて演奏されるのは、静かに水滴をポツリポツリと落とすようなピアノイントロ。
たくさんの事が転がり続けて連鎖するようにら言葉のバトンが繋がれていくような映像とともに、少しずつ音数を増やすバンドサウンド。
どれだけ言葉を重ねようが、音を重ねようが、結局つじつま合わせにすぎないのかと思うと、何の意味もない人生のような気がして嫌気が差しますが、せめてその上からでも自分なりの花を咲かせたり、自分なりに、自分も含めて人を愛せたらどうなるだろう…?
そんな想像が膨らむように広がる終盤の演奏には、ほんのちょっとの諦めとともに、何とか生きていけそうなほんのちょっとの推進力が携わっているような気がしました。
ほんのちょっと前を向けそうだと思う瞬間はあっても、名シーンばかりじゃない人生に、遠くから物悲しいフレーズが。
とうとうバンドの生演奏で聞くことになった「スワイプ」。
アルバムのブルーレイにも収録されている弾き語りver.を聞いた時にも感じましたが、全てのフレーズを魂込めて絞り出すような原曲よりも、力が抜けた…と言うと少し語弊があるかもですが、無理せず言葉と音を紡ぐ箇所と、力を入れて振り絞る箇所の緩急がついたボーカルワークを見せていた秋田さん。
初めて言及しましたが1曲目から一貫してその印象で、だからこそ、最後のBメロに入る前の
リライトできないシナリオ
力強いフレーズに大いに鳥肌が立ったのです。
たとえ誰かにとっては些末なことでも、自分にとってはこんなにも忘れがたい、生き続ける限り永遠に心に刻まれる出来事。
自分だけは、そんな出来事も、それに至る想いも、絶対に消させないとばかりに、最後のパートで暗黒世界のように広がるアンサンブルは、どこまでも残酷でしたが、更なる鳥肌を産み出すかっこよさでした。
原曲以上に絞り出すような井手上さんのギターがたっぷりと残した余韻は、トラウマ級に忘れがたいものになりました。
少し沈黙を挟み、そのまま披露されるのは「君はまだ夏を知らない」。
先ほどまでのシリアスな緊張感がスルスルと解けていくように、じんわりと暖かい音像に包まれながら、スクリーン中央にはえんぴつで書かれたようなてるてる坊主、そして絵日記風に綴られていく歌詞。
だって僕はまだ夏を知らない
たった七つしか
それが自分の子ども時代なのか、はたまた自分自身の子どものことなのか…。
聞く人それぞれの夏を連想するような映像とともに、この最後の2行だけは中央に書き連ねるように現れます。
amazarashiのライブではほとんど感じたことがない優しさ溢れる音像で、本当のにこんな気持ちが永遠に続いたらいいのに…と少し陶酔してしまうほど、心地良く身体がほぐれていくような時間でした。
「永遠なんて結局ないと諦めつつ、だからこそ歌える歌がある。」
そんな趣旨のMCから続く曲は、この日が何曜日であるかを、全く意識していなかったわけではありませんが、それを除いても豊川さんのハッとするようなイントロのピアノで、その曲と意味を瞬時に心と身体が理解してグッときてしまった「月曜日」。
前曲からの流れで、成長して学生になった今とも取れる選曲は、私にとって思い当たる節が多すぎる学生時代を思い、聞くたびに力が入ってしまいます。
ハイトーンが続く終盤では、流石の秋田さんも時折額を拭いながら、少し喉が苦しそうでしたが、そんな様子に尚更力が入ってしまいます…!
一番怖いのはさよなら それなら約束しよう
永遠に別れはないと 永遠なんてないと知って誓ったそれが 愛や友情には 遠く及ばないとしても
永遠に続くような夢があったとしても、結局現実では永遠なんてあり得ないと諦めつつ、その諦めからこそ生まれる歌が、繋がりがある。
だからこそ生まれたこの本物の気持ちで、確かに繋がる今日という日に、色んな人や想いが走馬灯のように駆け抜けるようなアウトロは、いつもより少し長かった(ような気がした)分、たくさんの想いを喚起するものでした。
しばしの沈黙を挟み、唐突に刻まれる橋谷田さんの力強いドラムビートと、それに重なるようにマリンバを叩くような無機質な豊川さんのキーボード…これは…まさかの「海洋生命」…!
この日のセットリストでは1番のビックリポイント。
真っ黒い形をした「人型の何か」が、たくさん渦を巻いて掻き乱されるような映像とともに、一転して終始攻撃的なヒップホップ調の秋田さんの歌唱と、ソリッドすぎるギターは血気迫りすぎていて、私の心拍数を急上昇させます…!
井手上さんは何度もギターを上に掲げ、ギュワンギュワンと相当昂っているご様子…!
唐突すぎて整理が追いつかない中、鋭い毒を持った言葉とメロディが心を抉り倒すこの時間。
やりたいことをやるロックバンドとして、こんなにカッコいい瞬間が他にあるでしょうか…!?
そこから再び一転して、今度はアルバムの中でも特に好きな「超新星」で、スクリーン中央には大きな丸いエネルギーの塊のような何かが配置され、サビになると流星群のように光が降り注ぎます。
最初のサビではモノクロだった光も、最後のサビではオーロラのように眩しく色付くというドラマチックな展開。
どこまでも広がるようなアンサンブルと共に、胸いっぱいに広がる光の柱…!
