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【ネタバレあり ライブ感想文】リーガルリリー「TOUR 2023『where?』」@SPiCE 2023.10.22(日)


 こんばんは。シリアスファイターです。




 今回はリーガルリリーのライブツアー、札幌公演のライブ感想文です。




 例によって継続中のツアーですが、以下の文章では演奏曲にガッツリ触れていますので、今後ツアーに参戦予定の方は閲覧注意でお願いします。



 それでは。




 どこまでも優しくて暖かい言葉選び、凛として芯がありながら、どこか包容力を感じるたかはしさんの歌声、それらを全てかき消すと見せかけて、優しさと闘う姿勢をブーストさせるラウドで激しいバンドサウンド。




 共存できなさそうな面が見事に共存して、唯一無二すぎる魅力満載のロックバンドこそがリーガルリリーですが、特に今年に入ってからリリースされた楽曲は、私の急所へ的確にクリティカルヒットを繰り出し続け、凄まじすぎているのです…!




 リーガルリリーの曲を聞いている時は、確かに寂しいし、心細いし、不安になるけど、その気持ちを必要以上に煽るでも悲観して途方に暮れるでもなく、その上で何ができるのか、冷静に、優しく、暖かく、時に楽しげに紡がれる轟音に乗って考えに耽ることができます。





 ワンマンに行くのは本当に久しぶりで、個人的には初めましてのSPiCE。
 3人の光る轟音を浴びに繰り出していきました。


 この日の札幌はすっかり肌寒い上に、開場前の時間には雨も降っていて今にも凍えそうな面持ちでしたが、流石にライブハウスの中は暖かい…そして、1人でライブに来ているお客さんが多い印象で、心なしかとても静かな場内。


 開演時間とともにゆっくり場内のBGMが消えると、SEもなく静かにスタスタと登場した3人は、何も言わずに黙々と楽器を構え、中央に向き合います。


 静かな場内に、ゆっくりとクレッシェンドしながら広がるギターのハウリング。
 ゆきやまさんのスネアドラムが均衡を破り、重厚なサウンドがライブハウスに広がる1曲目は「若者たち」



 サビの音程が少し上擦りながらも、その柔らかい声を、言葉を届けるたかはしさん。
 序盤から既にハニカミつつ、楽しそうにゆったりとしたベースラインを奏でるる海さん。

メトロノームはいらなかったんだ。
みんなひとりぼっちのメロディが交差するだけだった。

若者たち



 メンバー一人ひとりの想いが伝わる演奏と、この会場にいる一人ひとりの想いがバラバラのまま交差する、寂しいのに寂しくないリーガルリリーのライブが幕を開けました。


 間髪入れずにテケテケテケ…と軽快なギターフレーズを奏でるたかはしさんに、ゆきやまさんのカラカラとしたドラムが重なれば「ハイキ」の合図。

 軽快なリズムのイントロから、たかはしさんはぴょんぴょんと飛び跳ねながらギターを弾きますが、表情は一切崩さず、緊張感を感じさせる様子。


 真摯に真面目に、目の前の演奏にグッと集中するような姿に、見ているこちらも身体が自然と揺れつつも、心は楽曲にグッと引き込まれるような感覚です…!


 ゆきやまさんの豪快なドラムが口火を切り、新EPから惜しみなく、曲順通りに「ライナー」へ。


 サビに入ると、たかはしさんの力強いストロークがグルーヴを力強く先導…!
 どことなく緊張感のあった客席とステージの熱量がじんわりと上がって、日々の生活の中で、心と身体の絡まった部分が解けていくのを感じます。
 アウトロ部分でとうとう、顔をクシャッとして笑っていたたかはしさんの様子が、その熱量の高さを物語っていました。


「リーガルリリーです…!
 今日はよろしくお願いします。」


 たかはしさんの挨拶から「林檎の花束」に入ると驚いたのは2番のAメロ。


 ベースのフレーズ…こんなにグリグリ動いてたっけ!?
 ポップなメロディの中に複雑怪奇な骨太なベースラインがこんにちは。
 弾いている海さんは至極楽しそうです…!


 すっかり解放され、自由な雰囲気に満たされる中、落ちサビで繰り返される「大丈夫」のフレーズ。


 たかはしさんの歌があまりに暖かすぎて、ふいに私からも暖かい想いが溢れ出します…とにかく…暖かい…!



 一瞬の静寂の間、たかはしさんは瞬時にチューニングを合わせると、力強いギターフレーズをどっしりと聞かせてくれます。
 「いく!?いく!?」と言っているかのように、ワクワクした表情を見せていたゆきやまさんの煌めくライドシンバルを皮切りに、アンサンブルとたくさんのひかりが漏れ出した「GOLD TRAIN」…!


 この曲に限らずですが、リーガルリリーのライブでは、音源にあったような同期もなければ、たくさん重ねたギターもなく、ただただ3人だけの音が広がります。
 文字だけ見ると、原曲よりも隙間があるように思えるその音は、時には細かいフレーズが聞き取れないほどの轟音と歪んだエフェクトがかかっていて、最低限の音数で見せるライブだからこそ、受け取る側の私は、そこにたくさんの想像力を膨らませて、心を込めて受け取ることができます。


 そんなことを改めて実感しながら、静かに疾走する電車が線路から浮かび上がるような光景を、頭に思い浮かべる私。
 そこには過去の思い出したくない光景も流れていきますが、その轟音が鳴っている間は、とてもワクワクした気持ちが駆け巡るのです…!



 そんなワクワクを引き連れるかのように、ゆきやまさんと海さんによるセッションが地続きで展開されます。

「ベース…海!
 ドラムゆきやま!
 ボーカルギター、たかはしほのか!
 リーガルリリーです!
 今日は最後まで楽しんでいってください…!」


 たかはしさんによるメンバー紹介と再度の挨拶を受け歓声が上がる中、たかはしさんのギターも合流したセッションは、鋭くアグレッシブな展開へ。
 このままどこに連れて行かれるんだ…!?
 どしゃ!めしゃ!としてきたセッションは、溌剌とした「東京」へと、バトンを渡します…!


 2年前に見たワンマンではリリース直後だったこの曲も、グルーヴは見違えるほど骨太になり、圧巻は間奏部から落ちサビに向かう展開。
 一転して真っ赤になったと思ったら、次の瞬間から点滅を繰り返す照明は、バチバチとぶつかり合うバンドのグルーヴと闘いを繰り広げます。
 何度でも繰り返すように、ライブハウスの暗闇に放ち続ける照明弾。
 ちょっと落ち込んで、ちょっと笑ってを繰り返しながら、パッと光った照明弾はすぐに消えることなく、余韻を残すようなギターフレーズが微かに残り続けます。


 余韻そのままに「地獄」に雪崩れ込んだ後も、こんなにも不安を抱えて爆発しそうなのに、どこか賑やかで楽しげな雰囲気の音像がライブハウスを満たします。
 何よりも演奏している3人が至極楽しそうだったことが、そんな印象をより掻き立てる要因だったように感じます。



 少しシリアスな「明日戦争がおきるなら」


 曲の1番部分を、たかはしさんのギターと歌のみで進行するライブアレンジ。
 楽器素人の私には複雑に見えるアルペジオも、力強いストロークも、一切手元を見ずに弾きながら、真っ直ぐ前を見据えて、時に険しそうに顔をしかめて歌うたかはしさんの姿は、あまりに凜々しすぎるゆえに、こちらも真っ直ぐに言葉を受け止めざるを得ません。


 そんなたかはしさんの姿勢は、静かに歌い出し、語り出した「蛍狩り」でも変わることはありません。


 たかはしさん本人が何を思って言葉を紡いでいるのか…、深いところまで理解することは叶いませんが、その姿勢から、誠実さがただただ光って見える薄暗いステージ上に、アウトロに入る頃、照明がひとつ、ふたつと灯ります。

輝きを放て。輝きを放て。裸になった人間は唄うことができるんだ。
輝きを放て。輝きを放て。裸になった人間は笑うことができるんだ。

蛍狩り


 ライブも、自分の人生も、いつかあっという間に終わってしまうことは分かりきった上で、確かに今、この音とともに、自分も「ひかっていたい」。

 静かに祈り続けながら、最後の一音がゆっくりとフェードアウトしても、拍手が起こることはなく静寂に包まれる会場。




 余韻に包まれる中、たかはしさんが鳴らしたのは、私が大好きな朝を告げるような柔らかいアルペジオで、すーっと頬を伝うものがありました。


 ようやくライブで聞けた「ハンシー」


 「蛍狩り」で輝きを放った後、無意識にあるものも、意識にあるものも、うれしいも、つらいも、自分の中の全部が優しく溢れ出して止まらなくなってしまいました。

何にももう間違ってない 一晩でできた考えは
朝の絵にきっとなるさ 
ほら 窓辺に咲く私の気温

影の記憶。影の意識。影の呼吸。影の命。

ハンシー


 特別に背中を押すわけでもなく、何かを悲観する訳でもなく、全てが「私なんだよなあ」と思ってまた歩き出せそうな、早朝の涼しい風が吹き抜けるような歌とグルーヴに対する私の想いは、ただただ「ありがとう」でした。