灰になるまで、その美しすぎる景色を焼き付けて離したくはありません…!
「その先には何もなくとも、ただ、自由に向かって全力で逃げた」という趣旨のMCがくれば無論、「自由に向かって逃げろ」。
アルバムでもどこか垢抜けてポップなメロディが印象的でしたが、ライブではすっかりタフで聞き応えのある演奏になっていて、ネガティヴとも取れる歌詞を載せて、不思議とヤケクソでも走り続けたくなるデタラメなエネルギーに溢れています…!
「自由」という文字が、メラメラと光り輝くスクリーン。
それが世間的な「逃げる」ことであっても、それがやりたくて貫いてきた、これこそがamazarashiのロックンロール…!!
昂る気持ちはそのまま、目の前の景色は、切り裂くような秋田さんの歌声とバンドサウンドで、一瞬に真っ青な空の色に塗り替えられます…!
渾然一体のバンドサウンドは、何を言われても、何を思われても止まることはない、パワフルで頼もしいエネルギーの塊そのもの…!
静かに聞いていたライブも、この瞬間だけは思わず拳を振り上げたくなるほどの高揚感です。
そして、最後のフレーズでハッとする私。
有限、有限、残りわずかな未来だ
それ故、足掻け
限りある命、たとえ一瞬で終わるライブだとしても、人生だとしても、永遠はないからこそ今、この瞬間に足掻く。
たとえ逃げだったとしても、それは自分が自分として生きるためだから…!
「ありがとうございます!」
興奮そのままにアウトロまで駆け抜けたところで、降りしきる雪のような映像がスクリーンいっぱいに広がります。
そのまま現れるのは、部屋の中央で静かに鎮座するギター。
曲は、「美しき思い出」。
ありがとう ありがとう
大嫌いだよ 美しき思い出 忘れたいこと 忘れたくないこと
どちらも自分の中に、残り続けて離れないこと。
降りしきる雪を思い起こすように、美しいアンサンブルが、秋田さんの優しくも力強い歌唱が、何度も何度も降り積もる中、そのどれもが私自身であることを静かに、深く受け止めます。
「札幌…ありごとうございます。
去年ツアー中に…パニック発作を起こして…ツアーも中断して…でも新しいもの出したいなと思って…。
なんとかやってこれたのは…やりたいことをやってきたっていう積み重ねがあったからだと思います。」
言葉を選びながらも、貫いた道があったからこその今日に至る想いを、ポツリポツリと話してくれた秋田さん。
そうして今年もこの札幌の地に、ライブに来てくれたことを思うと、拍手で応えない訳にはいきません…!
「また必ず札幌に来ます…!
ありがとうございました。」
絶対待ってます…!と思った矢先の「ごめんねオデッセイ」は、そんな気持ちの昂りを除いてもライブ化けが凄まじい一曲に!
秋田さんのポエトリーリーディングに込められた熱とリズムの安定感はもちろんのこと、打ち込みに近い音像が印象的だった原曲から、生バンドが描くSF世界のような壮大なアンサンブルを携えて変貌を遂げたこの曲…震えました!
それでも非現実感が全く感じられなかったのは、ここまでのライブが、曲が、とことん自分の生活と、そこに至る想いと地続きだったからで、そこに降り注ぐ木漏れ日のような音像が本当に暖かいものだったからです。
「生きてください!」
その言葉そのものではなかった気がしますが、アウトロで確かに秋田さんが叫んでいた、生きてほしいという願いの言葉。
その想いを載せたこのライブの終着地点は、「アンチノミー」でした。
涙声 離せない あなたの手 あなたの手
まだ温いんだ
人として憤れ 感情を踏みにじる全てへ
機械仕掛けの涙
それに震えるこの心は誰のもの
あなたの手に、大事な何かに、まだ確かな熱を感じるのなら、どんなに生きづらい世の中でも、人生でも、自分の意志で憤り続けてみせる。
確かな意志を込めるように、最後は目いっぱい力を込めて歌い、叫んでいた秋田さん。
「ツアー2023!永遠市!
札幌!カナモトホール!
………ありがとうございました!!!」
最後には跪き、少しよろめいていた秋田さん。
全てを振り絞った1時間40分ほどのライブは終わり、会場内にはアルバムの最後の曲、「まっさら」が流れていました。
「このライブが全て終わって、もし呆然と立ち尽くしてしまった時に、何かひとかけらでも取り出して力になれるような、そんなものが残っていたら嬉しいです。」
終盤のMCで、そんなようなことを言っていた秋田さん。
そんな秋田さんの決意と優しさが、ふと目に浮かぶような曲を聞きながら、また明日からやってくる現実を思うと少し辟易としてしまいましたが、それでもやりたいことを貫き続けた大好きなバンドの勇姿を思い出せば、私も何とかやっていける気がする。
そんな想いで満ちたこの夜は、生きてる限り永遠に残り続けると確信しています。
セットリスト
1.俯きヶ丘
2.インヒューマンエンパシー
3.下を向いて歩こう
4.ディザスター
5.14歳
6.無題
7.つじつま合わせに生まれた僕等
8.スワイプ
9.君はまだ夏を知らない
10.月曜日
11.海洋生命
12.超新星
13.自由に向かって逃げろ
14.空に歌えば
15.美しき思い出
16.ごめんねオデッセイ
17.アンチノミー
今回は以上です。
最後まで読んでいただいたそこのあなた、本当にありがとうございました。