 曲の流れもあり、そうして溢れ出した「すべて」を飲み込みたいけど飲み込めるわけではないという葛藤を如実に感じられた「ノーワー」

君は全てを体に入れて、トイレで吐いた。吐いた。吐いた。
食べ残すこと許せなかった。
物足りない、今日はまだ終わりじゃないと夜は進んだ。

ノーワー

 それでもまだまだ終わらせないし、何ひとつ諦めないと、たかはしさんの歌声は決意に満ちたように力強さを増し、バンドのグルーヴを牽引します。
 疾走するアウトロまで含め、切実すぎるかっこよさでした。


「(札幌)お久しぶりです。
「where?」というEPを出して、ツアーを回ってまして・・・今日で3本目ですね。
 まあ…今日が1番いいですから笑
 よろしくお願いします。」



 少ない言葉数で、聞いているとホッとして肩の力が抜けるたかはしさんのMC。



 たかはしさんがアコースティックギターに持ち替えた「overture」で、少し心の休息。
 草原の中で爽やかな風が吹くような心地がする、原曲とは異なるアコースティックアレンジです。


 たかはしさんが再びエレキギターに持ち替える間、ゆきやまさんのタイトで痺れるようなドラミングに歓声が上がりつつ、たかはしさんのタイトルコールから「地球でつかまえて」の抑揚のあるグルーヴに、お客さんも、演奏している3人もゆらゆらと、揺れる揺れる。


「コロナが明けて、みんなと歌えたらと思って作った曲があります。
 「歌う」っていうのは、色んな形があると思います。
「口から声を出す」というのもありますし。
 みんなで歌えたらなと思います。
 聞いてください、「管制塔の退屈」。」




 橙色の照明が光る中、声を出さずに手を挙げたり、もちろんありったけの大きな声を出したり、私はマスク越しに口ずさんだり、各々の想いを込めた「歌」が、「ららら」が、色んな形で夕焼け空みたいな会場に木霊していく様は、なんだかとても心地よくて暖かい、でも熱いライブハウスの光景でした…!


「つい先日新曲を出しまして。
 聞いてください。」



 多分聞けるかなとうっすら期待していた「泳いでゆけたら」は、水色の照明が光る中、とてもかわいらしくて明るい音像に、身体が瑞々しさを取り戻すように自然と揺れます。
 プールの中でぷかぷかと浮かんでいる感覚…でしょうか。

いたいな いたいな 僕は人間でいたいな。
いたいな いたいな 手放してしまいたい。

泳いでゆけたら


 Cメロのフレーズにハッと溺れかけつつも、自分のペースでクロール(私のこの曲のイメージはクロール、というか私がクロールしかできない。)し続けるように何とか泳ぎ切った先に、海さんの太くて渋いベースラインが待っていました。



 ライブでは定番化している「1997」



 ジャーン!と一発、ギターを鳴らすたび、ベースを鳴らすたび、力強く手を掲げるたかはしさんと海さん、そんな二人を力強く支えるゆきやまさん、3者3様それぞれのロックスターが見せ場を放ち続けます。

最終列車飛び乗って 孤独だった世界で
片道切符を失くさないように

1997


 いつ聞いても最後のサビに辿り着いた時のカタルシスと生きている実感はとんでもないものです…!



 その下の動画を見過ぎてすっかり聞き馴染みのあるセッションが聞こえてきたら、もちろん「リッケンバッカー」で、たかはしさんはこの日一番ではないかと思われる攻撃力・・・!


 ゴリゴリにギターを掻き鳴らしながら、歌う姿は血気迫り真剣そのもの・・・!
 最後のフレーズの裏声が少し苦しそうだったことも含めて、聞いている私の焦燥や熱量をこれでもかと掻き立てるものでした…!



 人の気持ちを「ころしたり」「傷つけたり」する残酷な側面も音楽にはあるかもしれないですが、それでも人を「いかして」転がり続ける音楽を、ロックンロールに救われ続けている自分を、確信を持っていつまでも信じて続けたいし、鳴らし続けてほしい。



 聞く度にそんな気持ちを強くしてくれるこの曲が終わった後も、微かに暗い照明の中、たかはしさんはギターを弾き続け、そんな私の気持ちを見透かしたかのように、そのまま「キラーチューン」を歌い始めました。



 淡々としているように聞こえて、とても強い言葉と潔い演奏がザクザクと心に迫ります。


 このライブ中、どれだけ強く願ったとしても、戦争がなくなるわけでもなければ、私が普段抱えてるモヤモヤや課題がスッキリ解決するわけでもありません。
 あくまで私はライブを受け取っているだけ。


 それでも。
 今ここで、ライブハウスで「意志を鳴らし続けること」には少なくとも自分にとっては意味があると信じたいし、何よりもロックバンドが好きでたまらないというこの気持ちを、誰にも奪わせはしません。

殺し屋が死ぬ 引き取る地球
そんな旋律が、鳴り止まないよ。

キラーチューン


 そんなことを考えながら聞いていると、最後は鋭い剣幕で歌とギターを鳴らしていたたかはしさん。
 演奏を終えると3人は、何も言わずそのまま退場・・・えっ!これで終わり・・・!?



 びっくりして呆気にとられましたが、やりたいことは全部演奏と歌でやり切ったというロックバンドとしてのあまりの潔さがかっこよすぎて、拍手する手の動き止めることができません…!



 少しして、ゆきやまさんと海さんが登場し、アンコールはこの日唯一?のMCタイムから。


「私だけ挨拶してなかった。
 お久しぶりです~。
 ありがとうございます~。」


 緩く挨拶を決めるゆきやまさん。


「今日着いたのは昼なんだけど、北海道の寒さの本番は夜でこれからだよね?
 なんか雨が降ってるって聞いたんだけど…?
 もう寒いから、このままライブが終わらなきゃいいのにね?」


 北海道の寒さに怯える海さん。


 少し遅れて登場したたかはしさんは、「泳いでゆけたら」のMVの話になり、
「北海道って温水プールしかないんですか?」とお客さんに問いかけますが、「そんなことないよ!」との声に、納得?の表情を浮かべます笑


「でもこうしてきてくれるみなさんのおかげで、また北海道に来れました。
 本当にありがとうございます。」



 アンコールの演奏は「ジョニー」から。


 「戦場」を意識する選曲も多かったこの日。
 これからも続いていって、残っていっめ欲しいのは、この音楽の風景だと願いを込めながら、淡々と演奏を楽しむ3人の様子を焼き付けていました。


 「ありがとうございました…!」


 たかはしさんの鋭く力強いストロークが鳴り始めた瞬間、この日一番の歓声があがったラストは「はしるこども」…!


 たかはしさんは、ギターを掻き鳴らしながら、何度もステージ上を飛び跳ね飛び跳ね、とにかく楽しそう!
 最初の間奏では、自分の立ち位置でベースプレイに徹していた海さんが、とうとう前に出て見事なベース捌きを披露すると、ますます上がる歓声!
 もうここまで来たら、キラキラ溢れ出すひかりを、駆け出していく足を、ロックバンドを止めるものは何もありませんでした…!!!




 無邪気たっぷりに爆音を鳴らし続けた3人は、晴れやかな表情でステージを後にしました。




 ライブが終わって外に出ると、冷たい空気は変わらずでしたが、雨は止んで空気は澄んでいました。


 終始溌剌と楽しそうな3人だけで紡がれる轟音は、優しくて心が入り込む隙間がたくさんあるのに、攻撃的で力強い。



 色んな種類の「ひかり」がステージから、私から、溢れ出して止まらない宝物のような時間をギュッと握りしめたままつく家路は、寂しいけど確かに生きる力に満ちたものでした。


【おまけ】
終演後、壁に貼ってあったメンバーのメッセージ入りツアースケジュール(札幌ver.)です。


セットリスト
1.若者たち
2.ハイキ
3.ライナー
4.林檎の花束
5.GOLD TRAIN
6.東京
7.地獄
8.明日戦争がおきるなら
9.蛍狩り
10.ハンシー
11.ノーワー
12.overture
13.地球でつかまえて
14.管制塔の退屈
15.泳いでゆけたら
16.1997
17.リッケンバッカー
18.キラーチューン

アンコール
1.ジョニー
2.はしるこども



 今回は以上です。




 最後まで読んでいただいたそこのあなた、本当にありがとうございました。

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